釜石市「避難所運営担当職員用マニュアル改定のための提言ワークショップ」続報

3月のメールマガジンでご紹介した、釜石市の「避難所運営担当職員用マニュアル改定のための提言ワークショップ」の続報です。

釜石市とカリタス釜石の共催により、防災士や民生児童委員、復興住宅自治会、女性消防団、一般の住民男女からなる「男女(みんな)で地域防災について考える会」のみなさんが、避難所運営のマニュアル改定のための提言をとりまとめられ、当センターがそのお手伝いをさせていただいたものです。これに対する、市長さんと担当部局からの回答をご紹介したいと思います。

回答の基本的考え方は「住民男女が男女共同参画の視点からマニュアルを見直した貴重な提言で、『男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針』(内閣府男女共同参画局、平成25年5月)にも示されている内容であることから、多様性配慮の視点に立って、提言内容の実現に努力する」とのことです。住民による提言であることが尊重され、そして後ろ盾となる政府の方針の存在が大きな意味を持ったのではないでしょうか。

具体的には、
①東日本大震災で実際に避難所運営に従事した女性職員を中心に今後の災害対応のあり方に関する検討会議を開催し、具体的な意見をマニュアル改定に反映する、
②地域が主体となった避難所運営等地域防災力の向上のために、町内会や防災士等を中心に幅広く協議や訓練等の取組みを実施する、
③住民一人ひとりの防災意識と行動力の向上に努めると共に各関係機関、企業等との連携を深め、全市が一体となった災害対応体制が構築できるように取り組むことです(復興釜石新聞4月30日)。

避難所運営や備蓄物資、女性と子どもの安全対策などに関する個別の提言内容に対しても、細かな回答が作成されました。「男女(みんな)で地域防災について考える会」のみなさんは、提言が受け入れられた部分が多いと、手ごたえを感じておられます。男女共同参画・多様性配慮の視点を組み込んだ防災体制への道のりは長いですが、すばらしい第一歩ですね。

今後は、示された基本的考え方がしっかり今後の活動に反映されるよう、また個別の提言に関する回答が具体的に実践されるよう、住民の皆さんと自治体行政の皆さんの力あわせを、当センターも応援し続けたいと思います。

(文責:池田恵子)

書籍紹介: 『みやぎ3・11「人間復興」を担う女性たち 戦後史に探る力の源泉』

th_81SCtB-NQnLああっ!こうした専門書を待っていたんですっっ!
―――実は本書をぱらぱらっとめくってすぐに感動で胸がいっぱいになり、読み進みながら「浅野富美枝先生、ほんとうにありがとうございます!!」と東京から、東北の方向へ向かって叫びたくなりました。

帯に書かれた、「女性視点の支援が本格的に展開された3・11、みやぎの女性たちには、被災女性を支援する力と全国から寄せられた女性視点での支援を受け入れる力があった。その力はどのように形成されたのか、いま地域に欠けているものは何か。女性・生活・地域に視点をおき、現場からひもとく研究提言」とのメッセージ。

ここに、本書が何を明らかにし、何を社会に訴えかけようとしているかがかなり明瞭に書かれていますが、東日本大震災の被災地・みやぎにおいて支援活動をリードしてきた女性たち数人にスポットを当て、ライフヒストリーも丁寧に織り込みながら、戦後日本の地域社会(地縁社会を含みつつも、もっと広い空間からなる市民自治の場としての公共領域)において、女性が主体的に活躍できるような力量形成がどのように行われてきたのかについて、女性自身の生きざま・活動への思いと、環境(政策や女性同士のつながりを持った運動など)の、両面から丁寧に描かれています。

本書を読むと、戦後しばらくの間、ごく普通の女性たちが自治的公共空間を意識しながら主体的に学び、おおぜいの女性の仲間を得られる諸活動への参加の道すじとともに、さらに実践・学習を通して力量を重ねながらリーダーシップを発揮していくことが可能な環境が、全国のすみずみにまで用意されていたことが、“みやぎ”という地域の事例を通して理解できます。もちろんそれは、政策だけでなく、戦後間もないころからの地域の女性たちの主体的な取り組みにより獲得してきた環境でもあるのですが。

