釜石市「避難所運営担当職員用マニュアル改定のための提言ワークショップ」

釜石市で、地域の防災体制に男女共同参画の視点を導入するきっかけとして、誰もが安心して過ごせる避難所について考えるワークショップが行われました。現在使われている避難所運営担当職員用マニュアルを検討し、住民が活用する避難所運営マニュアルを策定するための提言を行うことを目的に、3月5日に行われました。釜石市とカリタス釜石の共催により、防災士や民生児童委員、復興住宅自治会、女性消防団、一般の住民男女のみなさんが参加しました。

ワークショップでは、まず、東日本大震災当時の避難生活の状況を振り返り、避難所運営に必要な男女共同参画・多様性の視点からの組織体制、作業、スペース活用などについて話し合いました。プライバシーの欠如や、避難所での子育ての困難、女性が要望を声に出せない辛さなどの課題に対して、市民の立場から、可能な対策の提案がなされました。当センターは、ワークショップの企画全般と、提言とりまとめのお手伝いをさせていただき、当日のワークショップのファシリテーションは、釜石市の職員の皆さんやカリタス釜石の皆さんが実施されました。

ワークショップに参加した人々が、「男女(みんな)の視点で地域防災を考える会」として、「釜石市避難所運営担当職員避難所運営マニュアル改定に関する提言」をとりまとめ、3月10日に危機管理担当部署の責任者や市長に対して提言を伝えました。
 釜石市に限らず、多くの中小規模の被災自治体では、女性センターもなく、男女共同参画担当部署はそれ以外の業務との兼務であり、人員配置も非常に少ないです。このような状況の中、この提言ワークショップを実施された、釜石市総務企画部総合政策課統計係兼男女共同参画室とカリタス釜石のみなさん、そして「男女(みんな)の視点で地域防災を考える会」のみなさんには、こころから敬意を表したいと思います。

5回目の3月11日を経て…

東日本大震災から丸5年。被災者のみなさまには、それぞれに言葉に尽くせない大変な日々を過ごされてきたことでしょう。いまだ約20万人の方々が避難生活を余儀なくされていますが、とりわけ、住む場所や、経済的な立て直しの面で目途がつかない方々の心細さを思うと、もどかしくてなりません。

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津波被災地の復興はまだ道半ば

今月は、復興に関するさまざまな報道・情報がメディアやネットをにぎわせました。報道や統計に表れることがなくとも、ご家族や親しい方を亡くされた方、避難生活で心身にダメージを受けるような経験をされた方など、心に大きな痛みを抱えながらも、一歩一歩前に進もうと日々を懸命に生きておられる方がたくさんおられます。原発事故や経済問題などで故郷を遠く離れ、孤立した状態で生活再建の問題に直面している被災者の方々、特に母子での避難者が今後どのように扱われていくのかについては、注意深く見つめていく必要があるでしょう。

災害は、日常の社会の抱える矛盾や課題を拡大させる形で被害を拡大させます。災害の被害を減らし、復興を早めるためには、災害後の対応に関する個別のノウハウだけでなく、平常時の組織や制度、経済、文化のあり方自体を変えていく必要があります。性別や年齢、障害の有無などに関係なく、個人が尊重され生き生きと活躍できるような社会、排除や差別のない社会へと変えていくことが重要です。

それは、東日本大震災の被災者の方々が直面されている問題であると同時に、格差が広がり、大規模災害の頻発が予想される時代に生きる、私たちみんなが突き付けられている問題でもあります。

減災と男女共同参画 研修推進センターは小さな団体で、研修を主な活動としていることから、被災者のみなさまへの直接支援には取り組めてはおりませんが、微力ながらこれからも、女性(男性)や障害者・子ども・外国人の方などの多様な視点に立った防災・社会のあり方を問うてまいります。そして間接的なご支援や、被災者や被災地の現状についての情報発信、調査・研究に努めてまいりたいと存じます。

