釜石市「避難所運営担当職員用マニュアル改定のための提言ワークショップ」

釜石市で、地域の防災体制に男女共同参画の視点を導入するきっかけとして、誰もが安心して過ごせる避難所について考えるワークショップが行われました。現在使われている避難所運営担当職員用マニュアルを検討し、住民が活用する避難所運営マニュアルを策定するための提言を行うことを目的に、3月5日に行われました。釜石市とカリタス釜石の共催により、防災士や民生児童委員、復興住宅自治会、女性消防団、一般の住民男女のみなさんが参加しました。

ワークショップでは、まず、東日本大震災当時の避難生活の状況を振り返り、避難所運営に必要な男女共同参画・多様性の視点からの組織体制、作業、スペース活用などについて話し合いました。プライバシーの欠如や、避難所での子育ての困難、女性が要望を声に出せない辛さなどの課題に対して、市民の立場から、可能な対策の提案がなされました。当センターは、ワークショップの企画全般と、提言とりまとめのお手伝いをさせていただき、当日のワークショップのファシリテーションは、釜石市の職員の皆さんやカリタス釜石の皆さんが実施されました。

ワークショップに参加した人々が、「男女(みんな)の視点で地域防災を考える会」として、「釜石市避難所運営担当職員避難所運営マニュアル改定に関する提言」をとりまとめ、3月10日に危機管理担当部署の責任者や市長に対して提言を伝えました。
 釜石市に限らず、多くの中小規模の被災自治体では、女性センターもなく、男女共同参画担当部署はそれ以外の業務との兼務であり、人員配置も非常に少ないです。このような状況の中、この提言ワークショップを実施された、釜石市総務企画部総合政策課統計係兼男女共同参画室とカリタス釜石のみなさん、そして「男女(みんな)の視点で地域防災を考える会」のみなさんには、こころから敬意を表したいと思います。

JICA公開イベント「ジェンダー・多様性と災害リスク削減: アジアの現場から」報告

3月3日にJICA市ヶ谷で、公開イベント「ジェンダー・多様性と災害リスク削減: アジアの現場から」が開催されました。

第3回国連防災世界会議で、日本政府は「仙台防災協力イニシアティブ」を発表し、その具体的な施策の一つとして防災における女性のリーダーシップを推進するための研修の実施を表明しました。この政府のイニシアティブを受けて、JICAは、招へい事業「ジェンダー多様性の視点からの災害リスク削減」を実施し、アジア7カ国(インドネシア、スリランカ、タイ、ネパール、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム)から各国のジェンダーや防災の行政官とNGOの方を招きました。当センターは、この招へい事業の国内支援委員として、プログラム全体への助言と一部の講義を担当しました。

公開イベントは、アジアからの参加者が、東北の復興の現場を訪問して相互に学びあった結果を含め、防災に関する政策・計画等の策定と実施においてジェンダーや多様性の視点を取り込んできた成果や課題を共有するために行われました。

パネル討議では、参加者たちがそれぞれの国で、ジェンダーや多様性の視点に立った災害リスク削減の推進にどのような手法で取り組んできたのか、実施の過程でどのような課題があったのか、それをどう克服できるのかについて、3名の参加者に加え、田端八重子さん(一般社団法人GEN・J)が報告しました。当センターの池田がモデレーターを務めました。その議論の内容を以下に簡単にまとめます。

●大震災後のネパールの現状について
  〜〜〜A.アディカリさん(ネパール・NGOルーラリコンストラクションネパール)

昨年大地震を経験したばかりのネパールの状況について報告したA.アディカリさん(ネパールのNGOルーラリコンストラクションネパール)からは、不利な立場にある人々がしっかりと支援対象に入りつつ、実質的な参加ができるようにするための取組について、普段から地域社会にある教育や保健、労働などの格差の問題への取り組みを基礎とする必要性や、人々が復興や開発の方向性に関して政府に説明を求める権利があると理解できるよう働きかけることが重要だという報告がありました。

