4月11日 岩手県・金ヶ崎町でリーダー向けの講演を行いました

4月11日(土)、岩手県南部の内陸に位置する金ヶ崎町で、リーダー向けの講演を浅野が実施せていただきました。主催は「金ヶ崎町女性百人会」です。町政に女性の声を届ける仕組みが必要と、数年の準備期間を経て昨年立ち上がった会で、金ヶ崎町の様々な活動をしてきた女性たちが中心となっています。男性メンバーも一部入っていて、みなさん仲良く、パワフルに、町の活性化のために活動しています。金ヶ崎町は、生涯学習のまちづくりを重視しているそうで、そうした蓄積が市民の人材の厚みにつながっているように感じました。

金ヶ崎町は新幹線の水沢江刺駅と北上駅の中間ぐらいの場所に位置し、沿岸へも2時間程度で行くことができるため、東日本大震災時は物資等の各種の支援を行ったほか、民宿の経営者として被災者の受け入れを長期にわたって行った方もいて、現在も沿岸地域と交流を続けている人も多いようです。

写真4_金ヶ崎町女性百人会による講演会

この日は総会のあとの講演会で、取材の方も含めて30人弱の方が参加してくれましたが、とても熱心に耳を傾けていただきました。普段は、別の団体やグループ、地域でリーダーをしている方ばかりですので、今後の活動に生かしていただけることと思います。

翌日は、会のメンバーの方が車で陸前高田まで案内してくださいました。途中、林業が盛んで、震災後に木造の仮設住宅を作って被災者を受け入れた住田町を通り、2時間ほどかけて沿岸へ向かいました。市街地があった場所は、今まさにかさ上げ工事の真っただ中で、巨大なコンベアーが上空を四方へ横切ります。

写真5_陸前高田のいま

沿岸地域が本格的に復興を踏み出し始めるまでにはまだ時間がかかるかもしれませんが、これからも何らかの形で東北で頑張るみなさまのお手伝いを継続できればと、心新たにしました。

3月14-18日 国連防災世界会議 パブリックフォーラム 女性と防災テーマ館 主催シンポジウムを共催しました 第3回 「災害に強い社会づくり ~男女共同参画の視点を根づかせる~ 」

3月14-18日に仙台市で行われた国連防災世界会議の期間中、一般の人が参加できるパブリックフォーラムが市内各地で多数開催されました。「市民協働と防災」と「女性と防災」の2つのテーマ館も設置され、関係者が議論を深めました。

「女性と防災」テーマ館の全体の運営を担った仙台市男女共同参画推進センターは、テーマ館主催の連続シンポジウムも実施。その第3回目(16日午後)を、仙台市男女共同参画センターと共催の形で、当・減災と男女共同参画 研修推進センター(GDRR)も担当しました。

テーマは「災害に強い社会づくり~男女共同参画の視点を根づかせる~」で、防災計画やマニュアルの中で文章化するだけでなく、組織体制の変革を含めていかに現場への定着を実現できるのか、各地の取り組みを通じて具体的な道筋を考えました。

写真1_シンポジウムの登壇者

■前半は各地の実践事例から

はじめにGDRR共同代表の池田が、これまでの大災害を受け、防災と男女共同参画についての政策はどう変化してきたのか、どんな取組が求められているのか紹介しました(スライド1「防災・復興政策における男女共同参画・多様性配慮の視点~近年の政策変化と取組のポイント」参照)。

それを踏まえ、同・浅野が、被災地の男女共同参画センターや被災地外の自治体、社会福祉協議会などの取組事例についてさまざまな角度から紹介しました。地域防災組織で女性が活躍できるための自治体の取り組み姿勢体制や多様な主体との連携により、男女共同参画の視点がしっかり入った被災者支援の輪を広げる必要性にも触れました(スライド2「各地における取組の紹介」参照。当日配布のものを一部修正)。

次に、2008年に「災害時における女性のニーズ調査」を実施して提言をまとめ、大震災直後も男女共同参画センターとも連携しながら助け合い活動に取り組んだ、特定非営利活動法人イコールネット仙台 代表理事の宗片 恵美子さんから事例報告がありました。2013年度から実施している「女性防災リーダー養成講座」では、仙台市の防災政策、障害や性別への配慮、避難所運営など幅広く実践的に学ぶ内容で、地域防災の担い手となる女性リーダーを養成しています。また修了生による地元地域での実践や、「せんだい女性防災リーダーネットワーク(せんだい女性防災ネット)」の設立、さらには岩手県陸前高田市や宮城県登米市の養成講座への協力など、活動が広がっているそうです。