被災者のみなさまのこれまでの5年のあゆみが、次の5年で報われるものとなりますよう、心から祈りつつ、今後も、被災地内外の自治体、地域組織、市民団体、企業、個人のみなさまと連携させていただきながら、真摯に活動に取り組んでまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

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3月11−12日、東京の日比谷公園で行われた震災関連イベントで
NPO法人ウィメンズアイさんの出店の様子

 

 

●復興庁ウェブサイト「復興の現状と取組」より
http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-1/20131029113414.html

朝霞市(埼玉県)が地域防災計画見直しにあたって「女性視点の防災対策検討部会」を設置。報告書がまとまりました

埼玉県の朝霞市では、平成26年度から平成27年度までの地域防災計画の改訂にあたって、「女性視点の防災対策検討部会」と、「避難行動要支援者対策検討部会」の2つの部会を設置。市内の地域リーダー、福祉関係者、女性団体、PTA、消防団など、市内で活躍する多様な立場の男女と、複数の関係部局が委員として参加する形で、数か月かけて熱心に議論が交わされました。当センター共同代表の浅野が両方の座長を務めさせていただきましたこともあり、報告書がまとまりましたのでご紹介させていただきます。

 http://www.city.asaka.lg.jp/soshiki/6/teigensyo.html 
(朝霞市のウェブサイト)

国の『防災基本計画』における記述に加えて、内閣府男女共同参画局による『男女共同参画の視点からの防災・復興の取組み指針』が策定されたことから、各自治体の地域防災計画への男女共同参画の視点の反映作業が少なからず進められています。しかし、その反映作業を、住民・市民との協働作業で行っている自治体はまだまだ少数派です。また、計画に反映させた後の、行政職員および住民・市民への知識の普及と、行政および地域組織における具体的な体制づくりが決定的に重要となりますが、その段階まで腰を据えてしっかりと取り組もうという自治体はさらに少ないのが現実です。

ちなみに朝霞市ではこの2つの報告書を市長へ提出した直後に、策定に携わった住民・市民委員およびその他の重要な地域防災上のアクター(建設事業者なども含む)の方に参加していただく形で「地域防災意見交換会」を開催! 報告書の概要を共有した上で、「避難行動」および「避難所運営」の場面を想定し、実際の災害時および事前の備えとして何ができるのか、ワークショップを実施しました。

そのほかにも、地域防災計画に男女共同参画の視点を書き込んだだけに終わらせず、災害の場面でも実践的に取り組まれるよう、地域防災リーダーや職員向けの研修、避難所開設運営訓練への取り入れなど、頑張っている自治体が複数出てきていますので、そうした好事例を相互に広げていくことができればと思います。
 みなさまの地域でも面白い取り組みがありましたら、ぜひ情報をお寄せ下さい!

(文責:浅野幸子)

福島と宮城で女性支援を継続している方々にお話をうかがいました(福島県助産師会・ウィメンズアイ)

11月の釜石に引き続き、12月16・17日と、福島と宮城で支援活動を継続している、福島県助産師会会長の石田登喜子さん、ウィメンズアイ代表の石本めぐみさんにお話を伺ってきました。今回はそのうち、福島県助産師会による、震災後の妊産婦支援事業についてご紹介します。

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一般社団法人福島県助産師会では東日本大震災後の大変厳しい環境の中、妊婦・母子の訪問、助産所での母乳育児支援、子育てサロンの開催、助産所での産後入所ケアと産後デイケア、電話相談などの支援を継続して行ってきました。事業実績は表の通りですが、お話をうかがうと、こうした数値では表現しきれないだけのたいへん大きな役割を果たされてきたことが理解できます。

政策的には一応、「妊婦の検診、出産後の保健師の訪問、乳幼児の健診」がありますが、回数は限られており、しかもそこで問われるのは赤ちゃんの健康状態だけです。つまり、赤ちゃんがとりあえず健康状態をクリアしている限り、お母さんがどんなに追い詰められていても問題とはなりません。そうした状況での福島県助産師会の支援活動ですが、特に、1日3,000円で受けられる「産後の入所ケア事業」をめぐるお話が印象的でした。