そうした環境が機能していた時代に力をつけてきた女性たちが、東日本大震災以前から“みやぎ”でさまざまな公益活動を展開していたわけですが、東日本大震災でもその困難な状況における共助活動や外部からの支援の受け入れにあたって、人としての尊厳とくらし再生という問題に丁寧に向き合いながら、いかにリーダーとして重要な役割を果たしてきたのかが本書には詳しく紹介されています。

しかし、そうしたすばらしい女性リーダーたちを育ててきた環境自体が現在、時代の変化の中でおざなりにされ形骸化したり、若い世代がアクセスしにくいものとなっているのも事実でしょう。

東日本大震災で力を発揮した女性たちの姿を通して、戦後の女性の力量形成をめぐる環境の再評価を丁寧に行われた浅野富美枝先生ですが、本書を結ぶにあたっては、戦後復興の過程でどのように「災害脆弱性」が生み出されたのかについても分析された上で、災害に直面しても「人間の復興」を可能とするような、真に災害に強い国・コミュニティを構築するために何が求められているのか考察されています。

景気低迷、少子高齢化、災害リスクの増大などに直面する昨今、地方創生、女性の活躍推進、国土強靭化、地域防災力の向上などと、さまざまなスローガンが日々掲げられていますが、果たして、本質的なことがきちんと議論されているでしょうか?

浅野富美枝先生のご著書が多くの方に読まれることで、各地の地域政策や防災対策が真に住民・市民のくらしの安全・安心につながる形で豊富化されていくことを願ってやみません。

ぜひ、みなさまもお手にとってご一読下さい!

(文責:浅野幸子)

生活思想社 ●Amazon

資料紹介:「市民のための防災・減災 ワークブック」(東京ボランティア・市民活動センター)

bosaigensaiWB各地で被害想定やその対策が見直されていますが、まだ十分とは言い難く、市民による防災・減災の取り組みも、さらに進めていく必要があります。

東京ボランティア・市民活動センターでは、地域で具体的な防災・減災の取り組みを進めることができるよう、ワークブックを作成しました。GDRRも作成に一部協力しました。

どれも取組み易いものになっていますので、ぜひ、ご覧ください。

http://www.tvac.or.jp/manten/list.cgi?i=1&co=1000791

6月8日・10日「災害ボランティアコーディネーター養成講座 運営者コース」報告

「災害ボランティアコーディネーター養成講座 運営者コース」でお話させていただきました

(東京ボランティア・市民活動センター主催)

今や大災害に「災害ボランティアセンター」が立ち上がるということは、広く一般にも認識されていますが、その実際の活動と本来的に期待されていることは多様で幅があります。また、実際に大災害が起こると、目の前の業務に追われて十分に機能が発揮できなくなる傾向も被災地ではみられます。

そこで、東京ボランティア・市民活動センターでは「25の事例・視点から学ぶ 災害ボランティアセンター設置・運営のヒント」を作成しました。当センターの浅野も作成に参加しました。

そして6月8日と10日、主に都内市町村の社会福祉協議会職員を対象に(一部NGOからも参加)、この冊子作成に参加・協力した災害支援のNPO/NGOや社会福祉協議会のメンバーなども各セッションごとに登壇する形の「災害ボランティアコーディネーター養成講座 運営者コース」が実施されました。
 

●災害ボランティアコーディネーター養成講座 運営者コース

主なテーマは下記の通りです。

男女共同参画の視点の防災の取り組みは、幅広い関係者、特に、地域コミュニティや行政の危機管理部門、要配慮者支援に関わる部門、そして、災害ボランティア活動に関わる人たちなどにも知っていただくことが重要です。浅野も作成関係者として登壇させていただきましたが、大変貴重な機会をいただきました。

各セッションでは、登壇者がそれぞれ執筆した事例等と絡めて10分程度発言したのち、参加者が各自持ってきた災害ボランティアセンターの運営マニュアルなども見ながら、テーマに沿って議論する形をとりました。

