第18回 ISA社会学世界会議とサイドイベントのご報告

横浜市で7月14日(月)~19日(土)にわたって第18回ISA社会学世界会議(横浜会議)が開催され、当センターの前身団体・東日本大震災女性支援ネットワークが行った調査や研修の成果から、「高齢化社会における地域防災体制とジェンダー」(7月17日)と、「災害時のジェンダーに起因する暴力」(7月18日)の二点について報告しました。どちらの会場も満員で、多くの質問やコメントをいただきました。

「災害とジェンダー」は、国際的な会議では関心が高いテーマの一つです。ジェンダーの視点を取り入れた災害対応、災害時の暴力に対する取り組み、原子力災害と男性、多文化共生と復興など興味深い内容の報告が、オーストラリア、イラン、ウクライナ、台湾などからも、ありました。

この社会学世界会議には、海外から「災害とジェンダー」分野の世界的な研究者が参加しているため、この機会を活用しようと、彼女たちと日本の災害とジェンダー分野の研究者・実践者が交流するワークショップが、7月20日に日本学術会議(東京都港区)で行われました。 続きを読む 第18回 ISA社会学世界会議とサイドイベントのご報告

第1回GDRR公開研究会(8月3日)報告「災害・復興時における女性と子どもへの暴力」

「災害・復興時における女性と子どもへの暴力」をテーマに、1回目の公開研究会が行われ(8月3日、東京・田町)、ジェンダーの視点から災害・復興に取り組む多様な立場の方々が約20名参加されました。講師は、同テーマで調査を行った旧東日本大震災女性支援ネットワーク調査チームの吉浜美恵子さん・ゆのまえ知子さん・柘植あずみさんが担当しました。

研究会の冒頭で、まず災害時における性に基づく暴力の加害と被害の実態について、調査結果の概要が報告されました。DV(ドメスティックバイオレンス)、そのほかの性暴力などの発生の傾向について紹介がありました。災害前からあったDVが悪化したり、再開したりする事例がみられること、性暴力が避難所の居住スペースでも起こっており、被害者の年齢は未成年から60歳以上にまで広がりがあることなどが紹介されました。

その後、参加者は、グループに分かれ、実際の事例を読みながら、なぜ災害における暴力が起こり続けるのか、また必要な防止の対策と対応は何かなどについて話し合いました。避難所のスペース活用や、相談体制の整備などが大切ですが、その一方で、日常から弱い立場にある人の状況が第三者に知られてしまったり、立場がさらに弱くなったりすることが、暴力の発生につながっていることも防止の対策で考慮しないといけないことが、議論されました。

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災害時の暴力を抑制したり助長したりする要因について議論する参加者

なお、この研究会では配布資料はありません。また第1回研究会報告のきかっけとなった調査報告書『東日本大震災「災害・復興時における女性と子どもへの暴力」に関する調査 報告書』(2013年、東日本大震災女性支援ネットワーク調査チーム編)の印刷冊子は在庫がありません。ただし、年内に当センターの協力者であるオックスファム・ジャパンのウェブサイトからダウンロードしていただけるようになる予定です。

国連防災世界会議に向けて

第3回国連防災世界会議に向けた勉強会「ジェンダー視点から考える復興・防災 ~東北での支援活動の成果と教訓~」(主催:オックスファム・ジャパン、Gender Action Platform (GAP), 国連開発計画(UNDP))が、7月3日に行われました。旧東日本大震災女性支援ネットワークの運営委員、皆川満寿美さん(東京大学社会科学研究所)、山下梓さん(エンパワーメント11わて)、私たちの2011年からのパートナーである石本めぐみさん(ウィメンズアイ)、当センター共同代表・池田恵子が講師を務めました。

東北での支援経験を、半年後に迫った第3回国連防災世界会議に、いかに反映していくのかについて、議論が行われました。

池田は、(1)災害(ハザード)を避けること、(2)被害を小さく留めること、(3)早期に回復すること、この3つのバランスが揃った社会こそが、災害に強い社会であるという趣旨の報告をさせていただきました。防潮堤の建設などは、あくまで(1)の災害(ハザード)を避ける効果しかなく、働きづらさ・貧困、子育てや介護の困難、社会への参画が容易ではない状態に、私たちひとりひとりがおかれている現状が放置された状態こそが、改善される必要があります。