お母さんたちは出産後、病院にいる間だけは周囲の支援があってなんとかなりますが、家に戻った途端に大変な状況に追い込まれます。泣く赤ちゃん、寝不足になりながらの授乳、おむつ替えなど、一つ一つが初めてで慣れないだけでなく、「本当に赤ちゃんは育っているのか?」「自分の育児方法は間違っていないのか?」などと、日々不安の連続です。

その上、核家族が増えたこと、妊産婦の親世代たちも生活のため毎日働いているケースも多いことなどから、今は、一人でたいへんな育児に向き合っていかなくてはならないお母さんが増えていると石田さんは言います。そうしたお母さんたちが、助産所でゆっくりと支援を受けながら、育児に関するアドバイスももらえるのが産後の入所ケアです。どれだけ新米ママさんたちの助けになることでしょう。

なお、こうした取り組みの成果により、県内の病院に務める助産師や市町村で母子保健を担当する保健師との連携もできているそうです。

恥ずかしいことに私はこの日、福島特有の困難というお話がメインになることを予想していただけに、そもそも日本社会における妊娠・出産をめぐる環境がとても悪化している状態なのであり、それが福島では震災後の厳しい環境で一気に顕在化したのだと捉えているとの石田さんの言葉に、少なからず衝撃を受けました。

もちろんわたしたちの社会は、原発事故に関連して妊産婦が抱えるさまざまな悩みや不安にきちんと正面から向き合っていく必要がありますし、現実に福島の女性たちは、他の地域の妊産婦さんよりもさらに多くの不安を抱えながら妊娠・出産・育児に向き合っていることでしょう。しかし同時に、家族形態の変化に加えて、非正規雇用の増加、改善されない長時間労働、格差・貧困問題、老後不安といった問題が、さらに育児・出産を巡る環境を悪化させていることにも、目を向ける必要があると改めて思いました。

日本で女性たちが安心して産み育てることができる環境を実現させていく必要性を考えた時、福島県助産師会による包括的な妊産婦支援事業は、日本の未来を切り開く先進事例と言えるのでしょう。ちなみに福島県助産師会では、当初は民間による助成金を基にしてこれらの支援事業に取り組んできましたが、現在は福島県の補助金によって事業を展開できる状況になっているとのことです。今後とも、こうした行政と専門職能団体が協働するかたちでの支援事業がしっかりと継続され、全国に広まって欲しいと思いました。

(文責:浅野幸子)

 

 

表 福島県助産師会母子支援事業の実施件数 推移
(出典:「福島に続け――低料金でも手が届く助産師のケア」『助産雑誌』vol.69 no12 December)

事業内容

2011年3月~

2012年度

2013年度

2014年度

妊婦・母子訪問

1041

1001

1053

1328

助産所での母乳育児支援
(乳房ケア件数)

151

339

456

622

子育てサロン
(実施場所,利用組数,のべ回数)

県内6カ所,
559組,52回

県内16カ所,
1844組,151回

県内19カ所,
2473組,202回

県内23カ所,
2821組,233回

助産所での産後入所ケア
(実施場所,利用組数,のべ日数)

県内4カ所,
29組,のべ419日間

県内3カ所,
38組,のべ305日間

県内3カ所,
67組,のべ472日間

県内3カ所,
70組,のべ511日間

助産所での産後デイケア
(実施場所,利用組数,のべ日数)

県内5カ所,
53組,のべ66日間

電話相談

1044

877

1269

母乳の放射性物質濃度検査受付
(受付件数)※

559

59

19

福島県助産師会『東日本大震災支援活動報告集~あれから3年』(2014年3月)より作成
 
※母乳の放射性物資濃度測定検査の結果はすべて「未検出」

 

 

「女性にとって今こそ知っておくべき防災術!」 立川災害ボランティアネットの防災講演会(東京)