●災害に脆弱な人々に対する経済的・人的エンパワーメントの事業と災害リスク削減の事業の連携
  〜〜〜スリランカ・A.セネビラトナさん(防災研究開発局)

スリランカのA.セネビラトナさん(防災研究開発局)からは、災害に脆弱な人々に対する経済的・人的エンパワーメントの事業を、災害リスク削減の事業と結び付けて行う取り組みの紹介がありました。すでにある貧困対策やセーフティーネット関係の事業を活用して災害に弱い人々を集中してエンパワーしていくと言うやり方は、コスト面でも実現可能性の高いものでないかと思われます。様々な公共政策分野で、政策や事業が、新たな災害リスクを生み出したり、今ある災害リスクを悪化させたりしないよう、そしてより積極的に災害リスクを削減できるよう、そしてそれをジェンダー多様性の視点を組み込んで行うためのセクターごとの災害リスク削減ガイドラインが作られる予定だそうです。

●ジェンダー多様性の視点に基づいた災害リスク削減を実施するための連携
  〜〜〜フィリピン・M.サセンドンシィリオさん(地方行政学院)

フィリピンのM.サセンドンシィリオさん(地方行政学院)からは、ジェンダー多様性の視点に基づいた災害リスク削減を実施するための地方行政レベルを結ぶ垂直方向の連携、そして企業や市民団体組織、地域組織、行政という異なるセクターの水平方向の連携をつくっていく長期的計画が紹介されました。

●女性防災リーダーの養成について
  〜〜〜田端八重子さん(一般社団法人GEN・J)

田端さんからは、暮らしの中のジェンダー不平等、日常の社会に役割分担や女らしさ男らしさという固定された概念にもとづく不平等がある中を、地域組織と連携して女性防災リーダーの養成や避難所運営マニュアルを作ってこられたお話しをお聞きしました。

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このパネル討議を通して、ジェンダー主流化や多様性への配慮が何かなぜ必要か分かりやすく説明することや、ジェンダー多様性の視点を持った災害リスク削減の計画作りに欠かせない性別年齢別のデータ整備の必要性、そして広い開発セクター(産業や教育、保健などの政策分野)を通して災害リスク削減を行う具体的な手法を確立するという課題が再確認されました。

仙台防災枠組の実現のためには、多くの視点から考えていかねばなりません。まず、災害リスク削減に取り組みための政策や計画、制度・組織など、根拠となる仕組みづくりが必要です。そして、リスク査定やリスク削減の計画を実行する人が、ジェンダー多様性の視点を組み込んで行うための具体的なスキルを身につけ、ジェンダー別統計を使いこなすようになるよう、執行能力・運用能力を高める必要性もあります。そして、脆弱な人々の参加を求めていくためには、ただ参加の仕組みを作るだけではだめで、有意義な参加ができるような経済的・人的なエンパワーメントも同時に行っていく必要があります。

日本と同様に大きな災害を経験してきたスリランカやネパール、フィリピンなどの国々が、試行錯誤を繰り返しながら、ジェンダー・多様性の視点に基づく災害リスク削減を実現しようとしているということは、私たちにとっても大きな励みです。具体的な手法に学びつつ、日本でも災害リスク削減という言葉が、現実の施策として実施できるよう、取り組みを支援していく必要があると強く感じました。

5回目の3月11日を経て…

東日本大震災から丸5年。被災者のみなさまには、それぞれに言葉に尽くせない大変な日々を過ごされてきたことでしょう。いまだ約20万人の方々が避難生活を余儀なくされていますが、とりわけ、住む場所や、経済的な立て直しの面で目途がつかない方々の心細さを思うと、もどかしくてなりません。

