5月31日、ネパール大地震の災害発生後10日前後で被災地に入り、約1週間にわたり支援活動を行った上智大学の田中雅子さんに、現地の状況と支援活動の様子などについてお話しいただきましたのでその一部をご紹介します。また、これまで田中さんへ寄せられた寄附の使途についても記載しました。
なお当日は、参加費のほかに5万円近いカンパをいただきました。ありがとうございます。事前にお預かりしていたカンパと、参加費から資料の印刷代等の必要経費を差し引いた残額を合わせた合計5万400円を、ネパールの女性支援のために寄付させていただきました。
・・・・・・・・・・・・・・・・<報告の概要>・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1990年以降、ネパールは民主化をめぐって政情不安定な状態が続き、国家再建は途上にある。民族やカースト、出身地や性別による格差や不平等の克服はあらゆる分野で課題となっている。2009年、国連開発計画(UNDP)の支援を受けたNGOが、兵庫行動枠組みに沿って策定した「災害リスク管理国家戦略」(NSDRM)においても、ジェンダー配慮と社会包摂について言及されている。具体的な取り組みはまだこれからだが、行政文書に明文化されていることは、現実の対策や支援において交渉ツールとなるため、意義は大きい。
今回の地震の被害エリアの地理的特性としては、中国(チベット)との国境沿いでは、歩いて数日かかる村も多く、土砂崩れや地滑りなどの災害の頻発地帯であること、非ヒンドゥ民族、首都圏への移住者、女性世帯主が多く、高齢者の割合も意外に高いことが挙げられる。5月17日時点の死者は8,585人で、10歳以下の死者が女性のうちの24%、男性のうちの28%と、自力での脱出が難しい幼い子どもの犠牲が多かったことがうかがえる。
避難生活における住環境は劣悪で、防水シートを張っただけのテント暮らしが多い。首都カトマンドゥから車で1時間程度の町に住む女性でも、食糧等の支援や情報へのアクセスは難しい。
支援にあたっては、国内外の支援関係者による合同調整機構として、他国における過去の大規模災害でも取り組まれてきた「クラスター・アプローチ」が採用されている。これは、分野ごとに、ネパール側の主導省庁と主担当となる国際機関を決め、そこに国内外のNGO等が連携して支援に取り組む仕組みである。例えば、避難所はネパール都市開発省と国連人間居住計画(UNHABITAT)・国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)、保健は保健・人口省と世界保健機構(WHO)など11分野に分かれている。その中に特に脆弱な人々を対象とした「保護(Protection)」分野も設けられており、ネパールでは、女性子ども社会福祉省と国連児童基金(UNICEF)および国連人口基金(UNFPA)が連携して調整にあたっている。
保護分野の中に、「ジェンダーに起因する暴力(Gender-Based Violence: GBV)の予防と対応部会」も設置されており、UNFPAが窓口となって取り組んでいる。具体的には、尊厳キット(女性用品セット)、Women-Friendly Safe Spaceの設置、心理社会カウンセリングの実施、シェルター・警察・保護分野に関わるスタッフ向けのジェンダーに起因する暴力に関する研修、レイプ被害者用キットや暴力被害者相談用マニュアルや人身売買予防リーフレットの配布およびラジオ番組の放送、人身売買監視のための国境警備強化、DV監視のための指標の作成を行っている。
また、各調整分野(クラスター)の活動にジェンダー視点を主流化させるために、国連女性機関(UNWOMEN)が窓口となって「横断的ジェンダー配慮部会」も設けられている。女性グループによる救援物資の配布の促進、各郡におけるジェンダー視点での被災状況分析、ジェンダー/性別のニーズ調査実施、女性の人口統計分析、各クラスター関係者に対するジェンダー・チェックリストの提供、各クラスター内におけるジェンダー担当者の配置、女性団体の活動分布図の作成、現金給付労働(Cash for Work)ガイドライン等へのジェンダー視点からの加筆などを行っている。また、救援活動・体制における女性の代表制とリーダーシップ、協議の場への参加の確保、女性や少女に対する暴力の予防、(特に障害を持つ女性たちを優先する)女性ための事業支援基金の設立などを求めて現地の女性団体が共同声明を出した際、それを支持した。
ネパールでは、地震が起きる前から、多くの女性団体が差別や人身売買など人権問題に取り組んできた。草の根の女性組織とともに、暴力の予防や監視など女性の人権問題に取り組んできた「女性たちの回復センター(WOREC)」や、WORECが育成した人身売買のサバイバーによる当事者団体「シャクティ・サムハ」などが、地震直後から厳しい状況下でありながらも、様々な女性支援のための活動を展開している。
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田中さんからはこうした概要の説明の後、草の根で活動している女性団体等による支援活動の詳しい内容についても報告をいただきましたが、それは次回のメルマガで詳細をお伝えしたいと思います。
なお、これまで田中さんのもとに寄せられた寄附に対するお礼とともに、下記の通り、「女性たちの回復センター(WOREC)」および人身売買のサバイバーによる当事者団体シャクティ・サムハの初動支援活動に使わせていただいた旨の報告がありました。残額については、今後WORECと覚書を締結し、女性支援に有効に使っていただく予定とのことです。
◆寄付(2015年4月28日―5月27日)104件(団体・個人)
現金-1,311,333円
物資-女性用下着、子ども用毛布、生理用品等(在日ネパール女性グループより)
(WORECに5月1日配送)
◆送金(2015年4月29日―5月27日)
WOREC 548,453円(うち126,517円はSafe Space用テント5張分)
シャクティ・サムハ 198,756円
◆残高 564,124円
WORECと覚書を結び、関連団体も含めた活動用に送金予定
◆ネパールの女性支援に関する募金について
ネパールの女性支援に学ぶ会で報告いただいた田中さんより、今後もネパールの女性支援を継続していくため、改めて「ネパール地震ジェンダー配慮支援の会」として引き続き募金をお願いしたいとのことですので、募金先の情報を掲載させていただきます。
■ネパール地震ジェンダー配慮支援の会 募金先(代表 田中雅子)
※他行からのお振込みの場合
金融機関:ゆうちょ銀行
店名:〇五八(ゼロゴハチ)
番号:普通口座 7734619
名義:ネパールジシンジェンダーハイリョシエンノカイ
(ネパール地震ジェンダー配慮支援の会)※ゆうちょ銀行からお振込みの場合
記号 10500
番号 77346191