福祉避難所「受け入れ可能」4分の1のみ 熊本地震

福祉避難所「受け入れ可能」4分の1のみ 熊本地震
(朝日新聞 2016年7月1日17時56分)

 熊本地震で、災害時に高齢者や障害者を受け入れるために指定されている熊本県内の福祉避難所のうち、発生1カ月半後の6月1日時点で受け入れ可能と確認できた施設は115カ所で、全体の4分の1だった。4分の3は、受け入れ態勢が整っていなかったか、受け入れ可能か確認できなかった。

 県への取材でわかった。国や県は、災害発生後の速やかな福祉避難所の立ち上げなど課題を整理し、今後の災害対策に生かしたい考えだ。

 県によると、福祉避難所は461カ所指定されており、約7400人を受け入れられる。6月1日時点で受け入れ可能だと確認できたのは、このうち115カ所(2401人)だった。

 実際に福祉避難所として開設し、障害者らを受け入れたかどうかも県は調査。前震翌日の4月15日時点では27カ所が開設され、12人を受け入れていた。最も多かったのは6月1日時点の93カ所で、777人を受け入れていた。

 避難の際に手助けが要る「要支援者」の名簿に市町村が登録している人数について、県危機管理防災課は「把握していない」としているが、熊本市だけで約3万5千人いて、大半の要支援者が福祉避難所に入れなかったとみられる。

 多くの福祉避難所が開設できなかった理由として県は、建物が被災した▽被災したスタッフが業務に当たることができなかった▽近隣の住民が避難所として使った――などを挙げる。内閣府は「本来期待された機能を果たせなかったという点もある」としている。

 福祉避難所は、民間の高齢者施設などと市町村が協定を結んで指定するケースが多い。2014年10月時点では全国で7647カ所あった。(小田健司)

■低い認知度「存在、知っていれば」

 災害のときに特別な支援が必要な障害者や高齢者らのために設けられる「福祉避難所」。だが、熊本地震ではその存在さえ知らず、十分な支援を受けられない障害者もいた。支援を受けられても、生活再建で困難に直面している人もいる。

「避難所に入っても、娘が奇声を発して追い出されてしまうのでは」。4月16日、熊本県益城(ましき)町の自宅で本震に襲われた女性(49)は、次女(25)のことを考え、行くのをためらった。

 次女は最重度の知的障害と、難治性てんかんの持病がある。強い不安やストレスを感じると奇声を発することもある。本震直後は泣いて、体をこわばらせた。

 自宅は半壊。福祉避難所という存在も知らず、夫(55)、長女(28)と一家4人で車中泊を考えた。軽乗用車2台に分乗し、大型展示場「グランメッセ熊本」の駐車場へ向かった。

 すぐに困難に直面した。仮設トイレを、見慣れない次女が嫌がった。狭くて家族が介助で一緒に入ることも出来ず、次女は失禁を繰り返した。おむつを着け、座席には防水シートを敷いた。次女は食欲を失い、水もあまり飲まなくなった。

 助けてくれたのは、世話になっていた通所施設。頼むと、職員が閉鎖していた施設を開け、食事も入浴もさせてくれた。本震から5日後のことだった。

 4月末に一家は避難先を町内のテント村に移し、6月からはグランメッセ熊本に福祉避難所として設けられたトレーラーハウスで過ごす。避難先は全て自分たちで探した。最近、次女は落ち着いているという。

 女性は「福祉避難所という存在を知っていたら、こんなに苦しまなかったかもしれない。町が紹介してくれたら」と振り返った。

 熊本市東区の脳性小児まひの男性(59)の借家は、本震で瓦が落ち、壁にひびが入った。窓やドアの枠もゆがんだ。

 9年前に障害者施設を出て、一人暮らしをしていたが、地震で住めなくなり、かつて入所していた障害者施設に避難した。いまは自宅近くの福祉避難所に指定された身体障害者福祉センターにいる。一つの部屋を段ボールの壁で仕切り、4人が寝起きする。トイレや入浴の介助をしてくれるヘルパーも通ってきて、日常生活には不自由は感じない。だが、この施設も30日には閉鎖される。

 市が民間の賃貸住宅を借り上げて被災者に提供する「みなし仮設住宅」で、段差がなく、車いすで部屋まで入れる物件を希望したが、紹介されたアパートの玄関には段差があった。電動車いすで市内を巡り、賃貸住宅を探しているが、スロープがなかったり家賃が上限を超えたりで、条件に合う物件は見つからない。

 7月からは別の施設に移るが、そこもいつ閉鎖されるかわからない。男性は言う。「落ち着ける行き場が決まらなければ、生活を立て直す見通しもつかない」(河崎優子、板倉大地)

■一般の避難所、対応足りず

 熊本地震で被害の大きかった熊本県益城町や熊本市では、町や市が、住まい探しなどの相談を受けて福祉サービスなどにつなげる専門職「相談支援専門員」らに委託し、障害者の状況を把握するための戸別訪問を5月から始めた。

 今月中旬までに訪問した約4千人のうち、100人以上を「継続した支援が必要」と判断した。「家が危険な状態だが本人が離れたがらない」「転居すると福祉サービスを受けられなくなってしまうのでは」といった相談が寄せられている。日本相談支援専門員協会は、必要に応じて障害者相談支援センターなどを紹介するが、人手が足りていないという。

 60人近い障害者や高齢者を受け入れた熊本学園大学の東俊裕教授は「多くの障害者が避難所から実質的に排除され、孤立している」と指摘。「福祉避難所だけでは限界があり、一般の避難所でも受け入れられるようにする必要がある。個別の支援をどう継続していくかが課題」と話す。

http://www.asahi.com/articles/ASJ6Y4TBVJ6YTIPE022.html

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