『東日本大震災「災害・復興時における女性と子どもへの暴力」に関する調査 報告書』がウェブサイトにアップされました

 当センターの前身団体である、東日本大震災女性支援ネットワークが行った、災害・復興時における女性と子どもへの暴力に関する調査の報告書が、ネットワークのウェブサイトからご覧いただけるようになりましたので、当該ページのURLをご紹介させていただきます
(注:このサイト自体は解散と同時に更新を止めています)。

『東日本大震災「災害・復興時における女性と子どもへの暴力」に関する調査 報告書』
(東日本大震災女性支援ネットワーク編・発行、2013年)
 http://risetogetherjp.org/?p=4879

 なお、当センターのウェブサイトに掲載している「災害とジェンダー資料室」http://gdrr.org/library/ の中の、【Ⅱ国内の文献・資料一覧】の、(1)東日本大震災女性支援ネットワークによる発行物からも、この報告書のサイトにリンクしておりますので、さまざまな資料と併せて目を通したい方はこちらからご覧いただければと思います。

福島と宮城で女性支援を継続している方々にお話をうかがいました(福島県助産師会・ウィメンズアイ)

11月の釜石に引き続き、12月16・17日と、福島と宮城で支援活動を継続している、福島県助産師会会長の石田登喜子さん、ウィメンズアイ代表の石本めぐみさんにお話を伺ってきました。今回はそのうち、福島県助産師会による、震災後の妊産婦支援事業についてご紹介します。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一般社団法人福島県助産師会では東日本大震災後の大変厳しい環境の中、妊婦・母子の訪問、助産所での母乳育児支援、子育てサロンの開催、助産所での産後入所ケアと産後デイケア、電話相談などの支援を継続して行ってきました。事業実績は表の通りですが、お話をうかがうと、こうした数値では表現しきれないだけのたいへん大きな役割を果たされてきたことが理解できます。

政策的には一応、「妊婦の検診、出産後の保健師の訪問、乳幼児の健診」がありますが、回数は限られており、しかもそこで問われるのは赤ちゃんの健康状態だけです。つまり、赤ちゃんがとりあえず健康状態をクリアしている限り、お母さんがどんなに追い詰められていても問題とはなりません。そうした状況での福島県助産師会の支援活動ですが、特に、1日3,000円で受けられる「産後の入所ケア事業」をめぐるお話が印象的でした。

お母さんたちは出産後、病院にいる間だけは周囲の支援があってなんとかなりますが、家に戻った途端に大変な状況に追い込まれます。泣く赤ちゃん、寝不足になりながらの授乳、おむつ替えなど、一つ一つが初めてで慣れないだけでなく、「本当に赤ちゃんは育っているのか?」「自分の育児方法は間違っていないのか?」などと、日々不安の連続です。

その上、核家族が増えたこと、妊産婦の親世代たちも生活のため毎日働いているケースも多いことなどから、今は、一人でたいへんな育児に向き合っていかなくてはならないお母さんが増えていると石田さんは言います。そうしたお母さんたちが、助産所でゆっくりと支援を受けながら、育児に関するアドバイスももらえるのが産後の入所ケアです。どれだけ新米ママさんたちの助けになることでしょう。

なお、こうした取り組みの成果により、県内の病院に務める助産師や市町村で母子保健を担当する保健師との連携もできているそうです。

恥ずかしいことに私はこの日、福島特有の困難というお話がメインになることを予想していただけに、そもそも日本社会における妊娠・出産をめぐる環境がとても悪化している状態なのであり、それが福島では震災後の厳しい環境で一気に顕在化したのだと捉えているとの石田さんの言葉に、少なからず衝撃を受けました。

もちろんわたしたちの社会は、原発事故に関連して妊産婦が抱えるさまざまな悩みや不安にきちんと正面から向き合っていく必要がありますし、現実に福島の女性たちは、他の地域の妊産婦さんよりもさらに多くの不安を抱えながら妊娠・出産・育児に向き合っていることでしょう。しかし同時に、家族形態の変化に加えて、非正規雇用の増加、改善されない長時間労働、格差・貧困問題、老後不安といった問題が、さらに育児・出産を巡る環境を悪化させていることにも、目を向ける必要があると改めて思いました。

