「防災基本計画」(令和2年5月修正版)における男女共同参画・多様性に関する部分を抜粋しました

2020年5月に、内閣府男女共同参画局が「災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~」を公表しましたが、同時期に、国の「防災基本計画」も修正されました。「防災基本計画」全国の自治体の防災計画(地域防災計画)の内容に大きく影響しますが、ガイドラインで強化された記述も反映されているようです。

そこで、従来から記載されているものも含めて、あらためて国の「防災基本計画」における男女共同参画関連の記述を抜粋しましたので、参考としていただければと思います。

防災基本計画に関するウェブサイト

 

(文責:減災と男女共同参画 研修推進センター 共同代表 浅野幸子)

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「防災基本計画」(令和2年5月修正版)における
男女共同参画・多様性に関する部分の抜粋

 

第1編 総則

 

第2章 防災の基本理念及び施策の概要

*被災者のニーズに柔軟かつ機敏に対応するとともに,高齢者,障害者その他の特

に配慮を要する者(以下「要配慮者」という。)に配慮するなど,被災者の年齢,性別,障害の有無といった被災者の事情から生じる多様なニーズに適切に対応する

 

第3章 防災をめぐる社会構造の変化と対応

地域における生活者の多様な視点を反映した防災対策の実施により地域の防災力向上を図るため,地方防災会議の委員への任命など,防災に関する政策・方針決定過程及び防災の現場における女性や高齢者,障害者などの参画を拡大し,男女共同参画その他の多様な視点を取り入れた防災体制を確立する必要がある。

 

第2編 各災害に共通する対策編

 

第1章 災害予防

防災知識の普及,訓練を実施する際,高齢者,障害者,外国人,乳幼児,妊産婦等の要配慮者の多様なニーズに十分配慮し,地域において要配慮者を支援する体制が整備されるよう努めるとともに,被災時の男女のニーズの違い等男女双方の視点に十分配慮するよう努めるものとする。

*市町村(都道府県)は,自主防災組織の育成,強化を図り,消防団とこれらの組織との連携等を通じて地域コミュニティの防災体制の充実を図るものとする。また研修の実施等による防災リーダーの育成,多様な世代が参加できるような環境の整備等により,これらの組織の日常化,訓練の実施を促すものとし,住民は,地域の防災訓練など自発的な防災活動に参加するよう努めるものとする。その際,女性の参画の促進に努めるものとする。

国〔内閣府〕は,女性の視点による災害対応力の強化を図るため,地方公共団体において防災担当部局と男女共同参画担当部局,男女共同参画センターの連携体制が構築されるとともに,地方公共団体の災害対策本部に女性職員や男女共同参画担当職員の参加等が促進されるよう,都道府県の防災担当部局と男女共同参画担当部局に周知するものとする。

地方公共団体は,男女共同参画の視点から,男女共同参画担当部局が災害対応について庁内及び避難所等における連絡調整を行い,また,男女共同参画センターが地域における防災活動の推進拠点となるよう,平常時及び災害時における男女共同参画担当部局及び男女共同参画センターの役割について,防災担当部局と男女共同参画担当部局が連携し明確化しておくよう努めるものとする。

 

第2章 災害応急対策

国〔内閣府〕は,女性の視点による災害対応力の強化を図るため,被害状況を踏まえ,必要に応じ,職員を現地に派遣し,地方公共団体の災害対策本部に男女共同参画担当部局等が組み込まれるよう,必要な支援・助言を実施するものとする。

市町村は,指定避難所の運営における女性の参画を推進するとともに,男女のニーズの違い等男女双方の視点等に配慮するものとする。特に,女性専用の物干し場,更衣室,授乳室の設置や生理用品・女性用下着の女性による配布,巡回警備や防犯ブザーの配布等による指定避難所における安全性の確保など,女性や子育て家庭のニーズに配慮した指定避難所の運営管理に努めるものとする。

*市町村(都道府県)は,各応急仮設住宅の適切な運営管理を行うものとする。この

際,応急仮設住宅における安心・安全の確保,孤独死や引きこもりなどを防止するための心のケア,入居者によるコミュニティの形成及び運営に努めるとともに,女性の参画を推進し,女性を始めとする生活者の意見を反映できるよう配慮するものとする。また,必要に応じて,応急仮設住宅における家庭動物の受入れに配慮するものとする。