この秋、講師として伺った講座・研修で、子育て世代の女性たちが多く参加して下さった催しがありましたので、今回と次回にわたってご紹介します。

10月9日(金)の午前、東京都西部にある立川市女性総合センター アイムを会場に、防災講演会「女性にとって今こそ知っておくべき防災術!~あなた自身と家族、本当に守れますか?子ども・高齢者・女性が直面する災害時の困難とその対策~」が開催され、当センターの浅野が講師を務めさせていただきました。

主催は立川市男女平等参画課、協力の立川市社会福祉協議会ですが、企画・運営の立川市災害ボランティアネットを中心に、市男女平等課および市社協の職員さんたちも、開催準備や当日運営への協力はもちろん、講演会自体も受講してくれました。

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講演の様子

受講者は約50人。主催・協力・運営側はこれまでも連携しながら、市の町会連合会にもお声掛けして防災講演会を開催するなど、男女共同参画の視点による防災の重要性についての普及啓発に継続的に取り組んできているため、保育付きで10人前後の子育て世代のママさんたちも参加してくれただけでなく、男性の参加も多く、地域組織で防災を担当している方もいました。

内容については、北関東の豪雨水害の記憶も新しいことと、何より「女性にとって今こそ知っておくべき防災術」というテーマですので、最初30分程度の時間を割いて防災の基本について学習していただけるよう、警報の種類と、室内案安全対策(点検チェック資料と転倒防止器具情報)、住んでいる地域の危険箇所チェック資料、備蓄に関する資料を用意して、まずは自助にしっかり取り組んでいただくようお話をしました。ただし、自助だけでは助からないのが大規模災害なので、自助・共助・公助の考え方と避難所でどんな問題が起きていたのかについて簡単に触れながら、地域での関係づくりの重要性をお話しました。

後半は、性別・立場別の困難の違い(特に女性ならではの、また育児・介護など家族のケアの立場からの大変さ)について説明し、最後に避難所に地域のひとたちと一緒に避難したと想定しながら、食物アレルギーの人、介護が必要な高齢者・障害者、子どもの困難と配慮・支援をテーマにグループで話しあってもらいましたが、熱い議論となりました。受講者には、乳児を抱いた状態の若いご夫婦もいらっしゃるなど(0歳児は託児できないため一緒に参加いただきました)、さまざまな世代・立場の男女の市民がバランスよく参加して一緒に学ぶという機会もあまりありませんので、そうした意味でも学習効果は大きかったのではないでしょうか。

なお、立川災害ボランティアネットは、立川市社会福祉協議会のよびかけで2009年から準備会をスタートし、東日本大震災を契機に2011年4月に市民有志によって設立されました。自治会、マンション管理組合、企業、市民団体、小・中・高校などへの出前講座に取り組むとともに、地域で活動する人材育成を目指し、災害ボランティアリーダー養成講座に取り組んでいます。

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立川災害ボランティアネットのみなさんと一緒にパチリ

釜石を訪ねました

11月上旬、釜石を訪ねる機会がありました。被災地の現状についてお話を聞き、復興工事の現場も見て回りました。一昨年に町の中心にイオンタウン釜石がオープンし、建設現場ではひとやもの、お金が集中していますが、水産加工業や飲食業などの地元の中小・零細企業は引き続き人手不足の状況のようです。

また、復興公営住宅の建設が進む中、復興公営住宅での自治組織づくりなど新しいコミュニティづくりをどう支えるのかや、復興公営住宅と近隣の住民との交流の場づくりといった課題や、入居が遅れ仮設住宅に残される人たちの焦燥感など、被災者の方たちが置かれた状況に差が出る中での問題もあるようです。

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   復興工事が進む鵜住居地区

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   カリタス釜石の事務所

市の中心部の協会敷地内に拠点を置き、地域に根差して被災者支援を続ける特定非営利活動法人カリタス釜石では、複数の仮設住宅でサロン活動を継続して来ましたが、今後、復興公営住宅でのコミュニティ形成支援にも力を入れようとしているとのことでした。