日本で女性たちが安心して産み育てることができる環境を実現させていく必要性を考えた時、福島県助産師会による包括的な妊産婦支援事業は、日本の未来を切り開く先進事例と言えるのでしょう。ちなみに福島県助産師会では、当初は民間による助成金を基にしてこれらの支援事業に取り組んできましたが、現在は福島県の補助金によって事業を展開できる状況になっているとのことです。今後とも、こうした行政と専門職能団体が協働するかたちでの支援事業がしっかりと継続され、全国に広まって欲しいと思いました。

(文責:浅野幸子)

 

 

表 福島県助産師会母子支援事業の実施件数 推移
(出典:「福島に続け――低料金でも手が届く助産師のケア」『助産雑誌』vol.69 no12 December)

事業内容

2011年3月~

2012年度

2013年度

2014年度

妊婦・母子訪問

1041

1001

1053

1328

助産所での母乳育児支援
(乳房ケア件数)

151

339

456

622

子育てサロン
(実施場所,利用組数,のべ回数)

県内6カ所,
559組,52回

県内16カ所,
1844組,151回

県内19カ所,
2473組,202回

県内23カ所,
2821組,233回

助産所での産後入所ケア
(実施場所,利用組数,のべ日数)

県内4カ所,
29組,のべ419日間

県内3カ所,
38組,のべ305日間

県内3カ所,
67組,のべ472日間

県内3カ所,
70組,のべ511日間

助産所での産後デイケア
(実施場所,利用組数,のべ日数)

県内5カ所,
53組,のべ66日間

電話相談

1044

877

1269

母乳の放射性物質濃度検査受付
(受付件数)※

559

59

19

福島県助産師会『東日本大震災支援活動報告集~あれから3年』(2014年3月)より作成
 
※母乳の放射性物資濃度測定検査の結果はすべて「未検出」

 

 

「女性にとって今こそ知っておくべき防災術!」 立川災害ボランティアネットの防災講演会(東京)

この秋、講師として伺った講座・研修で、子育て世代の女性たちが多く参加して下さった催しがありましたので、今回と次回にわたってご紹介します。

10月9日(金)の午前、東京都西部にある立川市女性総合センター アイムを会場に、防災講演会「女性にとって今こそ知っておくべき防災術!~あなた自身と家族、本当に守れますか?子ども・高齢者・女性が直面する災害時の困難とその対策~」が開催され、当センターの浅野が講師を務めさせていただきました。

主催は立川市男女平等参画課、協力の立川市社会福祉協議会ですが、企画・運営の立川市災害ボランティアネットを中心に、市男女平等課および市社協の職員さんたちも、開催準備や当日運営への協力はもちろん、講演会自体も受講してくれました。

th_4-2
講演の様子

受講者は約50人。主催・協力・運営側はこれまでも連携しながら、市の町会連合会にもお声掛けして防災講演会を開催するなど、男女共同参画の視点による防災の重要性についての普及啓発に継続的に取り組んできているため、保育付きで10人前後の子育て世代のママさんたちも参加してくれただけでなく、男性の参加も多く、地域組織で防災を担当している方もいました。

内容については、北関東の豪雨水害の記憶も新しいことと、何より「女性にとって今こそ知っておくべき防災術」というテーマですので、最初30分程度の時間を割いて防災の基本について学習していただけるよう、警報の種類と、室内案安全対策(点検チェック資料と転倒防止器具情報)、住んでいる地域の危険箇所チェック資料、備蓄に関する資料を用意して、まずは自助にしっかり取り組んでいただくようお話をしました。ただし、自助だけでは助からないのが大規模災害なので、自助・共助・公助の考え方と避難所でどんな問題が起きていたのかについて簡単に触れながら、地域での関係づくりの重要性をお話しました。