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津波被災地の復興はまだ道半ば

今月は、復興に関するさまざまな報道・情報がメディアやネットをにぎわせました。報道や統計に表れることがなくとも、ご家族や親しい方を亡くされた方、避難生活で心身にダメージを受けるような経験をされた方など、心に大きな痛みを抱えながらも、一歩一歩前に進もうと日々を懸命に生きておられる方がたくさんおられます。原発事故や経済問題などで故郷を遠く離れ、孤立した状態で生活再建の問題に直面している被災者の方々、特に母子での避難者が今後どのように扱われていくのかについては、注意深く見つめていく必要があるでしょう。

災害は、日常の社会の抱える矛盾や課題を拡大させる形で被害を拡大させます。災害の被害を減らし、復興を早めるためには、災害後の対応に関する個別のノウハウだけでなく、平常時の組織や制度、経済、文化のあり方自体を変えていく必要があります。性別や年齢、障害の有無などに関係なく、個人が尊重され生き生きと活躍できるような社会、排除や差別のない社会へと変えていくことが重要です。

それは、東日本大震災の被災者の方々が直面されている問題であると同時に、格差が広がり、大規模災害の頻発が予想される時代に生きる、私たちみんなが突き付けられている問題でもあります。

減災と男女共同参画 研修推進センターは小さな団体で、研修を主な活動としていることから、被災者のみなさまへの直接支援には取り組めてはおりませんが、微力ながらこれからも、女性(男性)や障害者・子ども・外国人の方などの多様な視点に立った防災・社会のあり方を問うてまいります。そして間接的なご支援や、被災者や被災地の現状についての情報発信、調査・研究に努めてまいりたいと存じます。

被災者のみなさまのこれまでの5年のあゆみが、次の5年で報われるものとなりますよう、心から祈りつつ、今後も、被災地内外の自治体、地域組織、市民団体、企業、個人のみなさまと連携させていただきながら、真摯に活動に取り組んでまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

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3月11−12日、東京の日比谷公園で行われた震災関連イベントで
NPO法人ウィメンズアイさんの出店の様子

 

 

●復興庁ウェブサイト「復興の現状と取組」より
http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-1/20131029113414.html

「より良い暮らし」をつかむまでの長い道のり ― 大地震から1年を迎えるネパールの女性たちの今

ネパールは大地震発生から間もなく1年を迎えますが、新憲法公布や燃料危機などの影響を受け、順調に復興が進んでいるとは言えません。しかし、地震をきっかけに、新たな活動を始めた女性たちも少なくありません。
 

12月と2月の現地訪調査から、ダンス・ムーブメント・セラピーなど精神面での支えとなる活動、復興住宅への改良かまど導入の展望、また作成中の「ジェンダー・多様性配慮、紛争再発予防の視点を取り入れた災害支援の好事例集」の進捗状況について報告します。
 

【日時】 2016年4月15日(金)午後6時30分~8時30分

【場所】 日本女子会館  5階 大会議室MAP
港区芝公園2-6-8 / 都営三田線「芝公園駅」、都営大江戸線「大門駅」、JR「浜松町駅」から徒歩3-8分

【報告者】
◆田中雅子(ネパール地震ジェンダー配慮支援の会 代表/上智大学教員)

◆鶴井視記子(同 調査研究担当/株式会社サステイナブル 国際協力コンサルタント)

【参加費】 500円(資料代等)

【定員】 40名(先着順)

【主催】ネパール地震ジェンダー配慮支援の会

【共催】株式会社サステイナブル

【申込】参加登録:参加ご希望の方は、info@sustainable-inc.jp

に、「お名前」、「ご所属」、「メールアドレス」をご連絡ください。メールの件名は「ネパール大地震報告会」でお願いします。

「フォトボイス展—女性たちの写真と声が伝える東日本大震災  &撮影者の話しを聴く会〜大震災から5年〜私たちの今とこれから〜」

NPO法人フォトボイス・プロジェクトより、エセナおおた(大田区立男女平等推進センター)との共催によるフォトボイス展のお知らせです。

被災者自らがカメラを手に、風景を切り取りながら、被災経験や避難生活の思いを言葉にしています。

撮影者のお話の会も2日間開催されます。
東日本大震災から5年。被災女性たちの声に、思いにあらためて触れてみませんか?