カリタス釜石は、サロン活動や見守り活動に加えて、敷地内にオープンスペース「ふぃりあ」を設け、近隣住民へのサービスや憩いの場、さらには孤立防止の為に開放しています。男性の孤立といった課題も受けて、男性向け料理教室の開催なども行ったそうです。

また昨年、個人や団体が自由に出入りし、休憩や打合せ、コワーキングスペースとしても利用することができるみんなのスペース「ぷらざ☆かだって」をオープン。特定非営利活動法人アットマークリアス NPO サポートセンターとの共同運営で、パソコンと Wi-Fi も完備してインターネットを楽しめます。さらに、さまざまなイベント・セミナー等も開催するなど、釜石の地域復興と、暮しをめぐるさまざまな課題に目配りをしながら、細やかな取り組みをつづけています。

なおカリタス釜石さんでは、漁業者の復興を応援するため、三陸わかめの販売をしています。売り上げは地域の復興事業にも使われるそうです。

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   カリタス釜石のみんなのスペース「ぷらざ☆かだって」でスタッフのみなさんと

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   かさ上げ工事の様子

市の中心部から車で30分ほど離れた、海沿いの地域に古くから暮らす女性リーダーにもお話を伺いましたが、高齢化が進む中でもさまざまなアイディアを出しながら、地域の交流や漁業を盛り上げようと奮闘している様子が伝わってきました。数は少ないものの、フルタイムで働いている20代の女性もできる範囲で地域活動を手伝ってくれたり、30代40代で力を発揮している女性漁業者もいるとのお話もあり、こうした女性たちがより一層活躍できる環境づくりがいかに重要かを改めて感じました。

8月6日 南相馬市で研修の講師をさせていただきました

8月6日の午後、南相馬市で防災研修会が開催され、講師として当センター共同代表の浅野が登壇させていただきました。主催は福島県男女共生センターさん、共催が南相馬市さんです。

参加者は市役所および高齢者や障害者施設の職員の方、地域の女性防災リーダーのみなさんなど約30名で、性別・多様な立場に立った困難と備え・対策について、参加者の皆さんのご経験も振り返りながらグループで議論しました。

また、時間の関係で十分に作業はできなかったものの、「もしも一般避難所である小学校の一室を使って介護が必要な高齢者と障害者を支援する福祉避難室を設置するとしたら?」という想定で、教室の空間の使い方を書き出してみるといったワークも実施させていただきました。福祉施設のプロの方も多く、A3の紙にすぐに福祉避難室のイメージを書き出し始めたみなさんの様子を拝見して、お一人おひとりの大きなパワーを感じました。いずれしっかりと時間をとってみなさんにお話をうかがう形で、経験に学ばせていただかないといけないと感じながら帰途に着きました。

帰りがけ、日暮が迫る道を福島駅に向かって走る車の中から、その経路の途中にある飯館村の様子を見ました。2年ほど前に南相馬市にうかがった際は、帰り道がすでに真っ暗になっていたため、初めて村の様子を見ることになったわけですが、雑草に覆われた荒れた農地に胸が痛みました。しかし同時に、一部では除染作業が進む農地もあり、また、隣接する川俣町内には、飯館村の複数の学校が入るプレハブ校舎も目に入りました。

当センターが主催の研修ではないため、研修の詳細や写真は控えますが、記事として少しさびしいので、南相馬市への往復の途中で撮った二枚の写真をご紹介します。

1枚は、前日の5日に泊まった郡山の駅前で行われていた、「うねめ祭り」というお祭りの一環で行われていた、幼稚園児たちによる太古の演奏の様子です。のぼりには「○○幼稚園」「元気太鼓」とあり、ちびっ子たちの勇壮な演奏が響き渡っていました。
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もう一枚は・・・。ガスタンク?の写真なのですが、お分かりになりますでしょうか?車中から撮ったためうまく撮れていませんが、巨大な桃などが描かれている様子に、なんだか自然と笑顔がこぼれてしまいました。

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まだまだ暑い日が続きますが、みなさまお気をつけてお過ごしください!