*首都圏を始めとする大都市圏において,公共交通機関が運行を停止し(火山災害における降灰の影響を含む。),自力で帰宅することが困難な帰宅困難者が大量に発生する場合には,国〔内閣府,国土交通省等〕及び地方公共団体は,「むやみに移動を開始しない」という基本原則の広報等により,一斉帰宅の抑制を図るとともに,必要に応じて,一時滞在施設の確保等の支援を行うとともに,一時滞在施設の確保に当たっては,男女のニーズの違いや,要配慮者の多様なニーズに配慮した一時滞在施設の運営に努めるものとする。

被災者の生活の維持のため必要な食料,飲料水,燃料,毛布等の生活必需品等を効率的に調達・確保し,ニーズに応じて供給・分配を行えるよう,関係機関は,その備蓄する物資・資機材の供給や物資の調達・輸送に関し,物資調達・輸送調整等支援システムを活用し情報共有を図り,相互に協力するよう努めるとともに,以下に掲げる方針のとおり活動する。なお,被災地で求められる物資は,時間の経過とともに変化することを踏まえ,時宜を得た物資の調達に留意するものとする。また,夏季には扇風機等,冬季には暖房器具,燃料等も含めるなど被災地の実情を考慮するとともに,要配慮者等のニーズや,男女のニーズの違いに配慮するものとする。

 

第3章 災害復旧・復興

被災地の復旧・復興に当たっては,男女共同参画の観点から,復旧・復興のあらゆる場・組織に女性の参画を促進するものとする。併せて,障害者,高齢者等の要配慮者の参画を促進するものとする。

*地方公共団体は,再度災害防止とより快適な都市環境を目指し,住民の安全と環境保全等にも配慮した防災まちづくりを実施するものとする。その際,まちづくりは現在の住民のみならず将来の住民のためのものという理念のもとに,計画作成段階で都市のあるべき姿を明確にし,将来に悔いのないまちづくりを目指すこととし,住民の理解を求めるよう努めるものとする。併せて,障害者,高齢者,女性等の意見が反映されるよう,環境整備に努めるものとする。

*国及び地方公共団体は,被災地の復興計画の作成に際しては,地域のコミュニティが被災者の心の健康の維持を含め,被災地の物心両面にわたる復興に大きな役割を果たすことにかんがみ,その維持・回復や再構築に十分に配慮するものとする。併せて,障害者,高齢者,女性等の意見が反映されるよう,環境整備に努めるものとする。

 

(以上)

「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」(新指針)の概要と特徴

2020年5月、内閣府男女共同参画局が旧指針を改定する形で、「災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~」を策定しました。

何が強調され、どのような項目が新たに加わったのかについて、ガイドライン検討会の座長を務めた、当センター共同代表の浅野幸子が解説します。

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日本の防災政策に、男女共同参画の視点が初めて入ったのは、2005年ですが、国際動向と2004年新潟県の発生を受けたものであり、全国の自治体における取組はあまり進みませんでした。しかし、2011年の東日本大震災では、女性たちや要配慮者の方たちの困難が顕在化し、社会的に共有されたことから、2013年に「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」(旧指針)が策定されました。

この旧指針策定の検討会には、阪神・淡路大震災、新潟中越地震での対応経験を持つ委員も参加し(筆者もそのうちの一人)、議論に議論を重ねることで、多角的な視点が盛り込まれました。そして、政府の方針がしっかりと提示されたことから、男女共同参画に関心を持つ人だけでなく、徐々に防災関係者にもその重要性が認識されるようになり、国の「避難所運営ガイドライン」(平成28年)や、自治体の防災基本計画や避難所運営マニュアルにも反映されてきました。

しかし、その後も災害が多発している上、自治体の防災部局と男女共同参画部局や男女共同参画センターの間の連携が不十分な状況ということもあり、旧指針の改訂版として「災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~」が新たに策定されました。検討会委員の豊富な知見と、自治体や市民団体のみなさまのご協力によるアリングを踏まえたもので、多数の事例と参考文献が盛り込まれ、現場で使えるチェックシート類も種類を増やすなど、実践性の高い内容となっています。レイアウトも工夫し、ページ数も抑えているため、読みやすくなっていますのでぜひお目通し下さい。

なお、策定にあたりましては、被災地を含む全国のみなさまにヒアリング・情報提供のご協力をいただきました。またパブリックコメントにも多数のご意見を賜りました。多くみなさまのお力添えに改めて感謝申し上げます。

 

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その具体的な内容ですが、全体は3部構成となっており、第1部は旧指針をそのまま引き継いだ「7つの基本方針」、第2部は具体的な取り組みを示した「段階ごとに取り組むべき事項」、第3部は被災現場でも即役立つチェックシートなどが入った「便利帳」です。

第1部では、1.平時からの男女共同参画の推進が防災・復興の基礎となる、と掲げられていますが、災害が起こってから急に状況を改善しようとしても、体制や情報の面で不十分であれば対応が難しくなります。

