ああっ!こうした専門書を待っていたんですっっ!
―――実は本書をぱらぱらっとめくってすぐに感動で胸がいっぱいになり、読み進みながら「浅野富美枝先生、ほんとうにありがとうございます!!」と東京から、東北の方向へ向かって叫びたくなりました。
帯に書かれた、「女性視点の支援が本格的に展開された3・11、みやぎの女性たちには、被災女性を支援する力と全国から寄せられた女性視点での支援を受け入れる力があった。その力はどのように形成されたのか、いま地域に欠けているものは何か。女性・生活・地域に視点をおき、現場からひもとく研究提言」とのメッセージ。
ここに、本書が何を明らかにし、何を社会に訴えかけようとしているかがかなり明瞭に書かれていますが、東日本大震災の被災地・みやぎにおいて支援活動をリードしてきた女性たち数人にスポットを当て、ライフヒストリーも丁寧に織り込みながら、戦後日本の地域社会(地縁社会を含みつつも、もっと広い空間からなる市民自治の場としての公共領域)において、女性が主体的に活躍できるような力量形成がどのように行われてきたのかについて、女性自身の生きざま・活動への思いと、環境(政策や女性同士のつながりを持った運動など)の、両面から丁寧に描かれています。
本書を読むと、戦後しばらくの間、ごく普通の女性たちが自治的公共空間を意識しながら主体的に学び、おおぜいの女性の仲間を得られる諸活動への参加の道すじとともに、さらに実践・学習を通して力量を重ねながらリーダーシップを発揮していくことが可能な環境が、全国のすみずみにまで用意されていたことが、“みやぎ”という地域の事例を通して理解できます。もちろんそれは、政策だけでなく、戦後間もないころからの地域の女性たちの主体的な取り組みにより獲得してきた環境でもあるのですが。
そうした環境が機能していた時代に力をつけてきた女性たちが、東日本大震災以前から“みやぎ”でさまざまな公益活動を展開していたわけですが、東日本大震災でもその困難な状況における共助活動や外部からの支援の受け入れにあたって、人としての尊厳とくらし再生という問題に丁寧に向き合いながら、いかにリーダーとして重要な役割を果たしてきたのかが本書には詳しく紹介されています。
しかし、そうしたすばらしい女性リーダーたちを育ててきた環境自体が現在、時代の変化の中でおざなりにされ形骸化したり、若い世代がアクセスしにくいものとなっているのも事実でしょう。
東日本大震災で力を発揮した女性たちの姿を通して、戦後の女性の力量形成をめぐる環境の再評価を丁寧に行われた浅野富美枝先生ですが、本書を結ぶにあたっては、戦後復興の過程でどのように「災害脆弱性」が生み出されたのかについても分析された上で、災害に直面しても「人間の復興」を可能とするような、真に災害に強い国・コミュニティを構築するために何が求められているのか考察されています。
景気低迷、少子高齢化、災害リスクの増大などに直面する昨今、地方創生、女性の活躍推進、国土強靭化、地域防災力の向上などと、さまざまなスローガンが日々掲げられていますが、果たして、本質的なことがきちんと議論されているでしょうか?
浅野富美枝先生のご著書が多くの方に読まれることで、各地の地域政策や防災対策が真に住民・市民のくらしの安全・安心につながる形で豊富化されていくことを願ってやみません。
ぜひ、みなさまもお手にとってご一読下さい!
(文責:浅野幸子)