後半は、性別・立場別の困難の違い(特に女性ならではの、また育児・介護など家族のケアの立場からの大変さ)について説明し、最後に避難所に地域のひとたちと一緒に避難したと想定しながら、食物アレルギーの人、介護が必要な高齢者・障害者、子どもの困難と配慮・支援をテーマにグループで話しあってもらいましたが、熱い議論となりました。受講者には、乳児を抱いた状態の若いご夫婦もいらっしゃるなど(0歳児は託児できないため一緒に参加いただきました)、さまざまな世代・立場の男女の市民がバランスよく参加して一緒に学ぶという機会もあまりありませんので、そうした意味でも学習効果は大きかったのではないでしょうか。

なお、立川災害ボランティアネットは、立川市社会福祉協議会のよびかけで2009年から準備会をスタートし、東日本大震災を契機に2011年4月に市民有志によって設立されました。自治会、マンション管理組合、企業、市民団体、小・中・高校などへの出前講座に取り組むとともに、地域で活動する人材育成を目指し、災害ボランティアリーダー養成講座に取り組んでいます。

th_4-1
立川災害ボランティアネットのみなさんと一緒にパチリ

『男女共同参画・多様性配慮の視点で学ぶ防災ワークブック』等の富山県女性財団での活用について

富山県女性財団から、当センターが作成したワークブックを活用した、県内での普及・啓発活動の様子について寄稿いただきましたのでご紹介します。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
富山県女性財団は、男女共同参画に関する学習をしているグループ等を対象に、出前講座を開催しています。今年度は、減災と男女共同参画研修推進センター(GDRR)が作成した『男女共同参画・多様性配慮の視点で学ぶ防災ワークブック』及び啓発スライドを活用して、出前講座メニューに「災害・防災について男女共同参画の視点から考える」を新設しました。

これまでに実施した出前講座の受講者からは、「日ごろから男女共同参画が必要だということを改めて認識できた」「こういう話を各公民館でも広めていき、みんなで考えていく必要があると思う」「災害・防災については、平常時の備えが大切と分かったつもりでいたが、具体的な状況を考えてみることが少なかったと気付いた」等の感想が届いています。

出前講座については、「サンフォルテだより Vol.97」p7をご覧ください。
→ http://www.sunforte.or.jp/attach/DL/41/attach/DL_41_20151030024624-3.jpg

釜石を訪ねました

11月上旬、釜石を訪ねる機会がありました。被災地の現状についてお話を聞き、復興工事の現場も見て回りました。一昨年に町の中心にイオンタウン釜石がオープンし、建設現場ではひとやもの、お金が集中していますが、水産加工業や飲食業などの地元の中小・零細企業は引き続き人手不足の状況のようです。

また、復興公営住宅の建設が進む中、復興公営住宅での自治組織づくりなど新しいコミュニティづくりをどう支えるのかや、復興公営住宅と近隣の住民との交流の場づくりといった課題や、入居が遅れ仮設住宅に残される人たちの焦燥感など、被災者の方たちが置かれた状況に差が出る中での問題もあるようです。

th_3-1
   復興工事が進む鵜住居地区

th_3-2
   カリタス釜石の事務所

市の中心部の協会敷地内に拠点を置き、地域に根差して被災者支援を続ける特定非営利活動法人カリタス釜石では、複数の仮設住宅でサロン活動を継続して来ましたが、今後、復興公営住宅でのコミュニティ形成支援にも力を入れようとしているとのことでした。

カリタス釜石は、サロン活動や見守り活動に加えて、敷地内にオープンスペース「ふぃりあ」を設け、近隣住民へのサービスや憩いの場、さらには孤立防止の為に開放しています。男性の孤立といった課題も受けて、男性向け料理教室の開催なども行ったそうです。