また、7. 要配慮者への対応においても女性のニーズに配慮する、とありますが、これは高齢者・障害者・乳幼児などの要配慮者の支援において、そのケア者のニーズに十分配慮する必要があるということを強調しています。ケア役割が女性に偏っていること自体の問題もありますが、現状では、家庭でも施設等でも担い手は女性が圧倒的に多いため、防災・応急対応・復興のあらゆるフェーズで女性のニーズを丁寧にくみ取ること、女性の意思決定の場への参画が実現しなければ、要配慮者にも十分な支援がいきわたらないということになるのです。

その他も重要な項目ですので、本文に目をお通し下さい。

 

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次に、第2部の内容を示した図をご覧ください。赤字は、新版での新たに立てられた項目で、下線部は旧指針に盛り込まれていた内容を、独立した項目として整理し直したものです。

 

part2

平常時の備えについては、3.地域防災計画の作成・修正において、地域防災計画における男女共同参画部局・男女共同参画センターの役割が明記されましたが、これは各種の調査により、両部門間連携の強弱によって、被災者支援に関わる整備状況に差が出ていることが明になったという背景があります。

また、災害が発生した場合に自治体間で応援職員を派遣することが増えているものの、女性の派遣が限定的であることから、5.応援・受援体制における女性職員の積極的な派遣と受け入れが加えられました。8.災害に強いまちづくりへの女性の参画9.様々な場面で災害に対応する女性の発掘10.女性団体を始めとする市民団体等との連携も、豊富な事例とともに、女性たちのリーダーシップの発揮が、いかに防災対策の質の向上に直結するかがご理解いただけるでしょう。なお、近年は水害の被害が多発していること、要配慮者をケアしている世帯の避難は一層困難が予測されることなどから、12.マイ・タイムラインの活用促進、として事前に避難のあり方を検討するツールも紹介しています。13.男女別データの収集・分析については、便利帳に男女別統計チェックシートを用意し、より具体的な取り組みにつながるようにしました。

また、災害発生後の初動段階では、15.災害対策本部において、災害対策本部の中で男女共同参画担当部局や男女共同参画センターの職員の意志が反映される体制づくりを求めています。18.女性に対する暴力の防止・安全確保も取り組みが不充分のため改めて強調されました。

避難生活では課題が多岐にわたりますが、21.要配慮者支援における女性のニーズへの対応22.在宅避難・車中泊避難対策23.災害関連死の予防については、基本方針で触れたように、要配慮者は災害後にてきせつな支援が行われないと、心身の健康面の困難から命の問題に直結する場合もあること、避難所以外で生活する人も少なくないことや、避難所以外での避難生活の困難さは家族ケア上の大変な困難を強いることになるため、独立した項目として配慮を求めたものです。

25.保健衛生・栄養管理では、これまで見落とされがちだった栄養支援についても言及し、やはり後回しにされがちな妊産婦・母子支援への目配りも求めました。また、乳幼児栄養支援のための国際基準の内容を反映し、便利帳に掲載した授乳アセスメントシートを活用した授乳支援を促しています。具体的には、避難所では、早い段階で女性専用、家族専用、母子専用、介護・介助スペースへ移動させて、栄養の確保と健康維持のための配慮を行う必要があること、医療、保健、福祉等の専門家と連携し、個々の状況に応じた対応を行う必要があること、乳児に対しては、母乳・ミルク・混合のいずれでも、平常時と同じ形での授乳が継続できるよう支援が求められること、粉ミルクや液体ミルクを使用する際でも、平常時の状況や本人の希望について聞き取り(アセスメント)を行い、衛生的な環境で提供することができるよう、必要な機材や情報をセットで提供する必要があるとしています。たとえば、粉ミルクだけあっても、お湯や燃料がなければ困りますし、液体ミルクの場合でも赤ちゃんが飲めるように清潔な容器が必要です(災害時は哺乳瓶の洗浄が難しいことも多いので、紙コップでの授乳も選択肢として考えらえます)。また、授乳に悩んだ時の相談先や、ミルクの保管方法、授乳の際の注意点などの情報も併せて提供する必要があります。便利帳にはアセスメントシートだけでなくそうしたお役立ち情報も掲載されています。

