発達障害者「配慮を」=避難所入れず物資困窮-家族ら、無理解を痛感・熊本地震:
(時事ドットコム 2016年04月26日09時28分)
http://www.jiji.com/sp/article?k=2016042600039&g=soc
熊本地震では、自閉症など発達障害を持つ子供やその家族の多くが、トラブルを恐れて避難所に入れず、車や自宅での生活を強いられている。行列に長時間並べず、食料や水の配給すら受けられない人も。東日本大震災で同様の問題が多発したため、厚生労働省などは必要な対応をパンフレットにまとめたが、教訓が生かされたとは言い難い。
被災による環境変化に対応できない発達障害の人は、共同生活になじめずパニックを起こしたり、大声を上げたりすることがある。制止や叱責が混乱を助長する場合もあり、周囲の理解と支援が必要だ。
「『物資が欲しければ避難所に入ればいい』と門前払いされた。入れないから苦しんでいるのに」。発達障害の息子(15)がいる熊本市の岡田丈二さん(50)は悔しそうにつぶやいた。16日未明の本震でライフラインが止まったが、地震におびえ落ち着きをなくした息子を見ると、周囲への迷惑が不安で避難所に行けなかった。
自宅の備蓄が底を尽き、助けを求めた避難所で掛けられたのは「一人一つ、平等なので欲しければ並んでください」という言葉。息子連れで長時間並ぶのは不可能で、手ぶらで自宅に戻った。
同じ境遇の人から相談を受けた古木満雄さん(63)は、発達障害を持つ次男を施設に預けて支援に奔走。同市の支援センターに掛け合い、何とか回してもらった物資を障害者のいる家庭に配った。センターもそこで問題に気付き、ようやく21日に物資を受け取れない人向けの配給を始めた。
「誰も避難できず、じっと我慢していた」と振り返る古木さん。避難所でパンフレットを見せて説明しても取り合ってもらえず、「普段以上に理解のなさを痛感した」と話した。
「張り詰めた中で問題を起こせば地域に住めなくなる。避難所に入れない自分たちはどこにいけばいいのか」と話すのは、自閉症の娘を持つ益城町の玉作恵子さん(58)。過去の台風や防災訓練でも全く対応がなく、「高齢者らと同じ配慮の目を少しでも向けてほしい」と訴えた。
厚労省所管の発達障害情報・支援センターの東日本大震災翌年の調査では、岩手、宮城、福島の3県で回答した276人中、避難所に行ったのは23%。「問題なく過ごせた」のはその18%だけだった。同省の担当者は「市などと連携し、熊本地震の実態把握や対策に努めたい」と話した。