《フォトボイス展—女性たちの写真と声が伝える東日本大震災》

◆会期:3月14日(月)〜3月31日(木)
◆時間:9:00〜21:00 最終日は14時まで
◆会場:エセナおおた 1階展示コーナー

 

《撮影者の話しを聴く会〜大震災から5年〜私たちの今とこれから〜》

1 3月21日(月・祝日)13:00〜15:00
被災地から3人の女性(宮城県石巻市・女川町、福島県川内村)
2 3月22日(火)19:00〜20:30
首都圏に広域避難している女性お二人

◆会場:エセナおおた 会議室 B
◆対象:原則大田区在住・在勤・在学の方
(区外の方もOK)
◆定員:各界30名
◆申込先:FAX 03−5764−0604
Eメール escena@escenaota.jp

◆申込方法:次の6項目ないし7項目を記載してください。
(1)フォトボイス報告会 (2)〒住所 (3)名前(ふりがな)
(4)年齢 (5)電話番号 (6)FAX番号 、メールアドレス
(7)保育希望の方は子どもの名前、年齢(月齢)と保育カード送付の
ためのFAX番号かメールアドレスを明記

(個人情報は適切に管理し、講座目的以外に使用しません)

<詳細> チラシはこちらから→チラシのダウンロード

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子育て世代の女性が多く来てくださいました!市民向け講座「男女平等の視点から〜避難所生活について考える」(名古屋市)

9月27日、名古屋市男女平等参画推進センター イーブルなごやの主催事業として、市民向け講座「男女平等の視点から~避難所生活について考える」を開催されました。名古屋市内で女性の目線での防災活動を進めているグループ「エンジェルランプ」の企画・運営によるもので、当センターの浅野がメインの講師をつとめさせていただきました。

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午前の講演、昼食は防災食の試食、そして午後のワークショップと丸1日のスケジュールでしたが、託児付きで、防災食の試食もあるということで、多くの子育て中のママさんの参加がありました。地域の防災活動を担っている男性の参加者も何割かおり、性別・世代を超えた交流となるよう、グループで着席していただきました。

午前中は、まず家族防災の基礎知識と、避難生活を中心になぜ地域での助け合い活動が必要か、性別の視点でどのような問題が起こり、なぜ女性の参画が大切かについてお話しました。

昼食前には、エンジェルランプ代表の椿佳代さんから災害時の食について説明があり、その後、アルファ米、パスタなどバラエティに富んだいわゆる防災用食品とともに、ビニル袋に入れた薄切りの人参・ジャガイモ等の材料を、熱く沸かしたお湯に入れてそのまま置いておく「保温調理」で作った肉じゃがなども用意されました。各テーブルともに、午前の講義の内容もあってか、防災食を囲んで話に花が咲いていました。

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エンジェルランプ代表 椿佳代さんによる
「災害時のアイディアレシピ」の説明

午後のグループワークでも、みなさんお互いに積極的に発言しあっておられました。来るべき大災害に備えて、性別・多様な立場を認め合いながら助け合うことの重要性を実感していただけたようです。

若い方たち、とくに小さなお子さんのいる世代は、災害に対して学びたいという気持ちを持っていても、子どもにもまだまだ手がかかる中で、どこでどのように学べばよいのかわからない、講座などに申し込むのもちょっと勇気がいるといった方が多いと思います。

ですから、今回のように託児支援付きで、食を間に挟みながら、家庭防災、そして地域での助け合い活動について段階的に学べる内容は、参加しやすかったと思います。

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ジェンダー・多様性配慮とリスク削減に関する公開イベントのお知らせ

JICA主催の表記イベントが開催され、当センター共同代表の池田恵子もパネル討議のモデレーターとして登壇いたします。アジア各国の防災関係者が集い議論するというまたとない機会です。ぜひご参加ください。 続きを読む ジェンダー・多様性配慮とリスク削減に関する公開イベントのお知らせ

