弱者避難、都市部に課題 熊本市、要援護4万人の悩み

弱者避難、都市部に課題 熊本市、要援護4万人の悩み
(西日本新聞 2016年06月05日 01時22分)

 国は災害時に自力で逃げられない高齢者などを避難時の要援護者と位置付け、市町村に名簿の作成を義務付けて地域住民同士で避難に当たる個別計画の策定を求めている。「公助」の限界が露呈した阪神大震災(1995年)以降の大型災害を教訓に、都市型災害などに備える「共助」の仕組みだ。熊本地震で被災した政令市・熊本市も独自に制度を設け、個別計画の策定を「ほぼ100%」と説明していたが-。現場を歩くと、課題が見えてきた。

 「形だけ。現場に丸投げしているのが実態」。歩くのにも手助けがいるお年寄りや障害のある人など要援護者を支援する中央区の民生委員女性(65)は憤る。

 4月14日夜、自宅で食事中に激しい揺れに見舞われた。同じマンションに住むもう1人の民生委員と震える体を支え合いながら、地域の高齢者約200人の自宅を回り、避難を呼び掛けた。市が独自に作成している「要援護者名簿」も渡されてはいた。でも約800世帯のうち、記載された要援護者は6人だけ。

 女性は「要援護者に当てはまりそうな人はいっぱいいるのに、市民はほとんど知らない。市も積極的に広報しているように見えない」と打ち明ける。

■個人情報に二の足

 市は名簿の作成を、国側の指針に基づいて2007年に開始。09年から市社会福祉協議会を窓口とし、自治会や民生委員を通して作成を本格化させた。ただし避難時に手助けが必要と自ら“手を挙げた”人に限っているのが実情。今年3月末の名簿掲載者は9764人。市民約74万人の1・3%にすぎない。

 市によると、名簿に載った人(登録者)については、災害時に誰が声掛けし、避難を手助けするのか(支援者)、どこを通って避難所に行くのか(避難経路)を示した個別計画を策定。地域の関係者が日常的に共有する。個別計画の策定率は98・9%という。

 一方で、国は多くの高齢者が犠牲になった11年の東日本大震災を踏まえ、希望者だけでなく「要介護認定3~5」など一定の要件に当てはまる全員を掲載するよう指針を変更。14年度から名簿作成を市町村の義務とし、1人ずつ同意を取って個別計画策定につなげるよう促している。

 熊本市も実は「全員」の名簿を作成中。今年1月時点で該当者は延べ4万1361人に上るものの「まずは従来の制度を進める」と市健康福祉政策課。「希望者なら、登録時に情報共有の同意が取れている」

 要援護者の“所在周知”は個人情報に関わるため二の足を踏む向きが少なくない。同意が取れたとしても、個別計画策定には、避難時の負担が重くなる支援者のなり手がなかなか見つからないという課題も横たわる。希望者優先は、実効性ある避難計画づくりの“近道”というわけだ。

    ◇      ◇

◆「近所の助け合い」成果も

 隣人関係が希薄になりがちな都市部では特に、共助の仕組みが広がりにくい。防災システム研究所(東京)の山村武彦所長は「頼れるのは近所の人。気づいたら声を掛け合う『近助』の関係を日ごろからつくるしかない」と強調する。

 同市中央区黒髪校区の自主防災クラブ(54人)は「前震」翌日の4月15日、地元の要援護者24人に対し、自主的に手分けして中学校への避難を呼びかけ、ほぼ全員が集まった。ちょうど作成に入っていた「井戸マップ」を頼りに水をくみ、避難所で使えなくなったトイレに流すなど「やれることは何でもやった」と交野(かたの)富清会長(76)。日ごろの顔の見える関係が、緊急時に功を奏した好例だ。

 こうした地域住民主体の「地区防災計画」の普及を提唱する室崎益輝神戸大名誉教授は「紙切れ一枚でいいので、地震発生時にどうするのかを住民同士で決めることが重要だ。その過程で人間関係が醸成されていく」と指摘する。

【ワードBOX】災害避難時の個別計画

 2014年4月施行の改正災害対策基本法により、高齢者や障害者など要援護者の名簿作成が全市町村に義務化された。個別計画の作成は義務ではなく、国は指針により、市町村に対し、名簿を基に自主防災組織などと連携し、要援護者をそれぞれ支援する人の名前や避難場所へのルートなどを示すよう促している。

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/249927

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