関東・東北豪雨を通して改めて見えてきた課題

9月9~11日にかけて北関東および東北に甚大な被害をもたらした豪雨災害(気象庁による正式名称は「平成27年9月関東・東北豪雨」)。いまも被災したみなさんは、家の片づけや住宅再建、生活の立て直しに追われ続けています。

10月初旬の時点で、まだまだ片づけのための人手も足りていない地域もありますので、ぜひ関心をもちつづけていきたいなと思います(状況は常に変化しておりますので、ボランティアセンター等のウェブサイトで情報を確かめてください)。

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支援物資を集積・配布している、常総市石下総合体育館の様子(撮影:浅野)


●平常時からハンディを抱える人たちの困難

ところで今回の豪雨災害でも、避難生活の側面でさまざまな問題が見えてきています。特に、障害のある方や介護・介助など配慮が必要な高齢者、一人親家庭など、平常時から心身や経済面等でハンディを抱えている人たちの困難が浮き彫りになっています。避難所の環境や福祉・保育面などの課題、自宅のあと片付けの際の周囲の支援や交通手段の不足など広範にわたり影響がでています。

*自閉症の家族がいる方、視覚に障害のある方などの困難(朝日新聞より)
http://www.asahi.com/articles/ASH9P4K9WH9PUTIL00K.html

*追いつめられる母子家庭(毎日新聞より)
http://mainichi.jp/select/news/20150923k0000e040130000c.html

他にも、日雇いで生計を立てている独身男性(日本人)の「自宅の片づけに追われて仕事に行くことができていないため収入が無い。貯金も底をついた」といった声もあります(新聞記事より)。

また被災エリアに多く暮らす日系ブラジル人の方たちの中には、自宅が被災しても勤務先の工場を休ませてもらえないため十分に片づけができない、日本語が十分理解できないため必要な支援を受けるのにも不利だったり、生活の復旧や再建に支障がでかねないといった現状があります(被災地で外国人支援を行っている団体からの情報)。

 

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石下総合体育館内の、日本語とポルトガル語で書かれた物資の配置場所の案内表示(撮影:浅野)

 

避難所の縮小により、さらに数多くの在宅避難生活の状態の方たちの存在が見えにくくなるのではないかとの心配もあります。9月末時点でも、自宅で調理することもできないために避難所に食事などをもらいに来る周辺住民の方もおり、炊き出しの潜在的ニーズが高いことがうかがわれました(周辺住民に、避難所届いた食料等を快く提供するところもあれば、取りに来ることを制限するところもあったようです)。

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災害支援ボランティアのレスキュー・ストック・ヤードによる炊き出し(撮影:浅野)

 

泥やゴミを片づけただけでは、元通りに暮らすことはできません。服や家財をそろえ直すだけでも大変な労力ですし、床下の乾燥が十分できなかった場合、カビの繁殖に見舞われる可能性もあります。戦いはまだまだ続くでしょう。

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公園に積み上げられた廃棄物(撮影:浅野)

 

●子どもを持つ女性への支援の必要性

また、10月に入った現在でも、母親たちからの子どもの一時預りを求める声が上がっているようです。今回の災害では車を失った人が多く、移動の問題から一層厳しい状況に追い込まれています。

例えば常総市では、もともと保育所に子どもを預けていてその保育所が被災した場合に、被災を免れた保育所で一時的に預かるという対応をすぐに行っており、とても評価できます。

しかし、こうした大規模災害の場合、平常時は子どもを預けていなくても、幼い子どもを抱えたままでは自宅の片づけや生活再建のための情報収集や手続き等を進めることが困難となるケースが増えます。被災により夫が失業したり家計支出が激増したといった理由で、急に働きに出る必要性に迫られる女性が増えていくことも考えられます(実際、被災地の雇用に関する窓口には、被災の影響で解雇されたと相談に来る被災者も出ているとの報道です)。

こうした問題にできるだけ効果的に対応していくためには、どのような事前の取り組みが必要なのでしょうか。まず、各自治体の防災計画に、避難所や在宅避難者への支援のあり方はもちろん、生活再建期の一時預りや保育支援、就労支援(女性を含む)、移動支援についても、しっかりと盛り込んでおく必要があります。

●災害時の自治体機能の課題

しかし、市町村の中枢機能が集積しているエリアを含めて広域に被災してしまうような大規模災害の場合、被災した自治体は機能不全に陥り、住民に対する支援が十分行えなくなる可能性があります。

しかも、平成の大合併で市町村は昭和の大合併とは比較にならない規模で広域化し、職員数も大幅に減っているため、ただでさえ対応能力が落ちていることが推測されます(情報収集にさえ時間がかかる、職員が自分の自治体の中の様子を十分に知らない、住民との関係が希薄化しているなど)。また、復旧・復興期におけるソフト支援の重要性が社会的に十分に認識されていません。各被災家庭の復旧・復興の遅れは、被災地全体の復興の遅れとなり、社会全体にとっても重荷になり寝ません。

従って、都道府県や国によるバックアップも不可欠でしょう。専門性、人、予算の面での側面支援が、被災自治体や民間との連携のもと、スムーズに行われるような仕組みづくりも求められていると思います。

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