「災害時の連携を考える全国フォーラム」と「団体力パワーアップ講座」

東日本大震災の経験から理解された災害対応の課題の一つは、被災者支援活動をより円滑にサポートし、支援の漏れや偏りを起こさないためには、全国域の災害対応ネットワークが必要だということです。行政と民間団体、民間団体同士の連携をつくり出し、情報の共有と支援の調整をするための仕組づくりが必要とされています。

平常時から、被災者支援を行う関係者が、市民セクター間(NPO・NGO、災害ボランティアセンター等)で、また産官民(経済界/国、県の対策本部など)等のセクターや地域の災害対応ネットワークを越えて連携を強化促進し、お互いを理解しておくことが必要とされています。また、大災害時には、支援活動の全体像を把握し、支援を調整する機能が求められます。災害前から、これらの連携体制の議論が進んでいれば、より有益かつ迅速な支援活動が展開できます。

そのために、「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)」が準備されており、立ち上げのための「災害時の連携を考える全国フォーラム」が、2016年2月12日(金)、13日(土)に東京都内で行われました。
(フォーラムのウェブサイトはこちら http://www.jvoad.jp/forum2016/ )

当センターは、その第6分科会「多様性に配慮した被災者支援:課題と展望」のパネルディスカッションに参加し、「女性に配慮した被災者支援の課題と展望」について報告しました。この分科会では、障害者、女性、外国人、高齢者などに配慮した被災者支援の課題と展望を各パネリストが報告し、「災害時において多様な人々が支援からこぼれない体制(取組・仕組み含む)」について議論しました。

東日本大震災では、とりわけ緊急期においては、女性対象の支援や男女共同参画の視点を持った支援を行うことすら難しかったという課題があります。その理由は、まだ男女共同参画や多様性の視点による災害支援の必要性や具体的な取り組みが周知されていなかったこともありますが、まさに、災害支援を行う行政や民間セクターと、男女共同参画の視点を持った支援者との連携がまったく築かれていなかったことも原因でした。状況は改善してきてはいるものの、現時点でも、「ボランティアセクターと男女共同参画セクターの連携が深まらない」、「防災の研修を受けた女性たちが自主防災組織・ボランティアセンターと繋がれない」、「行政の男女共同参画担当部署と危機管理部署、他部署の連携促進が遅い」という課題が見られています。また、セクシュアル・マイノリティの位置づけや、重なり合う脆弱性の扱い(例えば、ジェンダーと障害)も、まだまだ議論されていません。
 
ところで、このJVOADの設立準備とは別に、全国女性会館協議会が中心となって、「大規模災害時における男女共同参画センターの相互支援システム」も構築されつつあります。これは、全国の男女共同参画センター(女性センター)を結ぶ災害復興支援のためのネットワークです。災害時に男女共同参画の視点を持った支援、女性支援をスムースに行うための試みで、男女共同参画という一つのセクター内での広域連携を目指すものだといえます。

この動きに呼応する形で、個々の男女共同参画センターを拠点に一つの市内で活動している男女共同参加系の団体が、災害時の地域の被災者女性支援を想定して連携する試みも見られるようになって来ました。静岡市女性会館(指定管理者:NPO法人男女共同参画フォーラムしずおか)では、2007年以来、災害・減災関係の講座を開催してきました。2016年1月31日には、「団体力パワーアップ講座 日頃の活動を現在に活かす」と題して、災害・復興時に団体の持つ力を活かして協力し、お互いの力を補い合える関係をつくるための講座を行いました。当センターのメンバーがファシリテーターを務め、女性会館の利用者団体がお互いをよく理解し、また団体の組織力を分析し、災害時の強みを発見するワークショップが実施しされました。