4月25日 仙台を会場に「女性防災リーダー」フォローアップ研修を実施しました!

4月25日(土)午後、仙台市のエルパーク仙台セミナールームを会場に、「女性防災リーダー」フォローアップ研修を実施しました。これは、イコールネット仙台(代表:宗片恵美子さん)と減災と男女共同参画 研修推進センターが共催で開催したものですが、東北で女性防災リーダーの育成に取り組んでいる関係者の交流集会を兼ねたものです。

参加者は、陸前高田市のNPO法人まぁむたかた(3名)、NPO法人参画プランニング・いわて(スタッフと講座修了生の7名)、登米市市民活動支援課(職員と講座修了生の合計8名)、NPO法人イコールネット仙台(28名)と、イコールネット仙台の事務局、当センターから共同代表2名の約50人でした。

th_活動報告の様子

はじめに主催者あいさつのあと、すぐに「第3回国連防災世界会議」の振り返り、として、当センター共同代表の池田が解説。また同・浅野から、防災に男女共同参画の視点を定着させようと取り組まれている各地の事例を紹介しました。

次に、参加者からそれぞれ15分程度で、地元での取り組み状況について発表がありました。はじめにNPO法人まぁむたかたからは、子育てする母親の目線での地元での防災学習の取り組みなどについて、次に、参画プランニング・いわてからは県内の女性を対象とした「女性防災リーダー養成講座」などの様子や自治会関係者を含む受講生とともに作成した避難所運営ガイドラインの紹介がありました。登米市からは、連続講座で学んだ中身について詳しく報告がありました。

報告の最後はイコールネット仙台です。イコールネット仙台は一昨年度・昨年度と「女性のための防災リーダー養成講座」を開催し、仙台市内の各地区で活躍できる女性リーダーを育ててきたため、その修了生たちから地元で実践している取組みについての報告がありました。

th_仙台市、登米市、陸前高田市、岩手各地の女性たちがテーブルごとに交流

後半は、参加者同士の交流です。最初から7つのテーブルに各地からの参加者が混ざるように座ってもらっていたので、最初はそのメンバーで意見交換。さらに、ワールドカフェ形式で席を交代して、違うメンバー同士で意見交換を行いました。

特に最後の交流は大いに盛り上がり、話は尽きない様子で、名残惜しい別れとなりましたが、アンケートからは「大変良かった」「他の地域の女性たちの話が聞けてよかった」「地域によってそれぞれだが、ヒントになる経験・取組み例が聞けた」「ぜひとりいれてみたい情報もあり勉強になった」「何とかしたいと思っている女性たちがこんなにいることがわかってよかった」といった意見を多数いただきました。また、国連防災世界会議の振り返りについても、「当日は参加できなかったので聞けてよかった」「第1回の横浜での会議からの流れも聞けて勉強になった」といった意見をいただきました。

まちの復興はまだまだ途上ではありますが、東北の女性たちは東日本大震災の経験を無駄しまいと、地道に取り組みを進めようとしています。みなさんの頑張りに学びなら、今後も防災における男女共同参画の視点を着実定着させていくための努力を続けていかなければならないと、心新たにした半日でした。

ご参加くださった各地のみなさま、そして事務局として全体の企画・コーディネート・運営を担ってくださったイコールネット仙台のみなさまに、改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

※なおこの研修会の中で、当センターが作成したばかりの『男女共同参画・多様性配慮の視点で学ぶ防災ワークブック』も全員の方に提供させていただき、中身を紹介させていただきました。活用いただければ幸いです。