また昨年、個人や団体が自由に出入りし、休憩や打合せ、コワーキングスペースとしても利用することができるみんなのスペース「ぷらざ☆かだって」をオープン。特定非営利活動法人アットマークリアス NPO サポートセンターとの共同運営で、パソコンと Wi-Fi も完備してインターネットを楽しめます。さらに、さまざまなイベント・セミナー等も開催するなど、釜石の地域復興と、暮しをめぐるさまざまな課題に目配りをしながら、細やかな取り組みをつづけています。

なおカリタス釜石さんでは、漁業者の復興を応援するため、三陸わかめの販売をしています。売り上げは地域の復興事業にも使われるそうです。

th_3-4
   カリタス釜石のみんなのスペース「ぷらざ☆かだって」でスタッフのみなさんと

th_3-3
   かさ上げ工事の様子

市の中心部から車で30分ほど離れた、海沿いの地域に古くから暮らす女性リーダーにもお話を伺いましたが、高齢化が進む中でもさまざまなアイディアを出しながら、地域の交流や漁業を盛り上げようと奮闘している様子が伝わってきました。数は少ないものの、フルタイムで働いている20代の女性もできる範囲で地域活動を手伝ってくれたり、30代40代で力を発揮している女性漁業者もいるとのお話もあり、こうした女性たちがより一層活躍できる環境づくりがいかに重要かを改めて感じました。

「防災の主流化」研修(JICA主催)より

今年3月に行われた仙台防災会議で採択された「仙台防災枠組」(2015-2030)の基本的な考え方は、社会に潜む脆弱性の解消も視野に入れた「災害リスク削減」です。つまり貧困対策、ケア、就労や雇用、医療制度、社会保障制度、地域政策など、社会の脆弱性と関わる分野と災害リスクを重ねあわせて対策を取ることが大切だということです。

日本政府が行う防災分野での国際協力も、その方向性を目指していますが、発展途上国から災害関連の政策を担う公務員を招いて行われている研修(「防災の主流化」研修)の一環として、先日都内で、各国の政策・制度整備状況の報告会が開催されたため参加してきました。ちなみに当センターは、この研修の一コマで「災害リスク削減のジェンダー主流化」の講義・演習を担当しています。

研修生は、12カ国から15人で、危機管理担当だけではなく、保健医療や社会福祉担当の省庁や、警察、市民防衛(Civil Defense)部署の人も複数いました。残念だったのは、研修生が全員男性だったことです。

まず研修の冒頭で、講師から仙台防災枠組に触れながら災害リスク削減の説明がありました。
1)防災や発災後の救援体制の充実だけではなく「災害リスク削減」を政策として明示すること、2)社会経済環境面のすべての政策分野と災害リスク削減を関連付けるためには、他の省庁と連携することが重要なこと、3)そのためには災害が起こった後ではなく事前に投資を行う必要があることなどが強調されました。

報告の中から印象に残ったものを幾つか紹介します。南米のチリでは、保健分野の国家戦略の中に災害対応が位置づけられ、保健省内の各部署が災害時に連携できる仕組みが紹介されました。ジェンダーの話はありませんでしたが、先住民(インディオ)団体との連携について指摘がありました。また、チリでは、自治体と大学とコミュニティが協働し、日中だけではなく真夜中にも津波避難訓練をしているそうです。フィジーの防災対策は、農村海洋開発・防災省が担っているようですが、報告者によると、単一の省庁が担っていても開発政策と防災を結びつけるのは、これからの課題とのことでした。一方、バングラデシュでは、15の省庁で担当分野の政策に災害リスク削減を統合するためのアクションプランが作成済みだそうです。

多様なバックグラウンドを持つ参加者の報告は内容が多岐にわたり、これから新しい政策や制度を作り上げていくのだという熱意が感じられるものばかりでした。災害リスク削減の発想は、ぜひ日本国内でも主流になってほしいものです。

th_2
  JICA研修の様子

NHKの海外向けラジオ放送で紹介されました

防災や災害支援にジェンダー・多様性の視点を導入するための活動が、NHK国際ラジオ放送の15分程の番組で紹介されました(英語はじめ欧米・アジア・アフリカの18言語で、9月23日に放送)。

