●熊本地震:介護に片付け、医療機器破損… 重度障害者の厳しい避難生活「この先どうなるのか」
(産経ニュース 2016年4月30日)
熊本地震で被災した重度障害者らが、厳しい避難生活を強いられている。生活する上で医療機器が欠かせず、体育館などの避難所への避難は難しいが、受け入れてくる病床は限られる。家族も介護に追われて自宅の片付けもままならず、生活を立て直すのが難しい。「この先どうなるのか」。長期化する避難生活に不安を抱える家族もおり、支援を訴えている。
●介護に追われ自宅に帰れず
集落の大半の民家が倒壊した熊本県益城町(ましきまち)の木山地区。集落にある団地の一室で30日、水田光子さん(53)が後片付けに追われていた。
「自宅内の水槽が地震で割れ、今日やっと片付けに手をつけられた」。水田さんはこう語る。長女の愛生子(あいこ)さん(25)は、全身の筋肉が徐々に衰えていく難病「筋ジストロフィー」を患っており、地震後は県内の病院に入院した。ただ医師らは震災への対応に追われ、水田さんが身の回りの世話をするほかない状態が続いた。水田さんがようやく自宅に帰れたのは、地震発生から10日後だったという。
愛生子さんは「早くいつもの生活をしたい。家に帰りたい」と訴えるが、水田さんが自宅の片付けに割ける時間は今も限られ、思うように進んでいない。水田さんは「娘は友人に会いたがっている。早く戻りたいと思ってはいるが…」と語る。
ただ、たとえ退院できても、困難な状態は続くとみられる。愛生子さんは寝たきりで、睡眠時に呼吸が難しいため人工呼吸器が必要。地震の際は、夫の信一郎さん(52)が倒れてくる家具から愛生子さんを必死で守り、暗闇の中で機器を探して逃げた。
幸い機器は無事で、一晩車中泊しただけで入院できる病院も見つかったが、自宅は断水などが続く。光子さんは「生活が安定せず、今後の介護への不安は正直ある」と顔を曇らせる。
●退院を迫られるケースも
さらなる苦境に立たされている重度障害者もいる。支援する「熊本小児在宅ケア・人工呼吸療法研究会」会長の緒方健一医師によると、熊本県内の病院には被災したところもあり、県内では受け入れてもらえずに他県の病院に移った障害者の被災者もいたという。
一方、緊急性が高い患者に病床を空けるため、自宅療養が可能な患者は退院を余儀なくされることもある。しかし、自宅で使う医療機器が壊れているケースもみられ、緒方医師は「継続した生活支援を急ぐ必要がある」と訴えている。
http://www.sankei.com/smp/west/news/160430/wst1604300078-s1.html