8月6日、減災と男女共同参画 研修推進センターは「男女共同参画の視点とともに減災をめざす 公開研究会 東日本大震災から7年目の現状を考える」を東京で開催しました
※プログラム詳細はこちらの次第を参照下さい。
全体は、
【第Ⅰ部 防災体制・避難生活支援の実際】
【第Ⅱ部 災害時の暴力問題とする意見交換会】
【第Ⅲ部 復興課題も見据えた今後の取り組みの方向性を展望する】
の三部構成で、最後に会場全体で意見交換を行いました。
そこで今回は、当センター共同代表の浅野による、[第Ⅰ部 報告①「男女共同参画の視点による平成28年熊本地震対応状況調査報告書」から見た自治体および民間支援団体の取組状況」の概要]と当日資料をご紹介します。
■「男女共同参画の視点による平成28年熊本地震対応状況調査」とは?
資料① 浅野が個人の責任で作成した調査報告書の概要(pdf)
資料② 調査報告書本文:内閣府男女共同参画局のウェブサイトよりダウンロード可
http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/kumamoto_h28_research.html
資料③ 参考としての基礎資料集(pdf)
昨年発生した、平成28年熊本地震では、2度の大きな地震による家屋倒壊とその後のあいつぐ激しい余震、それに伴う避難生活で、直接死50人、関連死180人以上の犠牲者が生じました。
そこで内閣府男女共同参画局は2016年の12月から年度末にかけて、全国の自治体と民間支援団体を対象に、育児・介護ニーズ、女性特有のニーズや安全の問題、生活再建といった観点から、どのような体制でどのような支援を行ったのか、課題は何かを明らかにするために調査を実施し、報告書にまとめました。被災自治体は2県・58市町村、応援自治体は39都道府県・820市区町村、民間は50団体からアンケート調査に対する回答が得られた。また、被災地の自治体、学校、大学、助産師会、保育園、福祉施設、応援自治体などのご協力を得て、15所でヒアリングを実施しました。
公開研究会の当日は、以下のように調査報告書の中からポイントとなりそうな概要をまとめた資料①をご覧ください。
■被災自治体の対応体制・被災者支援状況
アンケート調査では、国の「防災基本計画」および「男女共同参画の視点か状況について聞いています。ここでは被災した市町村の対応体制について見てみましょう。
災害対策本部の構成員に占める女性割合は平均4.3%。男女共同参画担当部局が発災1ヶ月以内に庁内で何らかの働きかけを行えた自治体は4団体(10.8%)。「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」とそのチェックリストの地震前の認識・活用状況については、防災担当主管課では、認識していた40.5%・活用していた18.9%、男女共同参画主管課は同59.5%と29.7%。男女共同参画の視点を踏まえた防災研修を事前に行っていたかどうかについては、職員向け研修で13.8%、住民向け研修で21.9%。自治会や町会等を基盤とする自主防災組織における女性の参画については、女性の参画促進を行っている27.0%、女性防災リーダーの育成を行っている16.2%、という結果でした。
また、避難所運営に関しては、被害が軽微で避難所運営期間が短い市町村を24市町村を対象に分析しています。運営体制に女性が参画していた62.5%。性別役割の偏りの是正に取り組んだ16.7%。間仕切りの活用・女性専用更衣室・授乳室の整備は5割前後の市町村が1ヶ月以内に実施した一方で、4割前後の団体で取り組みがありませんでした。男女別トイレの設置を半月以内に行った71.9%、女性のトイレを男性よりも多めに設置した16.7%でした。女性用物資の女性による配布・乳幼児のいる家庭用エリアの設定・女性のニーズ把握は3割以上の自治体が1ヶ月以内に実施の一方で、4~6割で取り組みがありませんでした。女性に対する暴力防止措置は、1週間以内8.3%、半月以内8.3%で、6割は特に措置はしてないという結果でした。
それでは、こうした対応を可能とした要因はどこにあったのでしょうか?ア1ヶ月以内に取り組みを行ったという市町村30団体からの回答は以下の通りとなっています。
アンケート調査では他にも、指定避難所以外の避難所の状況、母子避難所・所等の開設状況、福祉施設における災害対応、在宅避難・テント泊避難・車中避難状況等についても聞いています。