茨城県の行政職員・地域の防災リーダーの皆さんの研修(当センターの池田恵子が講師を務めました)の様子や、静岡県駿東郡長泉町の「女性の視点による避難所立ち上げ訓練」や性別役割分担にこだわらない防災訓練を行う自主防災組織と、そこで活躍する女性リーダーの活動などが、訓練の取材やインタビュー入りで紹介されました。また、1990年代からジェンダーの視点による災害への対応を実施しているバングラデシュのNGOの活動が紹介されました。、洪水頻発地域で活動するNGOの女性スタッフが、この方針を最初に導入した当時の困難と、それをどのように乗り越え、現在、方針が地域の災害への備えや復興に定着するにいたったのかについて話しました。

日本は、防災・災害対応・復興にジェンダー・多様性の視点を導入する活動は、世界の国々よりは遅れて開始され、今後これから定着に向けて進んでいかねばならない状態です。それでも地域の皆さんの活動は着実に進んできていることが、発信されたと思います。

遺族年金の対象とならない父子家庭の救済を!全国父子家庭支援ネットワーク

全国父子家庭支援ネットワークの村上さんから、2014年4月以前に妻を亡くし遺族年金の対象とならない父子家庭の父と子を救うために、電子署名への協力を要請するメールが当センターにも寄せられました。ぜひご協力ください。

http://urx.nu/iOoT

母子家庭の生活の厳しさは、言うまでもなく、今以上に注目されるべき問題ですが、東日本大震災では、数多くの父子家庭も生まれてしまいました。しかし、男性はいかなる状況でもきちんと稼げる(べきである)という前提に立った遺族年金の制度上の問題から、父子家庭の遺族年金の受け取りが難しい状況でした。

そのため、震災で家族を失った父子家庭のみなさんが中心となって働きかけが行われたこともあり、そうした制度上の矛盾が今回ある程度是正されたわけですが、その恩恵を当事者が受けられないという状況になっています。

ぜひ多くの方に関心を寄せていただければと思います。

関東・東北豪雨を通して改めて見えてきた課題

9月9~11日にかけて北関東および東北に甚大な被害をもたらした豪雨災害(気象庁による正式名称は「平成27年9月関東・東北豪雨」)。いまも被災したみなさんは、家の片づけや住宅再建、生活の立て直しに追われ続けています。

10月初旬の時点で、まだまだ片づけのための人手も足りていない地域もありますので、ぜひ関心をもちつづけていきたいなと思います(状況は常に変化しておりますので、ボランティアセンター等のウェブサイトで情報を確かめてください)。

th_03joso_taiikukan
支援物資を集積・配布している、常総市石下総合体育館の様子(撮影:浅野)


●平常時からハンディを抱える人たちの困難

ところで今回の豪雨災害でも、避難生活の側面でさまざまな問題が見えてきています。特に、障害のある方や介護・介助など配慮が必要な高齢者、一人親家庭など、平常時から心身や経済面等でハンディを抱えている人たちの困難が浮き彫りになっています。避難所の環境や福祉・保育面などの課題、自宅のあと片付けの際の周囲の支援や交通手段の不足など広範にわたり影響がでています。

*自閉症の家族がいる方、視覚に障害のある方などの困難(朝日新聞より)
http://www.asahi.com/articles/ASH9P4K9WH9PUTIL00K.html

*追いつめられる母子家庭(毎日新聞より)
http://mainichi.jp/select/news/20150923k0000e040130000c.html

他にも、日雇いで生計を立てている独身男性(日本人)の「自宅の片づけに追われて仕事に行くことができていないため収入が無い。貯金も底をついた」といった声もあります(新聞記事より)。

また被災エリアに多く暮らす日系ブラジル人の方たちの中には、自宅が被災しても勤務先の工場を休ませてもらえないため十分に片づけができない、日本語が十分理解できないため必要な支援を受けるのにも不利だったり、生活の復旧や再建に支障がでかねないといった現状があります(被災地で外国人支援を行っている団体からの情報)。