4月11日 岩手県・金ヶ崎町でリーダー向けの講演を行いました

4月11日(土)、岩手県南部の内陸に位置する金ヶ崎町で、リーダー向けの講演を浅野が実施せていただきました。主催は「金ヶ崎町女性百人会」です。町政に女性の声を届ける仕組みが必要と、数年の準備期間を経て昨年立ち上がった会で、金ヶ崎町の様々な活動をしてきた女性たちが中心となっています。男性メンバーも一部入っていて、みなさん仲良く、パワフルに、町の活性化のために活動しています。金ヶ崎町は、生涯学習のまちづくりを重視しているそうで、そうした蓄積が市民の人材の厚みにつながっているように感じました。

金ヶ崎町は新幹線の水沢江刺駅と北上駅の中間ぐらいの場所に位置し、沿岸へも2時間程度で行くことができるため、東日本大震災時は物資等の各種の支援を行ったほか、民宿の経営者として被災者の受け入れを長期にわたって行った方もいて、現在も沿岸地域と交流を続けている人も多いようです。

写真4_金ヶ崎町女性百人会による講演会

この日は総会のあとの講演会で、取材の方も含めて30人弱の方が参加してくれましたが、とても熱心に耳を傾けていただきました。普段は、別の団体やグループ、地域でリーダーをしている方ばかりですので、今後の活動に生かしていただけることと思います。

翌日は、会のメンバーの方が車で陸前高田まで案内してくださいました。途中、林業が盛んで、震災後に木造の仮設住宅を作って被災者を受け入れた住田町を通り、2時間ほどかけて沿岸へ向かいました。市街地があった場所は、今まさにかさ上げ工事の真っただ中で、巨大なコンベアーが上空を四方へ横切ります。

写真5_陸前高田のいま

沿岸地域が本格的に復興を踏み出し始めるまでにはまだ時間がかかるかもしれませんが、これからも何らかの形で東北で頑張るみなさまのお手伝いを継続できればと、心新たにしました。

3月14-18日 国連防災世界会議 パブリックフォーラム 女性と防災テーマ館 主催シンポジウムを共催しました 第3回 「災害に強い社会づくり ~男女共同参画の視点を根づかせる~ 」

3月14-18日に仙台市で行われた国連防災世界会議の期間中、一般の人が参加できるパブリックフォーラムが市内各地で多数開催されました。「市民協働と防災」と「女性と防災」の2つのテーマ館も設置され、関係者が議論を深めました。

「女性と防災」テーマ館の全体の運営を担った仙台市男女共同参画推進センターは、テーマ館主催の連続シンポジウムも実施。その第3回目(16日午後)を、仙台市男女共同参画センターと共催の形で、当・減災と男女共同参画 研修推進センター(GDRR)も担当しました。

テーマは「災害に強い社会づくり~男女共同参画の視点を根づかせる~」で、防災計画やマニュアルの中で文章化するだけでなく、組織体制の変革を含めていかに現場への定着を実現できるのか、各地の取り組みを通じて具体的な道筋を考えました。

写真1_シンポジウムの登壇者

■前半は各地の実践事例から

はじめにGDRR共同代表の池田が、これまでの大災害を受け、防災と男女共同参画についての政策はどう変化してきたのか、どんな取組が求められているのか紹介しました(スライド1「防災・復興政策における男女共同参画・多様性配慮の視点~近年の政策変化と取組のポイント」参照)。

それを踏まえ、同・浅野が、被災地の男女共同参画センターや被災地外の自治体、社会福祉協議会などの取組事例についてさまざまな角度から紹介しました。地域防災組織で女性が活躍できるための自治体の取り組み姿勢体制や多様な主体との連携により、男女共同参画の視点がしっかり入った被災者支援の輪を広げる必要性にも触れました(スライド2「各地における取組の紹介」参照。当日配布のものを一部修正)。

次に、2008年に「災害時における女性のニーズ調査」を実施して提言をまとめ、大震災直後も男女共同参画センターとも連携しながら助け合い活動に取り組んだ、特定非営利活動法人イコールネット仙台 代表理事の宗片 恵美子さんから事例報告がありました。2013年度から実施している「女性防災リーダー養成講座」では、仙台市の防災政策、障害や性別への配慮、避難所運営など幅広く実践的に学ぶ内容で、地域防災の担い手となる女性リーダーを養成しています。また修了生による地元地域での実践や、「せんだい女性防災リーダーネットワーク(せんだい女性防災ネット)」の設立、さらには岩手県陸前高田市や宮城県登米市の養成講座への協力など、活動が広がっているそうです。