2)ボランティアの安全衛生について
健康リスクや公衆衛生的な安全衛生の観点に加えて、浅野からは暴力リスクの問題と対応体制(被災者同士、被災者と支援者、支援者同士)、個人情報などの管理について提起しました。

3)被災者のニーズ把握について
積極的なニーズの掘り起こしが論点でしたが、浅野からは、性別の視点でのニーズ把握の重要性について説明しました。特に女性が家族のケア役割を追わざるを得ない現状の中にあって、特に乳幼児・高齢者・障害者などの支援と女性の支援は裏表の関係ともいえます。

6)災害ボランティア・NPOにおける支援の視点について(寄り添い・エンパワメント)
被災者への寄り添いとエンパワメントが論点となっており、浅野からは、被災女性たちがプライバシーや安全も保たれない状況の中で、家族の世話に追われてパワーレスな状態となってしまう状況いついて説明し、寄り添い支援や女性が安心して話をしたり意見が出せる状況を作っていくことの重要性、そして、脆弱な立場におかれがちな人たちこそ、主体性を取り戻し、リーダーシップも発揮できるように支援していくことの重要性についてお話しました。

7)災害ボランティア・NPOにおける平時の取り組みを考える
国連防災世界会議の「仙台防災枠組」の概要および災害リスク削減の考え方の説明とともに、平時から地域・社会を安全・安心で持続可能なものにしていくことが、災害の被害を防ぐことにつながるという考え方が国際的には主流であることをお伝えし、平常時の地域福祉の推進や貧困問題や暴力問題・男女不平等の改善と、災害時の被災者支援・対応体制については、表裏のものとして考えていきましょうと提案しました。

両日とも、人道支援の最低基準「スフィア・プロジェクト」の抜粋も紹介しながら、ジェンダーの視点が、単に女性の支援にとどまらず、被災者支援のあらゆる側面に関係していることをお伝えし、男女共同参画センターや女性団体との平常時からの連携を提案しました。

(文責:浅野幸子)

 

<講座の内容> 〜は登壇者。登壇者のうち女性は、浅野と神元氏

【6月8日(水)】
1)災害ボランティアセンターの設置目的について考える
  〜ADRA Japan:渡邉氏  文京区社協:平石氏
   ピースボート災害ボランティアセンター(PBVC):上島氏

2)ボランティアの安全衛生について
  〜震災がつなぐ全国ネットワーク(震つな):松山氏  GDRR:浅野

3)被災者のニーズ把握について
  〜震つな:松山氏 GDRR:浅野 大島社会福祉協議会:鈴木氏

4)災害ボランティア・NPOの連携(民間×民間)について
  〜大島社協:鈴木氏 ピースボート災害ボランティアセンター:上島氏

【6月10日(金)】
5)災害ボランティア・NPOと行政との連携(官民連携)について
  〜大島社協:鈴木氏 (PBVC):上島氏
   いたばし総合ボランティアセンター:神元氏

6)災害ボランティア・NPOにおける支援の視点について
  (寄り添い・エンパワメント)
  〜大島社協:鈴木氏 いたばしボラセン:神元氏 GDRR:浅野

7)災害ボランティア・NPOにおける平時の取り組みを考える
  〜大和市社協ボラセン:浅見氏 GDRR:浅野
   東京災害ボランティアネットワーク:福田氏

 
※補足
災害ボランティアセンターについて少し浅野なりに補足します。現在、災害ボランティアセンターは、各市町村や都道府県の社会福祉協議会が、自治体との協定に従って設置・運営を担うというケースが大半です。

しかし、社会福祉協議会(以下、社協と略記)は日頃から地域福祉に関わる業務を担う組織であり(小地域福祉活動の振興、権利擁護、ボランティアセンターの運営のほか、高齢者・障害者等の直接支援事業を行っているケースもある)、災害支援の専門性を積んでいる人が配置されているわけではありません。

