紡がれる学習支援の志 被災地に参考書送った都内大学生グループ

紡がれる学習支援の志 被災地に参考書送った都内大学生グループ
(東京新聞 2016年8月3日)

 東日本大震災の直後、勉強道具を失った被災地の中高生に参考書を送ろうと、東京都内の大学生が結成したグループがある。あれから5年、初期メンバーは卒業しても学習支援の活動は後輩たちがしっかりと引き継いだ。 

 「水素と酸素を化合すると何ができる?」「水」「それじゃあ、炭素と酸素は?」「二酸化炭素だね」

 福島県南相馬市で開かれた参加無料の勉強会。地元の中高生十人余りが参加していた。講師を務めていたのは、大学生グループ「参考書宅救便」の四人。子どもたちは「社会科の苦手なところを教えてもらえ、よかった」「将来は理学療法士になって人の役に立ちたい」と明るく話した。

 グループは二〇一一年三月、青山学院大の学生だった会社員赤塩勇太さん(27)が知人らに呼びかけてできた。住宅が被災した中高生が「受験勉強ができるか心配」と話すのをテレビで見て、中古の参考書や教科書を集めて送ることを思い立った。
 インターネットで全国から寄贈を呼び掛け、少なくみても二万冊が集まった。宮城、岩手、福島の東北三県の中高生や学習塾に送った。だが、被災地の物不足が落ち着いてくると、参考書はあまり求められなくなった。一四年からは南相馬市を訪れ、無料の勉強会を開いている。

 南相馬市によると、震災前には約七万二千人だった市内の人口は、今年三月末時点では約五万三千人。なかでも若者の減少が激しい。二十四歳以下の人口は約一万六千人から約九千人へと落ち込んだ。市の担当者は「福島第一原発事故で市外に避難し、そこで就職や進学をする若者も多いのではないか」と言う。

 市内で学習塾を開く番場さち子さん(55)は、無料学習会に塾の教え子たちを通わせている。「若い人たちと触れ合う機会が少なくなった南相馬の子どもたちにとって、お兄さん、お姉さんのような存在は本当にありがたい。『東京の大学に進学したい』といった目標にもつながるし、学生たちからオシャレを学ぶ子もいるようです」

 グループのメンバーは現在、青学大、成蹊大、昭和女子大などに通う十五人ほど。かつて、さまざまな大学から二百人ほどが集まっていたから、ずいぶんと減った。ツイッターで「仲間になりませんか」とメンバーを募集している。「今更、震災支援するの?そう思っている大学生の皆さん。今更じゃない、今だからできる復興支援を一緒に作りましょう!」

 震災の記憶を風化させないこと。それが大きな目標だ。代表の青学大三年、大賀航介さん(20)は「メンバーは減っても『学生だからこそできることは何か』を考え続けていきたい」と話す。

 問い合わせは、電子メール=sankousho311@gmail.com=で。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/metropolitan/list/201608/CK2016080302000201.html

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