○指定避難所において男女共同参画の視点からの取組みが比較的早期にできた理由
(1週間以内、半月以内、1ヶ月以内を選択した市町村30団体のうち。複数選択)「地域防災計画、防災マニュアル等に規定してある通り取り組ん46.7%
「避難住民のニーズなどを聞き取って取り組んだ」 46.7%
「自治体内部の職員の議論で意見があり取り組んだ」 33.3%
「支援物資等や避難所の集約により取り組めるようになった」 26.7%
「自治体の災害対策本部からの指摘があった」 16.7%
「国・県などから情報提供されたチェックリストに基づいて取り組んだ」 16.7%
「応援自治体のサポートや指摘を受けて取り組んだ」 16.7%
「民間支援団体のサポートや指摘を受けて取り組んだ」 16.7%
「課題の優先順位として高かったから」 10.0%
「対応に要する費用のねん出の目途が立ったため取り組んだ」 3.3%
また復興過程での女性の参画に関しては、復興計画の策定委員会等に占める7団体でみると平均で11.5%、計画策定の委員に女性を積極的に任命したのは3団体25%で、男女共同参画の視点からの支援を行う団体等にヒアリングを行った1団体8.2%の一方で、半数の6団体で特に配慮・取り組みは行っていないという結果でした。
仮設住宅については、交流の場づくりや個別訪問の取り組みのほか、わずか全への配慮を行った」と回答した市町村もありました。
■応援自治体・民間支援団体
応援自治体からの回答についても見ていきましょう。
「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」とそのチェックリスト60.1%・活用していた30.9%、男女共同参画主管課は同66.7%と22.1%。男女共同参画の視点を踏まえた防災研修を事前に行っていたかどうかについては、職員向け研修で20.8%、住民向け研修で31.2%。自治会や町会等を基盤とする自主防災組織における女性の参画については、女性の参画促進を行っている32.1%、女性防災リーダーの育成を行っている10.4%、という結果でした。
また、被災地に派遣した職員の女性比率を見ると、以下の結果となりました。
派遣職員数: 都道府県 平均180.9人、うち女性27.8人(15.3%)
(696団体中) 市区町村 平均 31.6人、うち女性 3.4人(10.7%)
※女性割合が3割以上となった自治体 88団体(12.6%)
※保健師・看護師・土木・建築職を除く職員の女性割合3割以上 26団体(3.7%)
派遣職員の女性割合が3割以上となった自治体の理由として、「派遣先に求められている要件に合う女性職員が多いから(7.1%)」「派遣の公募に女性職員が応募したため (2.9%)」「男女問わず派遣できるようにしているため(0.7%)」との回答が、また、派遣職員の女性割合が3割未満となった自治体の理由としては、「派遣職員は原則自主的に手をあげた人の中から選定したが、手を上げる女性職員が少なかった(36.7%)」「防災や災害対応の経験がある女性職員が少ない(23.8%)」のほか、男性職員のみ派遣するとの方針を最初から挙げて対応した自治体も一部ありました。
さらに、職員の被災地への派遣に際して、説明会の実施やマニュアルの配布35都道府県中 6団体(17.1%)、208市区町村中 13団体(6.3%)でした。
ちなみに、女性職員の派遣については、何らかの安全配慮(安全な宿泊施設める女性割合が高いという傾向が明らかになりました。
■まとめ
熊本地震では、これまでの大規模災害に比べると、かなり早い段階から育児のニーズ、女性と子どもの安全確保などの情報が共有され、実際の取り組みもある程度進んだように思われます。
特に、熊本県や熊本市の男女共同参画担当部署、男女共同参画センターの努ニーズに対応されたところが複数ありました。
また、女性の必要性が言われる中で、職員の負担が大きくなっている様子もた。自治体職員・消防職員・医療関係者などの保育支援など、支援者の支援の議論も、そろそろ本格的に始めていく必要もあるでしょう。
事前の対策を見ると、「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」多いようです。また、女性防災リーダー育成も徐々に進んできているようですが、まだ一部の取り組みに留まっています。
東日本大震災から7年目ですが、教訓は活かされつつある一方で、まだまだこれから取り組みを進めていく必要があるようです。
(文責:浅野幸子)