ところが災害ボランティアセンターを設置すると、一般ボランティアの受け入れとともに、ドロ出しやがれき撤去(それに伴う資機材の調達・貸出なども含む)、物資整理、避難所運営支援など、さまざまな被災者支援ニーズへの対応に追われて、災害ボランティアセンターが期待される幅広い役割や、設置主体となる社協が持つ資源や専門性を有効に生かすこともできなくなってしまう傾向もみられます。

またそもそも、災害ボランティアセンターは、同じ自治体内に複数あっても問題はないはずですし(事実、被災エリアが広い場合はサテライトが設置されるケースも多い)、必要に応じて、社会福祉協議会以外の民間団体も災害ボランティアセンターを設置するケースもあってよいはずです。大切なのは、関係者が被災者目線に立ってニーズの把握やアセスメントができるかどうか、そしてさまざまな主体と柔軟に連携・情報共有してコーディネートできているかどうかではないしょうか。

シンポジウム“女性の力で変革を”  3.11から5年 忘れない・つながる・動く

6月11日(土)、港区男女共同参画センター リーブラのホールにおいて、男女共同参画と災害復興ネットワーク(JWNDRR)主催の「シンポジウム“女性の力で変革を”3.11から5年 忘れない・つながる・動く」が開催されました。当センターも協賛させいただいたこともあり、当日会場で登壇者のお話をうかがいました。

●第1部 基調講演

はじめにJWNDRR代表の堂本暁子さんより講演があり、この5年間の取り組みの振り返りがありました。また、おなじくJWNDRRの大野さんからは、5月にベトナムで行われたジェンダーと防災に関するアジア太平洋地域会議(地域の防災計画へのジェンダーの反映を推進する目的。UN Wemwn主催)の参加報告があり、3日間の成果としてまとめられた「ジェンダーと災害リスク削減に関する行動のためのハノイ提言」の概要も資料とともに紹介されました。そこでは特に、現状把握や分析に不可欠な、災害に関連したジェンダー統計の重要性も指摘されたそうです。 続きを読む シンポジウム“女性の力で変革を”  3.11から5年 忘れない・つながる・動く

避難所運営の手引き〜男女共同参画の視点を取り入れて〜(四日市市危機管理室 作成)

四日市市では、避難所生活を見越した事前の準備を進めるために、既に避難所運営マニュアルが市内の地区防災組織等で整備されていますが、このたび、男女共同参画の視点を取り入れた避難所運営の行うための手引きが作成されました。
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すでにある避難所運営マニュアルの見直しの際や、防災訓練・学習の際の活用が期待されています。

大規模災害から命と暮らしを守るための
避難所運営の手引き 〜男女共同参画の視点を取り入れて〜

前半6p(PDF・3M) 後半6p(PDF・3.1M)
四日市市 防災情報のページ

ワーキンググループは2015年10月に発足し、3回のワーキングで内容等について協議しました。委員には、四日市市防災・減災女性セミナーなどの講座受講者等から8名、そして、減災と男女共同参画 研修推進センターから浅野が座長として参加させていただきました。

東北の女性センターが中心となって作成したマニュアルや国の指針など、被災地の実情を反映した各種資料も参考にしながら、女性、要配慮者、高齢者、子どもたちなどみんなに気を配り、安全・安心な避難所づくりの一助になればとの思いで作成されました。

内容は、避難生活における問題、女性の視点と参画の必要性、避難所運営のポイント、事例紹介、チェックリストなどです。

四日市市自治会連合会、四日市市地区防災組織連絡協議会も作成に協力しており、現在、地域での具体的な活用方法が検討されています。

ボランティア活動で被災地へ入る方へ

 

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一人ひとりを大切にできるボランティア活動のために(PDF版)

災害時の被災者支援ツール 〜いのちと健康を守るために

地震、土砂災害の被害を受けた方向けの支援には、様々な視点での配慮が必要です。

減災と男女共同参画 研修推進センターが、今までの活動から災害支援活動を進める際の基準やチェックシートを作成しました。

ぜひご活用ください。

 

(1)災害時の要配慮者支援を充実させるための被災に関する聞き取りシート
避難所・在宅避難者(兼用)(PDF)

