3月14-18日 国連防災世界会議 パブリックフォーラム 女性と防災テーマ館 主催シンポジウムを共催しました 第3回 「災害に強い社会づくり ~男女共同参画の視点を根づかせる~ 」

3月14-18日に仙台市で行われた国連防災世界会議の期間中、一般の人が参加できるパブリックフォーラムが市内各地で多数開催されました。「市民協働と防災」と「女性と防災」の2つのテーマ館も設置され、関係者が議論を深めました。

「女性と防災」テーマ館の全体の運営を担った仙台市男女共同参画推進センターは、テーマ館主催の連続シンポジウムも実施。その第3回目(16日午後)を、仙台市男女共同参画センターと共催の形で、当・減災と男女共同参画 研修推進センター(GDRR)も担当しました。

テーマは「災害に強い社会づくり~男女共同参画の視点を根づかせる~」で、防災計画やマニュアルの中で文章化するだけでなく、組織体制の変革を含めていかに現場への定着を実現できるのか、各地の取り組みを通じて具体的な道筋を考えました。

写真1_シンポジウムの登壇者

■前半は各地の実践事例から

はじめにGDRR共同代表の池田が、これまでの大災害を受け、防災と男女共同参画についての政策はどう変化してきたのか、どんな取組が求められているのか紹介しました(スライド1「防災・復興政策における男女共同参画・多様性配慮の視点~近年の政策変化と取組のポイント」参照)。

それを踏まえ、同・浅野が、被災地の男女共同参画センターや被災地外の自治体、社会福祉協議会などの取組事例についてさまざまな角度から紹介しました。地域防災組織で女性が活躍できるための自治体の取り組み姿勢体制や多様な主体との連携により、男女共同参画の視点がしっかり入った被災者支援の輪を広げる必要性にも触れました(スライド2「各地における取組の紹介」参照。当日配布のものを一部修正)。

次に、2008年に「災害時における女性のニーズ調査」を実施して提言をまとめ、大震災直後も男女共同参画センターとも連携しながら助け合い活動に取り組んだ、特定非営利活動法人イコールネット仙台 代表理事の宗片 恵美子さんから事例報告がありました。2013年度から実施している「女性防災リーダー養成講座」では、仙台市の防災政策、障害や性別への配慮、避難所運営など幅広く実践的に学ぶ内容で、地域防災の担い手となる女性リーダーを養成しています。また修了生による地元地域での実践や、「せんだい女性防災リーダーネットワーク(せんだい女性防災ネット)」の設立、さらには岩手県陸前高田市や宮城県登米市の養成講座への協力など、活動が広がっているそうです。

市内で子育て支援活動に取り組んできた特定非営利活動法人せんだいファミリーサポート・ネットワーク理事の三浦美恵子さんは、仙台市男女共同参画推進センターが主催した「女性防災人材育成講座」を受講後、市民とセンタースタッフとで防災学習プログラムを開発する「せんだい防災プロジェクトチーム」に参加。開発した教材を使って「みんなのための避難所づくりワークショップ」を各地で実施しました。地域や仮設住宅での丁寧な聞き取りやワークショップの試行を経て、子育て世代をはじめさまざまな市民を対象に、性別や多様な立場の人への配慮の視点をもった防災活動の重要性についての学習機会を作っている様子を写真とともに紹介いただきました。

写真2_女性と災害テーマ館でのGDRRの展示

埼玉県男女共同参画推進センター 事業コーディネーターの瀬山紀子さんからは、大規模避難所となったさいたまスーパーアリーナで実施した県外避難女性(と子ども)たちの支援、埼玉県の地域防災計画改定への参画、県内市町村の男女共同参画担当および防災担当職員への研修の実施といった政策上の働きかけや人材育成、市民や地域組織を対象とした各種の研修などを地道に積み重ねてきた様子を報告いただきました。統一の学習教材やパンフレットの作成など、普及ツールを整備して取り組んでいることも注目されます。

