熊本地震:避難生活なお4割…100人調査回答者
(毎日新聞 2016年6月12日)
帰宅の8割「不安」
熊本地震の発生から14日で2カ月になるのを前に、毎日新聞は追跡アンケートを実施している熊本県内の避難者100人に現在の状況などを聞いた。回答を得られた74人の4割にあたる29人がいまだ避難所など自宅外での避難生活を強いられていた。一方、自宅に戻ったのは45人で回答者の過半数を占めたが、その8割が「余震が怖い」など日々の生活に不安を抱えており、生活再建への道がいまだ険しい現状が浮き彫りになった。
追跡アンケートは、地震で避難所や車中泊など避難生活を強いられた100人に対して続けており、今回で3回目。7〜10日、電話で聞き取りをして74人(発生1カ月の前回は86人)から回答を得た。
依然として避難所や親族宅など自宅外で避難生活を送っていたのは29人(1カ月前は50人)。理由としては「家が全壊したため」などと自宅が住める状態にないとしたものが多かった。建物の被害程度を公的に証明する罹災(りさい)証明書で「全壊」と判定されたのは29人中16人に上ったほか、「水道が出ないため」(南阿蘇村の74歳男性)や「土砂災害の恐れがあるから」(同村の69歳男性)という声もあった。
1人は車中泊を続けている。自宅が「大規模半壊」と判定された益城(ましき)町の介護士、坂元薫さん(49)は、家族のプライバシーの観点から避難所より車中泊を選んだ。近く妹が探してくれた大津町のアパートに移る予定で「体のあちこちが痛いが、あと少しの我慢だと思っている」と話した。
一方、自宅に戻った45人のうち36人が余震への恐怖感や日常生活の問題などの不安を抱えていた。益城町の冨田セツコさん(77)は、罹災証明書で「一部損壊」と判定された家を既に修繕したが「余震や強い風でサッシが揺れる音を聞くと怖くなる」と地震の恐怖が消えていない。自宅が「半壊」の西原村の会社員、野口和敏さん(55)は「屋根瓦が半分落ちた。ブルーシートをかぶせているが、雨漏りがする」と、修理が進まない現状に不安を抱いていた。
罹災証明書の判定に不満を抱く人も少なくない。今回の回答者74人中61人が一度判定を受けたが、うち14人は納得できず、詳細な2次調査を求めていた。「外見を5分見ただけで『一部損壊』と判断されたが、調理台も基礎から大きくずれている」(益城町の66歳男性)などが理由として挙げられた。
また、「収入や経済面で不安はあるか」の問いには6割の44人が不安を口にした。「年金暮らしで、天井やトイレなどの修理費が出せない」(大津町の84歳女性)。家の修繕の費用など、時間とともに被害の深刻さも具体的に明らかになり、経済的な課題が被災者に重くのしかかっている。
http://mainichi.jp/articles/20160612/k00/00m/040/083000c