市内で子育て支援活動に取り組んできた特定非営利活動法人せんだいファミリーサポート・ネットワーク理事の三浦美恵子さんは、仙台市男女共同参画推進センターが主催した「女性防災人材育成講座」を受講後、市民とセンタースタッフとで防災学習プログラムを開発する「せんだい防災プロジェクトチーム」に参加。開発した教材を使って「みんなのための避難所づくりワークショップ」を各地で実施しました。地域や仮設住宅での丁寧な聞き取りやワークショップの試行を経て、子育て世代をはじめさまざまな市民を対象に、性別や多様な立場の人への配慮の視点をもった防災活動の重要性についての学習機会を作っている様子を写真とともに紹介いただきました。

写真2_女性と災害テーマ館でのGDRRの展示

埼玉県男女共同参画推進センター 事業コーディネーターの瀬山紀子さんからは、大規模避難所となったさいたまスーパーアリーナで実施した県外避難女性(と子ども)たちの支援、埼玉県の地域防災計画改定への参画、県内市町村の男女共同参画担当および防災担当職員への研修の実施といった政策上の働きかけや人材育成、市民や地域組織を対象とした各種の研修などを地道に積み重ねてきた様子を報告いただきました。統一の学習教材やパンフレットの作成など、普及ツールを整備して取り組んでいることも注目されます。

■後半は地域リーダーや災害ボランティアの立場からの報告・コメント

後半では最初に、GDRRの池田から、自主防災活動発祥の地でもある静岡県内を事例をもとに、地域防災活動における男女共同参画の推進上の課題について提起しました。それは、地域防災組織に女性のリーダー層がなかなか増えていかないこと、災害ボランティアセクターと男女共同参画セクターの連携がなかなか深まらないこと、その結果、防災の研修を受けた女性たちが地域防災組織やボランティアセンターと繋がれないことなどです(スライド3「防災・復興における男女共同参画視点の定着化に向けて ~多様な視点から」参照)。

その上で、地域組織の立場にある、仙台市の片平地区連合町内会 会長(花壇大手町町内会 会長)の今野 均さんより報告いただきました。ご自身の地域の話と男女共同参画がどう関係するか良くわからないと最初にコメントされましたが、地域では多様な団体・世代が参加できる仕組みを作りながらコミュニティの活性化に取り組んでおり、東北大学の留学生も参加した防災訓練も実施するなど、まさに多様な視点を生かした地域実践、防災実践が進められていることがわかりました。

さらに災害支援ボランティアの立場にある、東京災害ボランティアネットワーク 事務局長の福田 信章さんからは、女性の視点、子育てや高齢者のケアの視点から実際に取り組んだ支援の様子とともに、困難を抱えた被災者のニーズを把握することの難しさと(困難を抱えた人ほど声をあげられない)、被災者の声を聞く工夫、そして、被災した地域とボランティア、多様な専門性や特技をもった人や団体など、幅広い連携があってこそ、多様な人の立場に寄り添った支援が可能となるとの報告がありました。

■全体を振り返って
 
最後に、前半の報告者を含めて全員が登壇し、会場の質問も受けながら今後の定着に向けて一人ずつコメントをいただきました。現場への定着についてはさまざまな方法により努力が行われていることがわかりましたが、被災者支援の際に要となる地域社会と、行政やボランティアを含めた支援者側の両方において、平常時から、男女共同参画や障害のある人や外国人もふくめた多様な人々の参画と連携を進めておくことが重要であることが、再認識されました。また、行政や男女共同参画センターの役割の大きさも、改めて確認できたのではないでしょうか。そのためには、継続した学習や実践、そして人材育成研修を多主体の連携につなげる工夫が求められています。

2013年度静岡県女性防災リーダー育成事業「防災パワーアップ講座」の修了者調査(2014年11月実施)とフォローアップ研修

静岡県とNPO法人あざれあ交流会議が実施し、当センターのメンバーが協力した女性防災リーダー育成事業の2013年度修了者のみなさんに、研修の成果を尋ねるアンケートが行われました(2014年11月実施。回答数:29、回答率:27.6%)。

講座の成果を発揮する機会が大いにあった、またはあった修了者は、51.7%ありました。

「自治会の会議に話をするように呼ばれた」、「知識があることで意見を言えるようになった」、「防災に関する講座を開催した」、「市と協働でママの防災力をupする事業を実施することになった」などの回答がありました。