■後半は地域リーダーや災害ボランティアの立場からの報告・コメント

後半では最初に、GDRRの池田から、自主防災活動発祥の地でもある静岡県内を事例をもとに、地域防災活動における男女共同参画の推進上の課題について提起しました。それは、地域防災組織に女性のリーダー層がなかなか増えていかないこと、災害ボランティアセクターと男女共同参画セクターの連携がなかなか深まらないこと、その結果、防災の研修を受けた女性たちが地域防災組織やボランティアセンターと繋がれないことなどです(スライド3「防災・復興における男女共同参画視点の定着化に向けて ~多様な視点から」参照)。

その上で、地域組織の立場にある、仙台市の片平地区連合町内会 会長(花壇大手町町内会 会長)の今野 均さんより報告いただきました。ご自身の地域の話と男女共同参画がどう関係するか良くわからないと最初にコメントされましたが、地域では多様な団体・世代が参加できる仕組みを作りながらコミュニティの活性化に取り組んでおり、東北大学の留学生も参加した防災訓練も実施するなど、まさに多様な視点を生かした地域実践、防災実践が進められていることがわかりました。

さらに災害支援ボランティアの立場にある、東京災害ボランティアネットワーク 事務局長の福田 信章さんからは、女性の視点、子育てや高齢者のケアの視点から実際に取り組んだ支援の様子とともに、困難を抱えた被災者のニーズを把握することの難しさと(困難を抱えた人ほど声をあげられない)、被災者の声を聞く工夫、そして、被災した地域とボランティア、多様な専門性や特技をもった人や団体など、幅広い連携があってこそ、多様な人の立場に寄り添った支援が可能となるとの報告がありました。

■全体を振り返って
 
最後に、前半の報告者を含めて全員が登壇し、会場の質問も受けながら今後の定着に向けて一人ずつコメントをいただきました。現場への定着についてはさまざまな方法により努力が行われていることがわかりましたが、被災者支援の際に要となる地域社会と、行政やボランティアを含めた支援者側の両方において、平常時から、男女共同参画や障害のある人や外国人もふくめた多様な人々の参画と連携を進めておくことが重要であることが、再認識されました。また、行政や男女共同参画センターの役割の大きさも、改めて確認できたのではないでしょうか。そのためには、継続した学習や実践、そして人材育成研修を多主体の連携につなげる工夫が求められています。

国連防災世界会議に向けて

第3回国連防災世界会議に向けた勉強会「ジェンダー視点から考える復興・防災 ~東北での支援活動の成果と教訓~」(主催:オックスファム・ジャパン、Gender Action Platform (GAP), 国連開発計画(UNDP))が、7月3日に行われました。旧東日本大震災女性支援ネットワークの運営委員、皆川満寿美さん(東京大学社会科学研究所)、山下梓さん(エンパワーメント11わて)、私たちの2011年からのパートナーである石本めぐみさん(ウィメンズアイ)、当センター共同代表・池田恵子が講師を務めました。

東北での支援経験を、半年後に迫った第3回国連防災世界会議に、いかに反映していくのかについて、議論が行われました。

池田は、(1)災害(ハザード)を避けること、(2)被害を小さく留めること、(3)早期に回復すること、この3つのバランスが揃った社会こそが、災害に強い社会であるという趣旨の報告をさせていただきました。防潮堤の建設などは、あくまで(1)の災害(ハザード)を避ける効果しかなく、働きづらさ・貧困、子育てや介護の困難、社会への参画が容易ではない状態に、私たちひとりひとりがおかれている現状が放置された状態こそが、改善される必要があります。

女性のリーダシップについて触れた石本さんは、女性たちは、明確に「代表」や「リーダー」と名指しされるとかえって活動しにくくなることがあることを指摘し、女性の人材育成の難しさについて考えるきっかけとなりました。

これまでジェンダーの視点で取組が行われてきた、その積み重みを、しっかりと第3回国連防災世界会議に届けたいと思います。

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