防災・減災 大震法見直し/偏りのない備えこそ必要

防災・減災 大震法見直し/偏りのない備えこそ必要
(河北新報 2016年07月18日)

 地震対策の大枠に関わる大規模地震対策特別措置法(大震法)について、政府が抜本見直し作業に着手する。
 予知を前提に、限定した地域のみを対象として規制含みの対策を盛り込んだ大震法にはかねて批判があり、遅すぎる対応と言えるだろう。
 想定外とされた東日本大震災や、多くの人にとって無警戒だった熊本地震などが発生し、甚大な被害が出ていることをみれば、「いつでもどこでも」を踏まえた普遍的な対策こそが求められている。
 別途定められている南海トラフ対策特措法との整合性を図るといった程度にとどめず、偏りなく全国的な対策を推進する上で必要な措置の検討や弊害の検証まで踏み込み見直しを進めてもらいたい。
 1978年制定の大震法は当時発生が近いと予測された東海地震に備えたもので、予知と警戒宣言を柱にする。
 静岡県など8都県だけを対象に、手厚い観測網で地震の発生を予知し、政府が警戒宣言を発令して、鉄道の運行停止や銀行の営業停止など強い規制まで踏み込む内容だ。
 その後の研究では、東海単独よりも、南海地震と連動する、より広範囲の南海トラフ巨大地震への警戒が強まり、設定は時代遅れになった。
 東日本大震災を受け、政府中央防災会議自体が2013年、「確度高く地震を予測することは一般的に困難」との見解をまとめ、予知が可能という大前提も崩れた。警戒宣言とそれに続く社会規制も非現実的になっている。
 見直しは「東海偏重」を改めて南海トラフ警戒地域などへ適用範囲を広げつつ、予知に頼らない現実的な防災の取り組みと混乱回避策をどう確立するかが焦点になる。
 正確な予知につながらないまでも前兆を察知するための観測強化は必要であり、その情報を共有して備えを万全にする努力は欠かせない。
 警戒地域の自治体や住民が前提の変更を理解し、日常の備えの延長で冷静に事態に対処するためには啓発や訓練の徹底が必須になる。施設整備などハード優先の特措法の中身を、ソフト重視に転換することも重要な鍵になる。
 いつどこで発生するかが分からない以上、切迫度が高いとされる特定の地域だけを視野にした法整備では済まないのも現実だろう。特措法のつぎはぎは限界に来ている。
 この40年近くの地震対策が東海地震に特化した形で進んだことで、結果的により重い防災策が必要だった震災被災地など全国の地震対策にはどんな影響があったのか。検証も併せて進めてほしい。
 地震関連では、大震法以外にも見直しの動きが続く。
 熊本地震では、発生確率が0~0.9%と発表されていた活断層が動いた。活断層としては「やや高い」という判定だったが、数値が独り歩きして地元では「極めて低い確率」と誤解されていた。
 発表元の政府の地震調査研究推進本部は、数値に代えて地震発生のリスクを高低のランクで発表する方向で見直しの検討を始めるという。
 地震警戒は国民の命に関わるだけに、ためらいなく不断の改善努力を続けてほしい。

http://www.kahoku.co.jp/editorial/20160718_01.html

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