 

th_04isige
石下総合体育館内の、日本語とポルトガル語で書かれた物資の配置場所の案内表示(撮影:浅野)

 

避難所の縮小により、さらに数多くの在宅避難生活の状態の方たちの存在が見えにくくなるのではないかとの心配もあります。9月末時点でも、自宅で調理することもできないために避難所に食事などをもらいに来る周辺住民の方もおり、炊き出しの潜在的ニーズが高いことがうかがわれました(周辺住民に、避難所届いた食料等を快く提供するところもあれば、取りに来ることを制限するところもあったようです)。

th_02takidashi
災害支援ボランティアのレスキュー・ストック・ヤードによる炊き出し(撮影:浅野)

 

泥やゴミを片づけただけでは、元通りに暮らすことはできません。服や家財をそろえ直すだけでも大変な労力ですし、床下の乾燥が十分できなかった場合、カビの繁殖に見舞われる可能性もあります。戦いはまだまだ続くでしょう。

th_01haikibutsu
公園に積み上げられた廃棄物(撮影:浅野)

 

●子どもを持つ女性への支援の必要性

また、10月に入った現在でも、母親たちからの子どもの一時預りを求める声が上がっているようです。今回の災害では車を失った人が多く、移動の問題から一層厳しい状況に追い込まれています。

例えば常総市では、もともと保育所に子どもを預けていてその保育所が被災した場合に、被災を免れた保育所で一時的に預かるという対応をすぐに行っており、とても評価できます。

しかし、こうした大規模災害の場合、平常時は子どもを預けていなくても、幼い子どもを抱えたままでは自宅の片づけや生活再建のための情報収集や手続き等を進めることが困難となるケースが増えます。被災により夫が失業したり家計支出が激増したといった理由で、急に働きに出る必要性に迫られる女性が増えていくことも考えられます(実際、被災地の雇用に関する窓口には、被災の影響で解雇されたと相談に来る被災者も出ているとの報道です)。

こうした問題にできるだけ効果的に対応していくためには、どのような事前の取り組みが必要なのでしょうか。まず、各自治体の防災計画に、避難所や在宅避難者への支援のあり方はもちろん、生活再建期の一時預りや保育支援、就労支援(女性を含む)、移動支援についても、しっかりと盛り込んでおく必要があります。

●災害時の自治体機能の課題

しかし、市町村の中枢機能が集積しているエリアを含めて広域に被災してしまうような大規模災害の場合、被災した自治体は機能不全に陥り、住民に対する支援が十分行えなくなる可能性があります。

しかも、平成の大合併で市町村は昭和の大合併とは比較にならない規模で広域化し、職員数も大幅に減っているため、ただでさえ対応能力が落ちていることが推測されます(情報収集にさえ時間がかかる、職員が自分の自治体の中の様子を十分に知らない、住民との関係が希薄化しているなど)。また、復旧・復興期におけるソフト支援の重要性が社会的に十分に認識されていません。各被災家庭の復旧・復興の遅れは、被災地全体の復興の遅れとなり、社会全体にとっても重荷になり寝ません。

従って、都道府県や国によるバックアップも不可欠でしょう。専門性、人、予算の面での側面支援が、被災自治体や民間との連携のもと、スムーズに行われるような仕組みづくりも求められていると思います。

ワークブックの一部誤植のお知らせと 修正原稿のダウンロードのご案内

ワークブック69ページの、要配慮者支援を充実させるための被災に関する聞き取りシートA「被災後の生活状況につ
いてのアンケート」の、Q10の選択肢において、番号に誤植がございました。申し訳ございません。

これを修正し、68・69ページの連続したページとしてPDF化したものをダウンロードしていただけるようにいたしましたので、こちらからご利用下さい。

お手数をおかけいたしますが、どうぞよろしくお願いいたします。

防災ワークブック p68-69聞き取りシートA(PDF)

アーカイブ