市内で子育て支援活動に取り組んできた特定非営利活動法人せんだいファミリーサポート・ネットワーク理事の三浦美恵子さんは、仙台市男女共同参画推進センターが主催した「女性防災人材育成講座」を受講後、市民とセンタースタッフとで防災学習プログラムを開発する「せんだい防災プロジェクトチーム」に参加。開発した教材を使って「みんなのための避難所づくりワークショップ」を各地で実施しました。地域や仮設住宅での丁寧な聞き取りやワークショップの試行を経て、子育て世代をはじめさまざまな市民を対象に、性別や多様な立場の人への配慮の視点をもった防災活動の重要性についての学習機会を作っている様子を写真とともに紹介いただきました。

写真2_女性と災害テーマ館でのGDRRの展示

埼玉県男女共同参画推進センター 事業コーディネーターの瀬山紀子さんからは、大規模避難所となったさいたまスーパーアリーナで実施した県外避難女性(と子ども)たちの支援、埼玉県の地域防災計画改定への参画、県内市町村の男女共同参画担当および防災担当職員への研修の実施といった政策上の働きかけや人材育成、市民や地域組織を対象とした各種の研修などを地道に積み重ねてきた様子を報告いただきました。統一の学習教材やパンフレットの作成など、普及ツールを整備して取り組んでいることも注目されます。

■後半は地域リーダーや災害ボランティアの立場からの報告・コメント

後半では最初に、GDRRの池田から、自主防災活動発祥の地でもある静岡県内を事例をもとに、地域防災活動における男女共同参画の推進上の課題について提起しました。それは、地域防災組織に女性のリーダー層がなかなか増えていかないこと、災害ボランティアセクターと男女共同参画セクターの連携がなかなか深まらないこと、その結果、防災の研修を受けた女性たちが地域防災組織やボランティアセンターと繋がれないことなどです(スライド3「防災・復興における男女共同参画視点の定着化に向けて ~多様な視点から」参照)。

その上で、地域組織の立場にある、仙台市の片平地区連合町内会 会長(花壇大手町町内会 会長)の今野 均さんより報告いただきました。ご自身の地域の話と男女共同参画がどう関係するか良くわからないと最初にコメントされましたが、地域では多様な団体・世代が参加できる仕組みを作りながらコミュニティの活性化に取り組んでおり、東北大学の留学生も参加した防災訓練も実施するなど、まさに多様な視点を生かした地域実践、防災実践が進められていることがわかりました。

さらに災害支援ボランティアの立場にある、東京災害ボランティアネットワーク 事務局長の福田 信章さんからは、女性の視点、子育てや高齢者のケアの視点から実際に取り組んだ支援の様子とともに、困難を抱えた被災者のニーズを把握することの難しさと(困難を抱えた人ほど声をあげられない)、被災者の声を聞く工夫、そして、被災した地域とボランティア、多様な専門性や特技をもった人や団体など、幅広い連携があってこそ、多様な人の立場に寄り添った支援が可能となるとの報告がありました。

■全体を振り返って
 
最後に、前半の報告者を含めて全員が登壇し、会場の質問も受けながら今後の定着に向けて一人ずつコメントをいただきました。現場への定着についてはさまざまな方法により努力が行われていることがわかりましたが、被災者支援の際に要となる地域社会と、行政やボランティアを含めた支援者側の両方において、平常時から、男女共同参画や障害のある人や外国人もふくめた多様な人々の参画と連携を進めておくことが重要であることが、再認識されました。また、行政や男女共同参画センターの役割の大きさも、改めて確認できたのではないでしょうか。そのためには、継続した学習や実践、そして人材育成研修を多主体の連携につなげる工夫が求められています。

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