一方で「防災役員が全て男性の為、入り込めない」「自治会で、女性委員の位置づけは炊事班、救護班が役割分担とされ、提言、発言する機会がない」など、地域の活動になかなか入り込めない問題も指摘されました。

昨年度の研修の成果を活かした活動や、活動を進めていく中での悩みを共有するフォローアップ研修が行われました。この講座は、今年度も行われています。昨年の修了生の方々が企画側として参加してくださっています。

自主防災リーダー等を対象とした研修における講師派遣

関東地方の某自治体では今年から、自主防災組織のリーダーや市民を対象とした防災リーダー育成プログラムをリニューアルし、より実践的な内容を目指しています。

このプログラムの特徴は、2日間にわたるプログラムの中で、男女共同参画・多様性配慮の視点に立った講座を約2時間にわたり組み込んでいることです。当センターのメンバーも、講師の一人として関わらせていただきました。

自主防災リーダーは、地域の代表として熱心に防災に取り組んでおられる方が多いのと同時に、地域住民の関心の低さや、災害時の高齢者・障害者等の避難誘導方法など、さまざまな悩みを抱えているのが現状です。そこで、男女共同参画の視点から見た災害時の課題はもちろんのこと、地域で仲間を増やす切り口として、女性、子ども、障害のある人、アレルギーの人などに関するテーマを生かしていただけるような内容とすることに務めました。

このように、一度でおわる講演会のようなものではなく、継続的な防災人材育成プログラムに男女共同参画の視点が組み込まれることで、現場への定着が着実に図られていくことを期待しています。

東京都墨田区「女性の防災対策懇談会」の報告書が完成、区長に報告される

東京都内の特別区である墨田区は、従来から防災対策に熱心な自治体として知られています。その墨田区が昨年、「女性の防災対策懇談会」を設置し、区民委員参加のもと、男女共同参画の視点から取り組むべき防災対策について議論が重ねられました。

その報告書がウェブサイト上で公開されておりますので、ご紹介させていただきます。墨田区では今後、さらに対策を充実させていく予定だということです。

http://www.city.sumida.lg.jp/kakuka/kikikanrita/bousai/info/jyoseinobousai.html
 (墨田区のウェブサイトより)

エナーソンさんと南三陸、郡山を訪問しました

7月22~24日にかけて、E.エナーソンさんと南三陸町と郡山市を訪問し、ジェンダー・多様性の視点から活動されている方々にお目にかかりました。東日本大震災の被災地を訪ねるのが初めてだというエナーソンさんは、1980年代から災害とジェンダーの研究に取り組でこられた、この分野のパイオニアの一人です。

南三陸町観光協会では、手工芸品の生産を行っている人々の研修会を見学させていただきました。震災から3年以上たち、今後も長く購入し続けてもらえる手工芸品を生産していくためには、商品の品質向上や販売戦略に工夫を凝らすことが必要となってくるそうです。みなさん、楽しみながらも真剣でした。

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手工芸品生産者のみなさんの作品を販売する仮設商店

 

また、復興に奮闘する地域の女性たちからお話をお伺いしました。海産物をつかったイベントで漁港と地域の復興を進めているA漁協婦人部の会長・Oさん、悩んだ末乾物工場を再建したTさん、仮設住宅の復興支援員Mさん。登米えがおネットの皆さんにも、避難所での活動を振り返ってお話を伺いました。みなさん、ありがとうございました。
 
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郡山では、避難所となっていたビックパレットを見学したあと、富岡仮設のおだがいさまセンターにお邪魔して、発災直後の避難時の子どもや高齢者への支援について、現在仮設住宅にお住いの皆さんの様子などをお伺いしました。

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おだがいさまセンターにて

また、福島第一原発の事故以来、郡山周辺に居留することを選択した女性たちの手記をとりまとめられた「市民メディア・イコール」の副理事長、遠藤恵さんにもお話を伺いました。

南三陸の訪問は、2011年以来の当センターの仲間である、ウィメンズアイさんに、郡山では復興庁の丹羽麻子さん、郡山市議の駒崎ゆき子さんにお世話になりました。ありがとうございました。

東北訪問〜東北の女性たちの声

GDRRの池田と浅野は、4月2~3日にかけて宮城県の南三陸町と気仙沼市を訪ね、被災地の女性たちの声を聴かせていただきました。新たな団体の活動のスタートにあたり、改めて現場の様子や生のお声にきちんと触れさせていだくことが不可欠と考えたためです。