27.子供や若年女性への支援も新たな項目として入りました。災害が起きると、保護者や大人たちは災害対応に追われ、子供や若年層に注意を向けるのが難しくなる傾向にありますが。子供たちは、災害の怖い記憶や、慣れない避難生活、のびのびと遊べないこと、受験勉強が思うようにできないことなど、多様なストレスを抱えている場合もあります。また、避難所や仮設住宅等において、性暴力に巻き込まれるリスクもあります。若年女性の場合、家族に代わって家事や介護を引き受けざるを得ないケースも少なくありません。東日本大震災の被災地向けの若年女性相談の取組では、例えば、進学や就学等もあきらめなくならなくなり、進学・就職でき生き生きしている友人と自分を比較して「取り残され感」を感じ、行き場のない不安を抱えるようになるという悩みが明らかになっています。また、子どもの多様性への配慮も必要です。災害時等の子供の保護に関する国際基準によると、子供の安全を守るために、子供の年齢、性別、障害の有無・種類、リスクの特性について考慮すること、それらに関するデータを収集し対策に生かすこと、支援者についても男女のバランスを取ることが求められています。

復旧・復興期については、まだまだ全般に男女共同参画の視点が不充分な状況ですが、今回は新たに、35.生活再建のための心のケアとして、男女共同参画センターが行う相談業務の活用を促す内容が盛り込まれました。34.生活再建のための生業や就労の回復も、心の回復には重要となりますので、自治体の復興本部や関連部局との情報連携により、被災者一人ひとりに寄り添った支援が可能となることが期待されます。

以上、雑駁とはなりましたが、新旧指針の比較という観点から、新指針としてのガイドラインの特徴についてご説明しました。ぜひこの記事を参考に、本文をお読みいただければ幸いです。

 

(文責:減災と男女共同参画 研修推進センター 共同代表 浅野幸子)

災害時の乳幼児の影響救援に関する国際基準・新版の日本語訳が公開されました

災害時の乳幼児の栄養救援には、いろいろと配慮すべき点があります。

国連関係機関やNGOなどの専門家が集まって作られた
「災害時における乳幼児の栄養~災害救援スタッフと管理者のための活動の手引き」の最新版の日本語訳が公開されました。

特に、乳幼児の授乳救援には、事前の学習が不可欠です。ぜひ参考にしてください。

『2017年度女性・地域住民から見た防災・災害 リスク削減策に関する調査』報告が公開されました

全国知事会による2008年度『女性・地域住民からみた防災施策のあり方に関する調査』から10年。
2017年度に再び、同様の質問項目で『2017年度女性・地域住民から見た防災・災害リスク削減策に関する調査』が行われました。この間、日本は、東日本大震災をはじめとして多くの大災害を経験しました。

いま、地方自治体の防災・減災対策に、ジェンダー・多様性の視点はどれほど活かされているのでしょうか。

2017年度調査は、大沢真理さん(調査当時、東京大学・教授)と、2008年の調査も企画された前千葉県知事の堂本暁子さんが中心となり、当センターの両共同代表も調査票の作成と調査結果の分析に参加しました。池田は調査報告書の本文の執筆にも、浅野は用語解説の執筆にも参加しました。

内閣府男女共同参画局と全国知事会の協力のもとに、全都道府県と全市区町村を対象に実施され、全都道府県・1171市区町村から回答を得ています。2017年の現状を把握するだけでなく、2008年度調査と比較して変化を理解し、今後の課題を探ることができます。

調査結果は、2019年2月1日(金)に、東京大学社会科学研究所第30回社研シンポジウム「2017年度自治体調査の結果から」認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(NPO法人WAN)で報告され、当センターの両共同代表も発表の時間をいただきました。

また、シンポジウム要旨と2017年度調査の分析結果は、大沢真理(編)『防災・減災と男女共同参画:2019年2月1日第30回社研シンポの要旨;「2017年度女性・地域住民から見た防災・災害リスク削減策に関する調査」報告』(社会科学研究所研究シリーズNo.66)(ダウンロード可)にまとめられています。

2008年度調査と2017年度調査を比較すると、この間、全体として大きな改善があったことがわかります。

例えば、市区町村の地方防災会議の女性委員比率は増加し、女性委員がゼロの自治体は61.5%から23.8%に減少しました。避難所運営指針を策定している自治体は26.2%から77.0%に増え、作成にあたって男女共同参画部署と連携した市区町村は1.4%から17.5%へ、都道府県は23.4%から48.9%へと増えています。

また、避難所運営指針で設置する設備として、更衣室(7.7%から53.1%へ)、授乳室(5.9%から48.2%へ)、トイレ各種(男女別、ポータブルなど)(6.8%から48.2%へ)を挙げる市区町村が大幅に増えています。備蓄物資についても、乳幼児や高齢者、女性のニーズにあった物資の備蓄が、軒並み大きく改善しています。