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(2)支援者の方向けの参考資料(内閣府の指針より)

①「避難所チェックシート(PDF)

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②「応急仮設住宅チェックシート(PDF)
(ともに「内閣府男女共同参画局ウェブサイト 男女共同参画の視点からの防災・復興取組み指針 解説・事例集」より)

「スフィア基準に基づくジェンダー・多様性配慮のチェックリスト」(PDF)
(『男女共同参画の視点で実践する防災対策 テキスト 災害とジェンダー<基礎編>』より)

 

 

こちらも参考にしてください。

災害支援ツールの公開(2014年8月の西日本における土砂災害にあたって)災害時の被災者ニーズに関する聞き取りシート(2種)& 支援者のためのチェックシート ~要配慮者支援の視点・女性へのアプローチを重視して

釜石市「避難所運営担当職員用マニュアル改定のための提言ワークショップ」

釜石市で、地域の防災体制に男女共同参画の視点を導入するきっかけとして、誰もが安心して過ごせる避難所について考えるワークショップが行われました。現在使われている避難所運営担当職員用マニュアルを検討し、住民が活用する避難所運営マニュアルを策定するための提言を行うことを目的に、3月5日に行われました。釜石市とカリタス釜石の共催により、防災士や民生児童委員、復興住宅自治会、女性消防団、一般の住民男女のみなさんが参加しました。

ワークショップでは、まず、東日本大震災当時の避難生活の状況を振り返り、避難所運営に必要な男女共同参画・多様性の視点からの組織体制、作業、スペース活用などについて話し合いました。プライバシーの欠如や、避難所での子育ての困難、女性が要望を声に出せない辛さなどの課題に対して、市民の立場から、可能な対策の提案がなされました。当センターは、ワークショップの企画全般と、提言とりまとめのお手伝いをさせていただき、当日のワークショップのファシリテーションは、釜石市の職員の皆さんやカリタス釜石の皆さんが実施されました。

ワークショップに参加した人々が、「男女(みんな)の視点で地域防災を考える会」として、「釜石市避難所運営担当職員避難所運営マニュアル改定に関する提言」をとりまとめ、3月10日に危機管理担当部署の責任者や市長に対して提言を伝えました。
 釜石市に限らず、多くの中小規模の被災自治体では、女性センターもなく、男女共同参画担当部署はそれ以外の業務との兼務であり、人員配置も非常に少ないです。このような状況の中、この提言ワークショップを実施された、釜石市総務企画部総合政策課統計係兼男女共同参画室とカリタス釜石のみなさん、そして「男女(みんな)の視点で地域防災を考える会」のみなさんには、こころから敬意を表したいと思います。

JICA公開イベント「ジェンダー・多様性と災害リスク削減: アジアの現場から」報告

3月3日にJICA市ヶ谷で、公開イベント「ジェンダー・多様性と災害リスク削減: アジアの現場から」が開催されました。

第3回国連防災世界会議で、日本政府は「仙台防災協力イニシアティブ」を発表し、その具体的な施策の一つとして防災における女性のリーダーシップを推進するための研修の実施を表明しました。この政府のイニシアティブを受けて、JICAは、招へい事業「ジェンダー多様性の視点からの災害リスク削減」を実施し、アジア7カ国(インドネシア、スリランカ、タイ、ネパール、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム)から各国のジェンダーや防災の行政官とNGOの方を招きました。当センターは、この招へい事業の国内支援委員として、プログラム全体への助言と一部の講義を担当しました。

公開イベントは、アジアからの参加者が、東北の復興の現場を訪問して相互に学びあった結果を含め、防災に関する政策・計画等の策定と実施においてジェンダーや多様性の視点を取り込んできた成果や課題を共有するために行われました。

パネル討議では、参加者たちがそれぞれの国で、ジェンダーや多様性の視点に立った災害リスク削減の推進にどのような手法で取り組んできたのか、実施の過程でどのような課題があったのか、それをどう克服できるのかについて、3名の参加者に加え、田端八重子さん(一般社団法人GEN・J)が報告しました。当センターの池田がモデレーターを務めました。その議論の内容を以下に簡単にまとめます。