2日の午後と3日の午前は、登米市を拠点に女性の視点で被災者支援を行っているNPO法人ウィメンズアイとNPO法人とめタウンネットのスタッフのご協力・ご案内をいただきながら、登米市と南三陸町でそれぞれお話を聞きました。
 

●とめ女性支援センター/登米市内の仮設住宅

初日の午後は、とめ女性支援センターで運営されているカフェにうかがってお茶をいただきながら運営の様子を伺ったのち、登米市内の仮設住宅を訪ね、南三陸町上山八幡宮禰宜の工藤真弓さんにもお話を伺いました。

宮司の家に生まれ育った工藤さんは、仮設住宅でのサロン活動を行いながら、南三陸町志津川地区まちづくり協議会公園部会副部長として、実際の復興計画づくりにも参加するなどしてこられた、パワフルな方です。

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とめ女性支援センターで運営されているカフェ。お茶もケーキも、とってもおいしかったです。

 

●南三陸町被災者生活支援センター・南三陸町婦人防火クラブ・南三陸町愛の手をつなぐ親の会・戸倉地区波伝谷自治会 他

翌日は南三陸町へ移動し、まず、南三陸町被災者生活支援センターで生活支援員をなさっている女性と懇談した後、南三陸町婦人防火クラブおよび南三陸町愛の手をつなぐ親の会会長(障がいを持つ子の親の会)を務める、千葉みよ子さんからもお話を伺いました。千葉さんは、お連れ合いと障害をもつ次女と仮設住宅で暮らしておられます。津波でご長男とご長女を亡くされ、次女も津波で心身ともに傷を負うという状況の中で、懸命に家族と地域のために頑張ってこられた方です。

お昼は戸倉地区の波伝谷へ向かい、津波で流されたレストラン“慶明丸”を再建して頑張っておられる三浦さきこさんを訪ねました。地区の高台に建設された仮設住宅で自治会長を務めながらの営業です。新鮮な魚介と、青々としたワカメやカキがたっぷりのお鍋のついたランチをいただきました。

その後は、気仙沼市本吉地区へ向かい、シャンティ国際ボランティア会気仙沼事務所の紹介で、この地区出身の若手の女性たちからお話をうかがいました。

 

●女性たちの取り組みが復興の力に

ウェブサイトでは詳細な内容をお伝えすることはできませんが、感想を書きます。
震災から3年目の現状を伝える報道でも共有されたように、被災地の復興はまだまだ途上にあります。そうした中、被災した女性たちはさまざまな困難に向き合いながらも、それぞれの場所で、くらしのために、そして地域のために、懸命にできることに取り組んでいることが伝わってきました。

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とめ女性支援センターが運営するカフェの中にある、女性たちが制作した作品の展示販売ブース

 

地域が復興するにはまだまだ時間がかかることが予想されますが、女性たちの取組みの一つひとつは、着実に被災地の復興の力になっていると感じます。

ただ、やはり仕事の面での不安を持つ方もおられ、依然として雇用の厳しさが浮かび上がってきました。生活支援員の仕事もいつまで維持されるかわかりません。支援員としてコミュニティ・ケアの経験を積んだ地元の若い人材が、その経験を生かして就ける職業を見つけることも難しい現状に、歯がゆさを感じました。

浅野が6月にふたたび気仙沼を訪れた際にお話をうかがう機会があった母子家庭のお母さんは、お子さんがPTSDを発症したこともあって勤め先を辞めざるを得ず、現在は新たな経済的な安定の道を模索していました。水産加工の現場では人手不足との報道もあるため、そうした仕事には興味がないのか伺ってみると、津波の記憶が生々しく、浜に近いところで働くのは怖いとのことでした。

いずれにしても、女性の場合は低賃金のパート労働に就く以外に選択肢がほとんどない状態です。特に母子家庭の場合、お子さんが小さいうちはまだしも、中学、高等と年齢が上がるにつれ、教育費をどうするかが大きな問題になってきますので、大きな都市に出ることも考えているという方とも出会いました。

復興庁男女共同参画課の復興の取組み事例集では、就労支援や起業の事例も紹介されています。厳しい状況でありますが、スキルアップの機会や、支え合い仲間づくりにもつながるような交流の場を設けるなど、被災した女性たちが少しずつでも回復し力を得ていくことができるよう、環境を整えていくことが不可欠であると、改めて感じました。

 
▼男女共同参画の視点からの復興~参考事例集~(第6版)[平成26年5月23日公表]
http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-16/20130626164021.html

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