一方、2017年度の調査で、避難行動要支援者や要配慮者に乳幼児・妊産婦を含めていない自治体は多く、セクシュアルマイノリティを含めている自治体はごくわずか(要配慮者に含めている市区町村は10.3%のみ)でした。役員に1人も女性がいない自主防災組織の比率について無回答の市区町村が39.2%もあり、回答した712市区町村で女性役員ゼロの自主防災組織が42.0%に上りました。

興味深い点は、地域防災計画や避難所運営指針の策定で男女共同参画部署と連携し、または地方防災会議の女性委員比率が高い自治体ほど、避難所運営の指針でも備蓄物資でもジェンダー・多様性の視点が格段に反映されていることが調査結果から明確になったことです。政策決定段階での女性たちの参画がいかに重要であるかわかります。

人口規模と高齢化の進展状況も影響を与えているようです。人口規模が大きい自治体ほどジェンダー・多様性の視点による取り組み進んでいます。しかし、四国に代表されるように、人口規模にかかわらず進捗状況がよい地域もあることから、一概に人口規模の問題とは言い切れません。

高齢化率も影響していることもわかりました。高齢化が進んだ自治体でジェンダー・多様性の視点による取り組みは進んでいない傾向があります。例えば高齢者用のおむつがサイズ別に備蓄されている自治体は、高齢化率が高い自治体で少なく、高齢化率が低い自治体で多いという矛盾した実態が明らかになっています。

2008年度調査から大きく改善はあったとはいえ、まだまだこれからの部分も多くあります。今後は、ますます危機管理部署と男女共同参画部署・団体の連携を促進し、また小規模自治体・高齢化が進んだ自治体向けに施策を導入するための支援策が必要になるでしょう。また、計画や指針に記載されたことが実際に災害時に実践されるよう、運用する人々の体制が重要になってきます。

「いわてアレルギーの会」が新たな事業にチャレンジします!

次々に起こる災害の危機感から、岩手県内の食物アレルギーのお子さんを持つ親の会が集まって発足した「いわてアレルギーの会」。現在4団体の構成で活動しています。

そして今年度の重点活動として、災害時が起こった時に食物アレルギーを周囲に知ってもらうための、サインプレート作成と講演会活動に取り組もうとしています。

その資金を得るため、クラウドファンディング「Ready forレディーフォー」で寄附を募っていますので、活動経緯と取り組み計画についてご紹介いただきます。ご理解とご協力をいただければ幸いです。

【クラウドファンディングへのご協力をお願いします!】

「アレルギーサインプレートを作成し、講演会等で配布したい」
(平成30年10月15日 午後11時まで)
https://readyfor.jp/projects/17713

いわてアレルギーの会 構成団体

・盛岡アレルギーっ子サークル「ミルク」 http://allergy.morioka.co

・アレルギーケア.くじ http://allecare.jimdo.com

・アレルギーフレンズ☆おうしゅう http://ameblo.jp/friends-ooo/

・アレルメイト田野畑&岩泉

 

いわてアレルギーの会の取組み

災害弱者となりうる食物アレルギー罹患者。実際に東日本大震災の時、一般車両は通行制限がかかり被災地に入れない期間がありました。宅急便も止まりました。そうした中で、たいへん厳しい状況に追い込まれました。

食物アレルギー患者の支援団体であるわたしたち「いわてアレルギーの会」は、アレルギー患者が岩手県内どこにいても支援を得られる体制作りを念頭に、各地域に「親の会」の発足を促し、災害時などの支援体制の構築を担う団体です。平成28年9月に立ち上げて以降、医療関係者をはじめとした関連領域の専門家の協力も得ながら、県内での講演会の開催なども行ってきました。

<主な活動内容>

・災害時、アレルギーでお困りの方へアレルギー対応物資をお届けします

・アレルギーでお悩みの方へ各地域の親の会をご紹介します

・地域全体で足並みを揃えアレルギーっ子をケアしていく体制を整えて行きます

 

seminar1
主催事業「食の提供者のための食物アレルギーセミナー」の様子
平成29年11月26日(日)(久慈市アンバーホールにて)

 

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主催事業 「食物アレルギー講演会」の様子
平成29年9月24日(日) (もりおかこども病院にて)

 

また、『岩手アレルギー支援情報』 LINE@を開設しており、いざという時に支援を受けたい方たちに登録を促すとともに(現在の登録者数:233名)、協力企業もつのっています。

また、このLINEを通して、行政等から災害時の避難情報が出るたびに、「お困りではありませんか?」、と呼びかけを行っていますが、同時に、毎年3.11には、備蓄を促すコメントをお伝えしています。

