6月8日・10日「災害ボランティアコーディネーター養成講座 運営者コース」報告

「災害ボランティアコーディネーター養成講座 運営者コース」でお話させていただきました

(東京ボランティア・市民活動センター主催)

今や大災害に「災害ボランティアセンター」が立ち上がるということは、広く一般にも認識されていますが、その実際の活動と本来的に期待されていることは多様で幅があります。また、実際に大災害が起こると、目の前の業務に追われて十分に機能が発揮できなくなる傾向も被災地ではみられます。

そこで、東京ボランティア・市民活動センターでは「25の事例・視点から学ぶ 災害ボランティアセンター設置・運営のヒント」を作成しました。当センターの浅野も作成に参加しました。

そして6月8日と10日、主に都内市町村の社会福祉協議会職員を対象に(一部NGOからも参加)、この冊子作成に参加・協力した災害支援のNPO/NGOや社会福祉協議会のメンバーなども各セッションごとに登壇する形の「災害ボランティアコーディネーター養成講座 運営者コース」が実施されました。
 

●災害ボランティアコーディネーター養成講座 運営者コース

主なテーマは下記の通りです。

男女共同参画の視点の防災の取り組みは、幅広い関係者、特に、地域コミュニティや行政の危機管理部門、要配慮者支援に関わる部門、そして、災害ボランティア活動に関わる人たちなどにも知っていただくことが重要です。浅野も作成関係者として登壇させていただきましたが、大変貴重な機会をいただきました。

各セッションでは、登壇者がそれぞれ執筆した事例等と絡めて10分程度発言したのち、参加者が各自持ってきた災害ボランティアセンターの運営マニュアルなども見ながら、テーマに沿って議論する形をとりました。

2)ボランティアの安全衛生について
健康リスクや公衆衛生的な安全衛生の観点に加えて、浅野からは暴力リスクの問題と対応体制(被災者同士、被災者と支援者、支援者同士)、個人情報などの管理について提起しました。

3)被災者のニーズ把握について
積極的なニーズの掘り起こしが論点でしたが、浅野からは、性別の視点でのニーズ把握の重要性について説明しました。特に女性が家族のケア役割を追わざるを得ない現状の中にあって、特に乳幼児・高齢者・障害者などの支援と女性の支援は裏表の関係ともいえます。

6)災害ボランティア・NPOにおける支援の視点について(寄り添い・エンパワメント)
被災者への寄り添いとエンパワメントが論点となっており、浅野からは、被災女性たちがプライバシーや安全も保たれない状況の中で、家族の世話に追われてパワーレスな状態となってしまう状況いついて説明し、寄り添い支援や女性が安心して話をしたり意見が出せる状況を作っていくことの重要性、そして、脆弱な立場におかれがちな人たちこそ、主体性を取り戻し、リーダーシップも発揮できるように支援していくことの重要性についてお話しました。

7)災害ボランティア・NPOにおける平時の取り組みを考える
国連防災世界会議の「仙台防災枠組」の概要および災害リスク削減の考え方の説明とともに、平時から地域・社会を安全・安心で持続可能なものにしていくことが、災害の被害を防ぐことにつながるという考え方が国際的には主流であることをお伝えし、平常時の地域福祉の推進や貧困問題や暴力問題・男女不平等の改善と、災害時の被災者支援・対応体制については、表裏のものとして考えていきましょうと提案しました。

両日とも、人道支援の最低基準「スフィア・プロジェクト」の抜粋も紹介しながら、ジェンダーの視点が、単に女性の支援にとどまらず、被災者支援のあらゆる側面に関係していることをお伝えし、男女共同参画センターや女性団体との平常時からの連携を提案しました。

(文責:浅野幸子)

 

<講座の内容> 〜は登壇者。登壇者のうち女性は、浅野と神元氏

【6月8日(水)】
1)災害ボランティアセンターの設置目的について考える
  〜ADRA Japan:渡邉氏  文京区社協:平石氏
   ピースボート災害ボランティアセンター(PBVC):上島氏

2)ボランティアの安全衛生について
  〜震災がつなぐ全国ネットワーク(震つな):松山氏  GDRR:浅野

3)被災者のニーズ把握について
  〜震つな:松山氏 GDRR:浅野 大島社会福祉協議会:鈴木氏

4)災害ボランティア・NPOの連携(民間×民間)について
  〜大島社協:鈴木氏 ピースボート災害ボランティアセンター:上島氏

【6月10日(金)】
5)災害ボランティア・NPOと行政との連携(官民連携)について
  〜大島社協:鈴木氏 (PBVC):上島氏
   いたばし総合ボランティアセンター:神元氏

6)災害ボランティア・NPOにおける支援の視点について
  (寄り添い・エンパワメント)
  〜大島社協:鈴木氏 いたばしボラセン:神元氏 GDRR:浅野

7)災害ボランティア・NPOにおける平時の取り組みを考える
  〜大和市社協ボラセン:浅見氏 GDRR:浅野
   東京災害ボランティアネットワーク:福田氏

 
※補足
災害ボランティアセンターについて少し浅野なりに補足します。現在、災害ボランティアセンターは、各市町村や都道府県の社会福祉協議会が、自治体との協定に従って設置・運営を担うというケースが大半です。

しかし、社会福祉協議会(以下、社協と略記)は日頃から地域福祉に関わる業務を担う組織であり(小地域福祉活動の振興、権利擁護、ボランティアセンターの運営のほか、高齢者・障害者等の直接支援事業を行っているケースもある)、災害支援の専門性を積んでいる人が配置されているわけではありません。

ところが災害ボランティアセンターを設置すると、一般ボランティアの受け入れとともに、ドロ出しやがれき撤去(それに伴う資機材の調達・貸出なども含む)、物資整理、避難所運営支援など、さまざまな被災者支援ニーズへの対応に追われて、災害ボランティアセンターが期待される幅広い役割や、設置主体となる社協が持つ資源や専門性を有効に生かすこともできなくなってしまう傾向もみられます。

またそもそも、災害ボランティアセンターは、同じ自治体内に複数あっても問題はないはずですし(事実、被災エリアが広い場合はサテライトが設置されるケースも多い)、必要に応じて、社会福祉協議会以外の民間団体も災害ボランティアセンターを設置するケースもあってよいはずです。大切なのは、関係者が被災者目線に立ってニーズの把握やアセスメントができるかどうか、そしてさまざまな主体と柔軟に連携・情報共有してコーディネートできているかどうかではないしょうか。

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