「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)」と、「大規模災害時における男女共同参画センターの相互支援システム」は、その目的に共通する部分が多くあります。「災害時の連携を考える全国フォーラム」で「多様性に配慮した被災者支援」が重要な課題として取り上げられたことは、大きな前進です。これから築かれていく全国域の災害対応ネットワークでは、多様性への配慮は、専門技能を持った支援団体が行うだけではなく、すべての支援者に初期設定として組み込まれた発想でなければなりません。そのためにも、男女共同参画セクターとの連携は、ますます不可欠です。

災害ボランティア団体の間で、そして男女共同参画団体の間で、現在は別々の場所で行われている「災害時の連携」への試みが、相互に有効な形でさらに連携することが必要だと、強く感じました。

朝霞市(埼玉県)が地域防災計画見直しにあたって「女性視点の防災対策検討部会」を設置。報告書がまとまりました

埼玉県の朝霞市では、平成26年度から平成27年度までの地域防災計画の改訂にあたって、「女性視点の防災対策検討部会」と、「避難行動要支援者対策検討部会」の2つの部会を設置。市内の地域リーダー、福祉関係者、女性団体、PTA、消防団など、市内で活躍する多様な立場の男女と、複数の関係部局が委員として参加する形で、数か月かけて熱心に議論が交わされました。当センター共同代表の浅野が両方の座長を務めさせていただきましたこともあり、報告書がまとまりましたのでご紹介させていただきます。

 http://www.city.asaka.lg.jp/soshiki/6/teigensyo.html 
(朝霞市のウェブサイト)

国の『防災基本計画』における記述に加えて、内閣府男女共同参画局による『男女共同参画の視点からの防災・復興の取組み指針』が策定されたことから、各自治体の地域防災計画への男女共同参画の視点の反映作業が少なからず進められています。しかし、その反映作業を、住民・市民との協働作業で行っている自治体はまだまだ少数派です。また、計画に反映させた後の、行政職員および住民・市民への知識の普及と、行政および地域組織における具体的な体制づくりが決定的に重要となりますが、その段階まで腰を据えてしっかりと取り組もうという自治体はさらに少ないのが現実です。

ちなみに朝霞市ではこの2つの報告書を市長へ提出した直後に、策定に携わった住民・市民委員およびその他の重要な地域防災上のアクター(建設事業者なども含む)の方に参加していただく形で「地域防災意見交換会」を開催! 報告書の概要を共有した上で、「避難行動」および「避難所運営」の場面を想定し、実際の災害時および事前の備えとして何ができるのか、ワークショップを実施しました。

そのほかにも、地域防災計画に男女共同参画の視点を書き込んだだけに終わらせず、災害の場面でも実践的に取り組まれるよう、地域防災リーダーや職員向けの研修、避難所開設運営訓練への取り入れなど、頑張っている自治体が複数出てきていますので、そうした好事例を相互に広げていくことができればと思います。
 みなさまの地域でも面白い取り組みがありましたら、ぜひ情報をお寄せ下さい!

(文責:浅野幸子)

『東日本大震災「災害・復興時における女性と子どもへの暴力」に関する調査 報告書』がウェブサイトにアップされました

 当センターの前身団体である、東日本大震災女性支援ネットワークが行った、災害・復興時における女性と子どもへの暴力に関する調査の報告書が、ネットワークのウェブサイトからご覧いただけるようになりましたので、当該ページのURLをご紹介させていただきます
(注:このサイト自体は解散と同時に更新を止めています)。

『東日本大震災「災害・復興時における女性と子どもへの暴力」に関する調査 報告書』
(東日本大震災女性支援ネットワーク編・発行、2013年)
 http://risetogetherjp.org/?p=4879

 なお、当センターのウェブサイトに掲載している「災害とジェンダー資料室」http://gdrr.org/library/ の中の、【Ⅱ国内の文献・資料一覧】の、(1)東日本大震災女性支援ネットワークによる発行物からも、この報告書のサイトにリンクしておりますので、さまざまな資料と併せて目を通したい方はこちらからご覧いただければと思います。

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