「窃盗目的で熊本に」 地震に乗じた犯罪、善意も標的に

●「窃盗目的で熊本に」 地震に乗じた犯罪、善意も標的に
(朝日新聞 2016年5月3日16時12分)

 熊本県などでの一連の地震で、被災した住宅を狙った空き巣などの犯罪が相次いでいる。義援金の募集を装った不審な電話もあり、警察や国民生活センターは注意を呼びかけている。

4月16日未明。停電で暗闇に包まれた熊本市中央区の住宅街。近くの公園に避難した女性(46)は、所有するアパートへ毛布を取りに戻ったところ、2階の窓から青白いライトの光がもれ、動くのに気づいた。本震から約2時間半後のことだ。
 空室で物置にしている部屋だった。「おかしい」。階段を駆け上がった先に、小太りの男が立っていた。部屋からはもう1人、若い男。問いただすと、「助けて、って声がしたんで、中に入ったんです」。
 「そこは誰もおらん! お前ら泥棒だろ!」
 「違います、違います」
 階段を下りる2人を、騒ぎに気づいた近隣住民ら数人が囲んだ。
 「部屋に入っとったろうが。名前ば、はよ言え」
 「何もしていません。とっていません」

 押し問答が数分続き、2人の身柄は駆けつけた警察官に引き渡された。アパートの廊下には物色に使ったとみられる手袋があった。
 任意捜査を経て、熊本県警に建造物侵入と窃盗未遂容疑で12日後に逮捕されたのは、ともに福岡県大牟田市に住む会社員の30歳と21歳の男。2人は容疑を認め「震災直後は家が無施錠になると考え、窃盗目的で熊本に来た」「この地震は、大金を手に入れ人生を一発逆転できるチャンスだと思った」などと供述しているという。
 狙われた部屋は、女性が本震直後に荷物を取った後は無施錠だった。女性は「地震のこの大変な時に、犯罪へ考えが及ぶなんて、腹立たしいし、悲しい」。
 災害の混乱に乗じた窃盗事件は2011年の東日本大震災で多発した。警察庁によると、原発事故で多くの住民が避難した福島県では、同年3~12月の空き巣被害が1108件発生。前年の同じ時期より約500件増えた。15年9月の茨城県常総市の水害時も、発生から数日間で市内だけで窃盗事件が20件以上起きた。
 熊本県警によると、震災関連の窃盗などの事件は、未遂を含め5月2日現在で34件確認された。
 被害を防ぐため、県警は福岡、佐賀、長崎、宮崎、鹿児島の5県警から機動捜査隊員計28人の応援を得てパトロールを強化。倒壊の危険などがある家屋を中心に目を配る。熊本県益城町などで警戒に当たる佐賀県警機動捜査隊の男性巡査部長は言う。「熊本県民の安心安全のために、力になりたい」

■「市役所職員」名乗り義援金要求も
 事件は窃盗にとどまらない。

 「熊本で震災に遭った」。4月23日、鹿児島県薩摩川内市の路上で女子大生(19)は男に声をかけられ、信用して1万円を渡した。善意につけこんで金を借り、そのままだまし取る「寸借詐欺」の典型的な手口だ。県警は翌日、住所不定の男(23)を逮捕した。被災はうそと認めたという。
 「市役所職員」を名乗る人物が義援金を要求したのは、熊本県上天草市。市などによると、4月下旬に民家を訪ね、応対した高齢男性に「義援金を集めている。みんな出してくれている」と再三迫った。不審に思った男性は支払いを断ったという。市は「自治体が戸別訪問で義援金を集めることはない」と注意を促す。警察庁の調べでは、「義援金」などをかたる不審な電話は全国で9件確認された。
 「義援金のためプリペイドカードの購入を求められた」「家屋の修理で高額を請求された」といった訴えが相次いだことを受け、国民生活センターは4月28日から被災者を対象に無料の電話相談(0120・7934・48、毎日午前10~午後4時)を始めた。地域の建築士や工務店などでつくる熊本県伝統建築連絡協議会なども2日から住宅に関する電話相談(096・282・0339)を始めた。

http://www.asahi.com/articles/ASJ4Z0GXQJ4YTIPE04R.html

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