●熊本地震
防げ犯罪、応援警官5000人 空き巣や詐欺
(毎日新聞2016年5月3日 22時50分)
熊本地震の被災地を狙った空き巣などの被害が相次いでいる。熊本県警によると、避難中の留守宅などでの窃盗が未遂を含め36件(3日現在)あり、地震に便乗した不審電話などに関する相談も30件を超えている。届け出をためらう被災者もおり、実際の被害はさらに多いとみられる。貴重品を守ろうと車中泊を選ぶ避難者もおり、体調不良も招きかねない。熊本県警は全国から延べ約5000人の警察官の派遣を受け、警戒に当たる。
倒壊した家屋が並ぶ熊本県益城(ましき)町。4月29日未明、人通りの少ない住宅街を福岡、熊本両県警の捜査員3人を乗せた捜査車両が時速5キロほどで巡回していた。3人は24時間態勢で被災地の犯罪捜査を続ける「特別機動捜査部隊」のメンバーらだ。「新聞配達が始まる午前5時ごろまでが特に危険」。空き巣が多発する時間帯だけに、捜査員の表情は険しい。
懐中電灯で被災家屋の窓や車を照らし、不審者がいないか確認を続ける。午前1時半ごろ、3人が捜査車両を飛び出した。視線の先には中年の夫婦がおり、懐中電灯でごみ袋を照らしている。「持ち物を見せてもらっていいですか」。3人は所持品の確認を始めた。盗品とみられるものは見つからなかったが、「金目のものがないか探していた」と話したため、「ごみ袋から物を取っても(条例違反などの)犯罪になる場合がある」と注意した。
熊本県警によると、36件の窃盗事件のうち、24件は避難者の留守宅で発生した。既に窃盗などの容疑で福岡県の男ら3人を逮捕している。福岡県警の久保田清隆警部補(39)は「留守にする場合でも、夜間は部屋の電気をつけたり、ラジオから音声を流したりしてほしい」と注意を促す。
電話でうそを言って金をだまし取る特殊詐欺とみられる電話や、家屋修理や義援金集めを名目にした不審な人物の訪問事例なども4月29日現在、36件あった。性犯罪の発生も懸念されており、女性警官が避難所を巡回するなどしている。
被害申告をためらう被災者もいる。避難所に身を寄せる益城町の吉村八枝(やつえ)さん(73)は留守宅でネックレスが盗まれているのに気づいた。「貴金属まで持って行く余裕がなかった。疲れて警察に相談もしていない」と話した。
盗難を恐れ避難所を出る人もいる。自宅が全壊し、子供2人と車中泊を続ける熊本市南区の女性(49)は「貴重品などの管理が心配になって車中泊に切り替えた」と明かす。
熊本県警生活安全企画課の西橋一裕次席は「被害に遭ったら、すぐに最寄りの警察署に届け出るか、110番をお願いしたい」と呼びかけている。
http://mainichi.jp/articles/20160504/k00/00m/040/105000c