こうした取り組みを踏まえ、今年度は食物アレルギーがあることを周りに知らせるための「食物アレルギーサインプレート」の作成と、その普及および食物アレルギーの知識向上のため県内5ヶ所で講演会の開催を目指しています。

なお、この度のプロジェクトはクラウドファンディングが成立することで行うことができますので、可能でしたらそちらも応援いただけますとなおありがたく存じます。

 

★クラウドファンディングご協力のお願い

レディーフォー「アレルギーサインプレートを作成し、講演会等で配布したい」

(平成30年10月15日 午後11時まで)
https://readyfor.jp/projects/17713

これからもアレルギーっ子が安心して生活できるよう活動していきます。ご理解とご協力をよろしくお願いします。

 

【クラウドファンディングで目指す活動】

■食物アレルギー表示カードの作成をめざします

以下の4点を1000セット用意し、未就学児や児童をはじめとする食物アレルギー罹患者へ配布します。配布方法については講演会開催時に、また現在、岩手県、岩手県教育委員会、各自治体と相談させていただいています。

 

①サインプレート

平常時から携帯するアレルゲンの表示カードで、裏面には個人情報を記載します。

②災害時サインプレートシール

サインプレートと同じデザインのシールで、災害時避難袋に入れておき、避難所で衣服などに貼って使います。

③サインキーホルダー(バッジ)

アレルギーを示すマークのキーホルダーで、安全ピンを付けるとバッジになります。

④緊急時カード

具合が悪くなった際、どのように対応するか、簡潔に記すカ―ドです。

 

サインプレートの見本(表)
iwate_plate1

サインプレートの見本(裏)
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■講演会開催をめざします(全5カ所)

「正しい知識があれば食物アレルギーは怖くない」と題し、第一部は岩手県各地で食物アレルギー児の治療されている小児科医から食物アレルギーの最新情報と、第二部は小児アレルギーエデュケーターからヒヤリハットなど注意すべき点を専門家の立場からご講話いただきます(講師は医師と管理栄養士にお願いしています)。

*11月11日(日)13:30~15:30 宮古市シートピアなあど研修ホール

*2月3日(日) 13:30~15:30  久慈市(会場未定)

*2月17日(日) 13:30~15:30 盛岡市(会場未定)

*2月24日(日) 13:30~15:30 北上市(会場未定)

*3月2日(土) 13:30~15:30  奥州市(会場未定)

(以上)

仙台防災フォーラム・防災ダボス会議のセッション報告書公開 ~男女共同参画と災害・復興ネットワークからのお知らせ

女性の視点/男女共同参画の視点からの防災・復興に取り組む「男女共同参画と災害・復興ネットワーク」(JWNDRR)には、当センターも立ち上げ当初から参加させていただいていますが、昨年の秋、11月26日に仙台で開催された仙台防災フォーラム・防災ダボス会議で、「世界と日本における災害レジリエンスを高める合意形成プロセス~多様性とジェンダー視点から~」をというセッションを開催!

その報告書が完成したとのご連絡がまいりました!
ウェブ上で公開されていますので、ご紹介させていただきます。

●男女共同参画と災害・復興ネットワーク
WBFセッション報告書「世界と日本における災害レジリエンスを高める合意形成プロセス~多様性とジェンダーの視点から~」(PDF)
http://jwndrr.org/allnews/report/1389/

熊本地震を経験した「育児中の女性」へのアンケート調査報告書完成 ~熊本市男女共同参画センター はあもにい

熊本地震で直後から精力的な支援を行った熊本市男女共同参画センターはあもにい。

そのはあいもにいさんが、熊本地震を経験した「育児中の女性」へのアンケート調査を実施、報告書をまとめられましたのでご紹介させていただきます。

切実な女性たちの声を無駄にしないよう、広く共有していただければ幸いです。

 

●報告書完成のお知らせ記事
http://harmony-mimoza.org/staff_blog/2018/04/post-247.html

●報告書ダウンロード先
http://harmony-mimoza.org/aboutus/report/docs/jishin_ikuji_report.pdf

「男女共同参画の視点による平成28年熊本地震対応状況調査 報告書」が公開されました!

