「防災の主流化」研修(JICA主催)より

今年3月に行われた仙台防災会議で採択された「仙台防災枠組」(2015-2030)の基本的な考え方は、社会に潜む脆弱性の解消も視野に入れた「災害リスク削減」です。つまり貧困対策、ケア、就労や雇用、医療制度、社会保障制度、地域政策など、社会の脆弱性と関わる分野と災害リスクを重ねあわせて対策を取ることが大切だということです。

日本政府が行う防災分野での国際協力も、その方向性を目指していますが、発展途上国から災害関連の政策を担う公務員を招いて行われている研修(「防災の主流化」研修)の一環として、先日都内で、各国の政策・制度整備状況の報告会が開催されたため参加してきました。ちなみに当センターは、この研修の一コマで「災害リスク削減のジェンダー主流化」の講義・演習を担当しています。

研修生は、12カ国から15人で、危機管理担当だけではなく、保健医療や社会福祉担当の省庁や、警察、市民防衛(Civil Defense)部署の人も複数いました。残念だったのは、研修生が全員男性だったことです。

まず研修の冒頭で、講師から仙台防災枠組に触れながら災害リスク削減の説明がありました。
1)防災や発災後の救援体制の充実だけではなく「災害リスク削減」を政策として明示すること、2)社会経済環境面のすべての政策分野と災害リスク削減を関連付けるためには、他の省庁と連携することが重要なこと、3)そのためには災害が起こった後ではなく事前に投資を行う必要があることなどが強調されました。

報告の中から印象に残ったものを幾つか紹介します。南米のチリでは、保健分野の国家戦略の中に災害対応が位置づけられ、保健省内の各部署が災害時に連携できる仕組みが紹介されました。ジェンダーの話はありませんでしたが、先住民(インディオ)団体との連携について指摘がありました。また、チリでは、自治体と大学とコミュニティが協働し、日中だけではなく真夜中にも津波避難訓練をしているそうです。フィジーの防災対策は、農村海洋開発・防災省が担っているようですが、報告者によると、単一の省庁が担っていても開発政策と防災を結びつけるのは、これからの課題とのことでした。一方、バングラデシュでは、15の省庁で担当分野の政策に災害リスク削減を統合するためのアクションプランが作成済みだそうです。

多様なバックグラウンドを持つ参加者の報告は内容が多岐にわたり、これから新しい政策や制度を作り上げていくのだという熱意が感じられるものばかりでした。災害リスク削減の発想は、ぜひ日本国内でも主流になってほしいものです。

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  JICA研修の様子

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