神戸のNPO法人プラス・アーツが開発した、子ども向けの防災プログラム「イザ!カエルキャラバン」の普及のため、同法人が、プログラムを実践したい人向けの合同研修会が、7月に東京で開催されました。
減災と男女共同参画 研修推進センターの連携講師を務めてもらっている、神奈川災害ボランティアネットワーク理事の塩沢祥子さんが参加し、体験記を寄せてくれました。女性や多様な人たちの地域防災活動への参加を議論すると、必ず出てくる、子育て世代の参加を高めるには?という声。こんなプログラムの存在を紹介するのも良いかと思います。
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熊本地震をはじめ、全国各地で頻発する地震からも、日頃から災害に備える大切さを考える機会がこれまで以上に増えている今日。とはいえ、地域の防災訓練を開催するとなると、若い家族をはじめとする新しい参加者を呼び込めるよう、毎年頭を抱える関係者も少なくないはず。そこで、防災訓練で運営側として携わる私は、以前から気になっていた、子どもも大人も《楽しみ》ながら《防災を学ぶ》がコンセプトの、「イザ!カエルキャラバン!」合同研修会に参加してきました。
▼「イザ!カエルキャラバン」のウェブサイトはこちら
http://www.plus-arts.net/?p=15458
「イザ!カエルキャラバン!」は、子どもたちや若い親子を対象に、震災時に必要な「技」や「知識」を身につけてもらう新しい防災訓練のシステム。美術家・藤浩志さんが全国で展開するおもちゃの物々交換プログラム「かえっこバザール」のシステムと、ゲーム感覚で楽しみながら消火・救出・救護などの知恵や技を学べる「防災訓練プログラム」を組み合わせたプログラムです。2005年に神戸で始まり、全国各地のみならず海外にも広がっています。(NPO法人プラス・アーツHPより)
会場に入ると、まず目を引くのがユニークなカエルのキャラクターと、壁や床一面に並べられた防災教材の数々。そして、高校生からシニア層まで幅広い参加者で満員状態、早くも期待が高まってきます。
前半の講演では、「イザ!カエルキャラバン!」のプログラム開発の経緯と概要、開催事例などの総合的な紹介がありました。そして、机上でメモを取るだけでなく、早速やってみましょう!ということで、まずは折り紙の要領で紙食器作り、防災体操(火事・津波、助けを呼ぶ、毛布担架を表現した体操)などを体験。休憩をはさんで後半では、防災体験プログラム「ミニ・イザ!カエルキャラバン!」として、毛布を使った運搬訓練でタイムを競う「毛布で担架タイムトライアル」、災害時に必要とされる家の中にある物を覚える「持ち出し品なぁに?」、紙芝居を楽しみながら学ぶ防災ゲーム「なまずの学校」など、様々なコーナーを、参加者の興味関心に応じて順々にまわります。
屋外イベントであれば、カエルを的にした「水消火器で的当てゲーム」で消火器の使い方を学ぶ(研修会は屋内のため紹介説明のみ)なども人気があるとのこと。どれも家族や友達と遊びながら防災のことを学び、そしてイザという時に役立つ知識と技術を体験することができるでしょう!
また、子どもたちにとって一層魅力的なのは、防災体験プログラムに参加したり、いらなくなったおもちゃを会場に持ってくるともらえる‘ポイント’を貯めて、おもちゃの購入(かえっこ)ができること。さらに、人気の高いおもちゃをオークション形式で購入できるなど、子どもたちが夢中になる仕組みが随所に散りばめられていました。防災イベントのこれまでのイメージや考え方をガラリと変える斬新さに驚きとワクワク感が込み上げてきました。
写真は、この研修とは別に、いわき市で地元のグループが実施したカエルキャラバンのプログラムの一部の様子。子どもたちは、並べられた防災グッズを短時間で覚えたあと(すぐに布で隠されます)、何が置いてあったか思い出しながら手をあげて答えていきます。その後、講師がグッズを1つひとつ取り上げながら、なぜそのグッズが大事で、どのように活用できるかについて丁寧に説明しました。
今回研修会に参加してみて、防災は命にかかわる大切な取り組みであるけれど、子どもの視点で考え、自発的に参加してみたくなる発想の転換と、イベント演出を中心にしたプログラム構成に工夫を凝らすことにより、いつも決まった顔ぶれだけでなく、これまで防災訓練などに参加しようとしなかった子どもや家族を呼び込める期待を実感することができました。
「イザ!カエルキャラバン!」のこれまでの実績と、地域に応じたアレンジ事例などから、地域の住民が主体となって、一度きりのイベントではなく毎年の楽しみとして行われるイベントとして親しまれるよう、運営する側に立った目線で訓練の企画から具体的なオペレーションまで学べる素晴らしい機会でした。また、研修会終了後には、質問等に対応する個別相談会を受け付けていることも心強くなります。今回の学びや体験を持ち帰り、ぜひ次のアクションへつなげていきたいと思います。
(塩沢祥子)