【熊本地震】小中学生転出742人 関東や東海にも
(毎日新聞 2016年5月14日)
死者49人、安否不明者1人、震災関連死とみられる犠牲者19人に上った熊本地震は14日、最初の最大震度7の地震発生から1カ月となる。地震後に県内外の別の学校に通い始めた熊本県内の小中学生が少なくとも742人に上ることが、毎日新聞の調査で分かった。現状を把握できていない教育委員会もあり、実態はさらに多いとみられる。
全都道府県と政令市の教育委員会に対し、熊本県内の公立小中学校が再開した11日前後で、転出してきた同県の児童・生徒数を尋ねた。転校は133人、一時的に通う体験入学は234人。残る375人はどちらか区別されていない。
県外転出は513人で、うち転校は101人(小学生87人、中学生14人)。転校先の都道府県は福岡51人▽東京21人▽長崎7人▽大分、埼玉各5人▽愛知4人−−など九州を中心に関東や東海などにも広がる。11県教委は把握していないか、調査中だった。
一方、熊本県内で200棟以上が全半壊した11市町村教委への取材では、県内転出が229人に上った。うち転校は少なくとも32人(小学生23人、中学生9人)だった。
被災地では家屋倒壊などにより避難所で生活していた家族が、親戚宅や他の自治体が用意した公営住宅などに身を寄せるケースが出ている。余震の不安や恐怖から逃れようと被災地を離れる家族もある。県内の教育委員会の担当者は「今は体験入学でも、正式な転校を考えている子どももいる」と話し、転出が長期化するケースは多いとみている。一方で自宅再建や余震終息で戻る子どももいるとみられ、教育委員会は転出家庭と定期的に連絡を取るなどつながり続け、帰還をサポートすることが求められる。【まとめ・川上珠実】
■友達、きっとまた会える 益城→熊本市に転校の中2
13日朝、熊本市南区の市立託麻中学校(生徒数989人)に向かう生徒の列に、転校して4日目の同中2年、汐月佑心(しおつき・ゆうしん)さん(13)の姿があった。4日前まで通っていた熊本県益城町立木山中学校の青い名札とカバンを身につけたまま。「まだちょっと慣れないかな」とはにかんでみせた。
前震があった先月14日夜、町内の塾にいた汐月さんは激しい揺れに襲われた。すぐに母弥生さん(52)が迎えに来たが、戻った自宅には割れた食器や窓ガラスが散乱。16日の本震で自宅の基礎部分に亀裂が入って傾き、家族4人は自宅前に張ったテントや同県美里町にある弥生さんの実家などを転々とする避難生活を送ってきた。
「落ち着いた生活がしたい」。両親が賃貸住宅を探し回り、ようやく見つけたのが熊本市南区のアパートだった。今月上旬に引っ越したが、自宅から自転車で10分ほどだった木山中は、車で30分以上の距離まで遠のいた。
木山中に通うこともできたが、両親に送り迎えは頼めなかった。今月9日、校舎が損壊したため小学校を間借りして授業を再開した木山中に登校し、同級生に転校を告げた。
汐月さんは小学校低学年からラグビースクールに通っており、託麻中では早速ラグビー部に入部。ポジションはスクラムを組み、時には相手に激しくぶつかっていくフォワードだ。「木山中の友達にはきっとまた会える。僕はここで頑張る」。逆境でも前向きに学校生活を送っていくつもりだ。
http://mainichi.jp/articles/20160514/k00/00m/040/166000c