9月9日 避難所・避難生活学会で勉強して来ました!

9月9日、東京の水道橋で第2回避難所・避難生活学会が開催されたので勉強してきました。

学会の会長は新潟大学で災害時の要援護者支援、エコノミークラス症候群の問題などに取り組んでこられた榛沢和彦先生で、医療関係者を中心に、東日本大震災や熊本地震、阪神・淡路大震災の事例などとともに、被災者の命と健康を守るために広範な議論がなされました。議論の対象は、避難所、在宅避難者、仮設住宅での避難生活がメインですが、都市計画系先生や弁護士・法学系の先生からの報告もあり、被災者支援に関する法制度の現状と問題点なども提起されました。

避難生活を通した、身体機能の低下、関連死、孤独死などをどのように防いでいくのかという具体策はもちろんのこと、日本の災害対策における、被災者支援をめぐる法整備や関係者間の連携など、幅広い課題が視野に入れられた充実した学会でした。

*大会の詳細プログラムはこちら→ http://dsrl.jp/gakkai2/

■どのように健康問題が生じたのか?

なかでも、大規模災害のたびに問題となる避難所の生活環境や支援のあり方についての、専門的な調査に基づいた提起に、問題の深刻さを改めて認識させられました。

最初に報告に立った石巻赤十字病院の植田信策先生は、東日本大震災の時の石巻市内の避難所環境の主な制約要因を、①広汎なインフラ破壊によるライフライン復旧の遅れ、②大量の瓦礫による支援物資の搬入困難、③住環境の喪失による避難生活の長期化、④流入した海の泥による粉じんの飛散、⑤寒冷期から夏期まで避難生活が長期化したことをあげました。

その結果、脱水(衛生状態悪化による嘔吐下痢症、飲用水の不足、不衛生な屋外簡易トイレの使用忌避による水分摂取抑制などが原因)、低体温症(暖房器具・燃料・毛布などの不足、津波でぬれた結果)、筋量や身体能力の低下(密集生活で長期間、姿勢や行動が制約された生活が原因。高齢者では自立度が低下)、不眠・高血圧(床での雑魚寝による睡眠中断が多い。不眠は高血圧の誘因にもなる)、咳・喘息(避難所内の粉じん吸入が原因。床の雑魚寝で悪化)、深部静脈血栓症(DVT。いわゆるエコノミークラス症候群。脱水による血液が粘性を高め、活動低下により下肢血流のうつ滞、避難時の外傷による血管内皮障害などが原因)の問題が起きてしまっていたとのことです。

 熊本地震の被災地からも、避難所及び仮設住宅おける被災者の心身の健康問題について報告がありました。また、テント泊や車中避難といった、熊本地震ならではの避難形態と健康課題についても指摘がありました。なお、熊本県では、「復興にはまず健康!」というポスターを作って、復興リハビリテーション活動を推進中で、地域密着型リハビリテーションセンターを各地に立ち上げて、住民の健康支援をしていく体制を取っているそうです。
このように、東北の事例などを踏まえ、会場では、今後の避難生活の長期化に備えた対策の必要性が共有された形となったように思いました。

■避難所運営に必要な女性、多様性の視点

なお、午後のプログラムには、男女共同参画と災害・復興ネットワーク(JWNDRR)代表の堂本暁子前千葉県知事より、「避難所運営に必要な女性、多様性の視点」と題した報告もなされました。

特に、東日本大震災の被災地で診療にあたった医師を対象に行った、避難所・診療所での医療・健康に関する医師会調査では、震災後におおく見られた疾患とともに、医師自信が避難所で困った理由も聞いており、特に女性への対応については、女性用診察スペースがなく、十分に診療ができなかったという現実や、妊婦への対応が不十分、母乳不足や哺乳力低下といった問題も生じていたとのことです。

国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組み」で、防災政策・計画・基準を企画・立案する際には、女性・子ども・青年・障害者・貧困者・移民・先住民・ボランティア実務担当者・高齢者などの、関係するステークホルダーを関与させる必要があること、女性の参加、女性の能力開発が重要であるとされていることなどについても、わかりやすく説明がなされました。

こうした国際的な潮流について、災害現場では影響力の大きい医療関係者の方々に知っていただくことはとても重要なことだと思いました。

避難所内の真菌浮遊については、避難所の床に直接敷かれた布団と接していた床に、びっしりと白いカビが生えた写真も投影され、いかに劣悪な状況だったかが想像されました。

そして、こうした状況に、簡易ベッドを導入しただけで、咳症状の減少、不眠の解消、腰痛の減少、歩行速度の上昇、身体的精神的ストレスの優位な改善、一部で血栓の減少が見られるなど、被災者の方の心身の健康改善につながったという報告もなされました。

植田先生は、仮設住宅でも心身の健康問題が起こっていると指摘します。同じく午前に報告した盛岡市立病院の佐々木医師の報告によると、仮設住宅紀地上権に着目し、血栓症の人が多い仮設団地は、元の居住地域から離れた不便な場所、傾斜がきつい場所など位置する傾向があるとのことです。

■今後の対策のために

阪神・淡路大震災以降、避難生活の問題は繰り返されてきました。その起こり方に多少の差はあれ、原因や現象は似通っています。持病の悪化、肺炎やインフルエンザ、下痢、血栓症などにより命を落とす人、状態が悪化する人、寝たきりになる人などを生んでしまってきましたが、避難所や仮設住宅の環境改善、適切な支援により改善の余地がたくさんあります。特に、医療関係者と被災した自治体、地域リーダー、ボランティアなどによる効果的な連携が求められます。

加えて、被災者救援のための法律である災害救助法が、生活復旧段階である中・長期的な避難生活に十分対応できていない(古い時代につくられた法律)、災害救助法を被災した自治体や支援者が十分に理解できていない(限界はあるが運用次第でさまざまな支援が可能だが、知らないために、自治体としての支援が限定されてしまう)、といった問題もあります。

これから、防災に取り組む女性が増えていくことでしょう。一方で、災害もさまざまな形を取っていつ襲ってくるともわからない時代となっています。

今後は、医療や法律などの専門家とも連携させていただきながら、男女共同参画・多様性配慮の災害対策・被災者支援の質の向上に努めていく必要があると思いました。

(文責 浅野幸子)

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