4月下旬、内閣府男女共同参画局による「男女共同参画の視点による平成28年熊本地震対応状況調査報告書」が、ウェブ上で全編公開されました。

●内閣府男女共同参画局:男女共同参画の視点による平成28年熊本地震対応状況調査
http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/kumamoto_h28_research.html

熊本地震で被災した自治体約40、応援自治体約860に加えまして、50もの民間の支援団体からの回答結果と、15か所での直接ヒアリングの結果を分析した上で、今後の災害対応に関して7つの提起が行われています。

ページ数は多いのですが、

Ⅲ.調査報告 (調査結果概要、課題と取組の方向性、今後の災害対応に向けた提言
(1)男女共同参画の視点からの災害対応の必要性
(2)提言~今後の災害対応に向けて~)

だけであれば、比較的短時間で読むことができるかと思います。
ぜひ各所でご覧いただき、災害対策に活かしていただければと思います。

(文責:浅野幸子)

新しい避難所ガイドラインができました(内閣府防災担当)

避難所は、災害で家を失ったり一時的に住むことができなくなった被災者を収容・保護し、避難生活を支えるためのものですが、現実には衛生、栄養、プライバシー、育児、介護などの生活にかかわる諸課題が十分手当されないことにより、複合的な環境悪化が被災者を追いつめる傾向にあります。
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熊本の被災地のとある避難所の様子

こうしたさまざまな問題を踏まえて平成 25 年6月、「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」も策定されました。

さらに平成28年4月に新たに「避難所運営ガイドライン」が発表されましたが、これは「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」、「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」とセットで作成されています。全て内閣府防災担当「避難所の生活環境対策」のページよりダウンロード可能なので詳しくはこちらをご覧ください。

この「避難所運営ガイドライン」のポイントを下記に示しましたが、全体を通しての特徴もいくつかあります。
今回のガイドラインは、避難所の質を着実に確保できるようにするため、WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)という形で、必要な対策を実現させていくための手順が細かく示されている点や、縦割り行政を超えて、横断的に連携しながら避難所の開設・運営を支えていくための体制も示されている点(p7)です。国際的な人道支援の基準についても紹介されており、個別の対策にもその内容が反映されています。「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」には、国際的な諸基準をもとに、適切なトイレ配置のための計算シートも作成されました。

ちなみに当センター共同代表の浅野も、このガイドラインの作成に委員として関わらせていただきましたが、女性の避難所運営への参画・リーダーシップの促進がかなりしっかり書き込まれたことと、(災害対策基本法でいうところの要配慮者とは別に)女性と子どもも配慮対象としても示されました。すばらしい委員のみなさま方のご理解のもとで、この両方が同時に実現したことに意義を感じています。

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熊本地震のとある避難所に設置された子どもの遊び場スペース

なお、災害時にはイレギュラーなことがさまざまに発生します。
例えば、熊本地震では余震が続く中、避難施設が足りずに車中避難を余儀なくされる人たちがたくさん出ました。民間支援でテント村が作られたり、トレーラーハウスを活用した障害者や妊婦用の避難施設が設置されたところもありますが、今後もさまざまな避難形態が出現することを前提に、柔軟な支援体制を取ることができるようにする必要があります。

いずれにしても、実際の災害時でも機能する避難所目指すならば、マニュアルを作成するだけでなく、運営に携わるだろう関係者に内容が事前にマニュアルの内容が認識され、一定の学習・訓練が行われていることが重要です。行政内の横断連携による避難所の支援体制づくり、行政職員および施設関係者への研修、地域住民の参加促進と学習・訓練の機会づくり、専門職やボランティア等との連携などが求められています。

 

「避難所運営ガイドライン」抜粋

Ⅰ 運営体制の確立(平時)

1.避難所運営体制の確立
行政による避難所支援の話し合いには、必要に応じてNPO・ボランティア等の参画を呼び掛ける、各避難所に避難者の代表・施設管理者・避難所派遣職員等からなる避難所運営委員会(仮称)を設置して運営体制を確立する、その際、女性がリーダーシップを発揮しやすい体制を作る、必要に応じてNPO・ボランティア等の代表の参画の呼びかけをするなど。

2.避難所の指定
福祉避難所/スペース(一般の避難所の中に設ける要配慮者用の空間)を確保する、母子(妊産婦・乳幼児専用)避難所/スペースを確保する、避難所には障害者・外国人向けの案内掲示等を確保するなど。

3.初動の具体的な事前想定
避難所マニュアルを作成する際に、地域住民代表・要配慮者等の多様な意見を取り入れ作成する、避難所の運営において女性の能力や意見を生かせる場を確保する、トイレの設置・運用訓練・使用ルール決めをする、手洗い用水を確保するなど。

4.受援体制の確立
外部からの支援を受け入れやすくするために、平時から行政職員、ボランティア・NPO、保健・福祉関係者、医療従事者、警察などと住民が連携しあう形で備える。その際、女性の視点を取り入れることでより具体的な意見の反映が期待できる。