●大震災後のネパールの現状について
  〜〜〜A.アディカリさん(ネパール・NGOルーラリコンストラクションネパール)

昨年大地震を経験したばかりのネパールの状況について報告したA.アディカリさん(ネパールのNGOルーラリコンストラクションネパール)からは、不利な立場にある人々がしっかりと支援対象に入りつつ、実質的な参加ができるようにするための取組について、普段から地域社会にある教育や保健、労働などの格差の問題への取り組みを基礎とする必要性や、人々が復興や開発の方向性に関して政府に説明を求める権利があると理解できるよう働きかけることが重要だという報告がありました。

●災害に脆弱な人々に対する経済的・人的エンパワーメントの事業と災害リスク削減の事業の連携
  〜〜〜スリランカ・A.セネビラトナさん(防災研究開発局)

スリランカのA.セネビラトナさん(防災研究開発局)からは、災害に脆弱な人々に対する経済的・人的エンパワーメントの事業を、災害リスク削減の事業と結び付けて行う取り組みの紹介がありました。すでにある貧困対策やセーフティーネット関係の事業を活用して災害に弱い人々を集中してエンパワーしていくと言うやり方は、コスト面でも実現可能性の高いものでないかと思われます。様々な公共政策分野で、政策や事業が、新たな災害リスクを生み出したり、今ある災害リスクを悪化させたりしないよう、そしてより積極的に災害リスクを削減できるよう、そしてそれをジェンダー多様性の視点を組み込んで行うためのセクターごとの災害リスク削減ガイドラインが作られる予定だそうです。

●ジェンダー多様性の視点に基づいた災害リスク削減を実施するための連携
  〜〜〜フィリピン・M.サセンドンシィリオさん(地方行政学院)

フィリピンのM.サセンドンシィリオさん(地方行政学院)からは、ジェンダー多様性の視点に基づいた災害リスク削減を実施するための地方行政レベルを結ぶ垂直方向の連携、そして企業や市民団体組織、地域組織、行政という異なるセクターの水平方向の連携をつくっていく長期的計画が紹介されました。

●女性防災リーダーの養成について
  〜〜〜田端八重子さん(一般社団法人GEN・J)

田端さんからは、暮らしの中のジェンダー不平等、日常の社会に役割分担や女らしさ男らしさという固定された概念にもとづく不平等がある中を、地域組織と連携して女性防災リーダーの養成や避難所運営マニュアルを作ってこられたお話しをお聞きしました。

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このパネル討議を通して、ジェンダー主流化や多様性への配慮が何かなぜ必要か分かりやすく説明することや、ジェンダー多様性の視点を持った災害リスク削減の計画作りに欠かせない性別年齢別のデータ整備の必要性、そして広い開発セクター(産業や教育、保健などの政策分野)を通して災害リスク削減を行う具体的な手法を確立するという課題が再確認されました。

仙台防災枠組の実現のためには、多くの視点から考えていかねばなりません。まず、災害リスク削減に取り組みための政策や計画、制度・組織など、根拠となる仕組みづくりが必要です。そして、リスク査定やリスク削減の計画を実行する人が、ジェンダー多様性の視点を組み込んで行うための具体的なスキルを身につけ、ジェンダー別統計を使いこなすようになるよう、執行能力・運用能力を高める必要性もあります。そして、脆弱な人々の参加を求めていくためには、ただ参加の仕組みを作るだけではだめで、有意義な参加ができるような経済的・人的なエンパワーメントも同時に行っていく必要があります。

日本と同様に大きな災害を経験してきたスリランカやネパール、フィリピンなどの国々が、試行錯誤を繰り返しながら、ジェンダー・多様性の視点に基づく災害リスク削減を実現しようとしているということは、私たちにとっても大きな励みです。具体的な手法に学びつつ、日本でも災害リスク削減という言葉が、現実の施策として実施できるよう、取り組みを支援していく必要があると強く感じました。

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