5.帰宅困難者・在宅避難者
在宅避難者の安否確認方法・対応方針を検討する、在宅避難者のニーズ把握・生活支援方法を具体的に確立するなど。

Ⅱ避難所の運営(発災後)

9.トイレの確保・管理
「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」を参考に計画を作成する、被災者の数に対して適切なトイレの数を確保する(国際基準も参考にした計算シート付き)、トイレの設置に際しては女性や要配慮者に意見を求める、高齢者・障害者用トイレの同線の安全性を確保する、防犯対策としてトイレの中と外に照明を確保し、鍵・防犯ブザーを設置する、手すりの設置・段差の解消をする、子ども用のトイレ(便座)を確保する、感染症患者が出た時の専用トイレを確保する、装具交換やおむつ交換のたえの折り畳み台を設置する、人工肛門・膀胱保有者のための装具交換設備とスペースの設置を検討する、など。

11.避難者の健康管理
「避難生活を過ごす方々の健康管理に関するガイドライン」(厚生労働省)を踏まえ、健康管理体制の確立、感染症対策、その他の病気(食中毒・生活不活発病・持病の悪化・エコノミークラス症候群・熱中症など)の対策、暑さ・寒さ対策を行うなど。

12.寝床の改善
健康維持にとって重要なため、寝床を整備できるよう資材を確保すること(寝具・間仕切り等の調達)、段ボールベット等簡易ベッドの設置を検討することなど。

Ⅲニーズへの対応

15.配慮が必要な方への対応
高齢者・障害者・妊産婦・乳幼児・難病・外国人等の要配慮者の支援のため、避難環境についての当事者からの聞き取り、段差の解消等の環境整備、避難者同士の見守り体制の確保、福祉避難所への移動の方法、在宅避難している要配慮者の支援ニーズの把握など。

16.女性・子どもへの配慮
女性・妊産婦に必要な物資・環境を確保する、女性用更衣室・授乳室の設置、母子避難スペース・キッズスペースの設置を検討する、性別配慮について意見が反映できる環境を確保する、家庭的ニーズの絶曲的掘り起しをする、安心して話ができる女性だけの場を検討するなど。

17.防犯対策
避難者同士の見守り体制の確保、仮設トイレ等の防犯対策、地域の防犯見守り体制の確保など。
18.ペットへの対応
ペット同伴避難のルールおよびペット滞在ルールを確認する、ペット滞在場所の設置を検討するなど。

釜石市「避難所運営担当職員用マニュアル改定のための提言ワークショップ」続報

3月のメールマガジンでご紹介した、釜石市の「避難所運営担当職員用マニュアル改定のための提言ワークショップ」の続報です。

釜石市とカリタス釜石の共催により、防災士や民生児童委員、復興住宅自治会、女性消防団、一般の住民男女からなる「男女(みんな)で地域防災について考える会」のみなさんが、避難所運営のマニュアル改定のための提言をとりまとめられ、当センターがそのお手伝いをさせていただいたものです。これに対する、市長さんと担当部局からの回答をご紹介したいと思います。

回答の基本的考え方は「住民男女が男女共同参画の視点からマニュアルを見直した貴重な提言で、『男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針』(内閣府男女共同参画局、平成25年5月)にも示されている内容であることから、多様性配慮の視点に立って、提言内容の実現に努力する」とのことです。住民による提言であることが尊重され、そして後ろ盾となる政府の方針の存在が大きな意味を持ったのではないでしょうか。

具体的には、
①東日本大震災で実際に避難所運営に従事した女性職員を中心に今後の災害対応のあり方に関する検討会議を開催し、具体的な意見をマニュアル改定に反映する、
②地域が主体となった避難所運営等地域防災力の向上のために、町内会や防災士等を中心に幅広く協議や訓練等の取組みを実施する、
③住民一人ひとりの防災意識と行動力の向上に努めると共に各関係機関、企業等との連携を深め、全市が一体となった災害対応体制が構築できるように取り組むことです(復興釜石新聞4月30日)。

避難所運営や備蓄物資、女性と子どもの安全対策などに関する個別の提言内容に対しても、細かな回答が作成されました。「男女(みんな)で地域防災について考える会」のみなさんは、提言が受け入れられた部分が多いと、手ごたえを感じておられます。男女共同参画・多様性配慮の視点を組み込んだ防災体制への道のりは長いですが、すばらしい第一歩ですね。

今後は、示された基本的考え方がしっかり今後の活動に反映されるよう、また個別の提言に関する回答が具体的に実践されるよう、住民の皆さんと自治体行政の皆さんの力あわせを、当センターも応援し続けたいと思います。

(文責:池田恵子)

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