女性のリーダシップについて触れた石本さんは、女性たちは、明確に「代表」や「リーダー」と名指しされるとかえって活動しにくくなることがあることを指摘し、女性の人材育成の難しさについて考えるきっかけとなりました。

これまでジェンダーの視点で取組が行われてきた、その積み重みを、しっかりと第3回国連防災世界会議に届けたいと思います。

災害・防災と男女共同参画に関する人材育成研修 – 大阪市立男女共同参画センター・クレオ大阪中央館で開催しました

国際協力NGOオックスファム・ジャパンの協力のもとで、昨年度に引き続き特定非営利活動法人全国女性会館協議会とともに実施している、災害・防災と男女共同参画に関する人材育成研修事業。今年度も、協議会に加盟している女性関連施設からの応募・審査の結果、3か所で実施することになりました。

今年度最初の研修は、7月30・31日と大阪市立男女共同参画センター中央館で開催。大阪市男女共同参画センターさんには広報や運営を担っていただき、わたしたちGDRRは教材の作成・提供と、講師派遣を行う形で実施しました。

プログラムは下記の通りです。1日目の〔4〕までは一般公開とし、2日間を終了した12人と併せて、全部で27人の参加がありました。

一般公開のプログラムでは、県外避難者でつくる、「避難ママのお茶べり会」代表・吉岡智佳子さんからも、避難生活に至る経緯や県外避難者が置かれている現状等についてもお話をいただきました。

女性の市民の方はもちろん、地域で防災活動を担っている男性リーダーの方、自治体の防災担当者の方、社会福祉協議会の方などキーパーソンとなる方々の参加が多く、グループワークでの議論も活発に行われ、研修の質を高めてくれました。

さまざまなタイプの大規模災害が頻発する昨今、受講生のみなさんの活躍を期待させていただくとともに、災害とジェンターに関する知識の普及・啓発に、私たちもより一層努めていかなければと、気が引き締まる思いを抱いた8月でした。

【1日目】
〔1〕災害と男女で異なる被災経験~防災力向上のために
〔2〕避難ママのお話~被災経験に学ぶ
〔3〕大阪市の防災対策について
〔4〕各地の取り組み事例から
〔5〕参加者による自己紹介・人材育成研修の意義
〔6〕地域の防災資源や現状について考える

【2日目】
〔7〕要援護者支援と多様性配慮
〔8〕災害時の暴力問題とその防止方法
〔9〕地域で活用してみよう! 避難所運営に関するワークショップ
〔10〕今後の普及に向けて

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クレオ大阪中央館での研修の様子

8月3日:第1回GDRR公開研究会のご案内

◆テーマ:【災害時の女性と子どもへの暴力】

災害時の女性と子どもへの暴力の実態、必要な取組みなどについて、参加者の皆さんと参加型のワークショップで考えていきます。旧「東日本大震災女性支援ネットワーク調査チーム」が行った調査についても、ご紹介します。

ご参加をお待ちしています!

◆報告:吉浜美恵子(ミシガン大学教員)
   柘植あづみ(明治学院大学教員)
   ゆのまえ知子(NPO法人フォトボイス・プロジェクト共同代表)

◆日時:8月3日(日) 13:00~17:00 (受付12:40開始)

◆場所:キャンパスイノベーションセンター東京 501AB室
〒108-0023 東京都港区芝浦3-3-6 (map

定員:35名(先着順)

◆参加費:資料代として300円

◆申込み:7月31日(木)までに、こちらの《専用フォーム》からお申込みください。

◆主催 減災と男女共同参画 研修推進センター(GDRR)
   

最近の講師派遣の様子~広がりが出ています

減災と男女共同参画 研修推進センターでは、講師派遣も重要な取り組みとなっていますが、昨年の冬頃以降(東日本大震災女性支援ネットワーク時代)この6月までの派遣実績を振り返ると、派遣先に広がりが出てきています。

ありがたいことに、引き続き女性関連施設からのお声掛けをいただいておりますが、加えて、下記のような団体や活動背景を持つ方の前でもお話をさせていただく機会があり、災害とジェンダー・多様性配慮のテーマの重要性に対する認識が、徐々に広がってきているように感じています。

7月以降も、男女共同参画センターの人材育成研修や、自治体の防災・男女共同参画担当職員向け研修や、自主防災リーダー(=主に自治会・町内会等の役員さん)対象の研修など、さまざまなところで、参加者のみなさまとご一緒に充実した学習の場を作っていけるよう努力していきます。

千葉センター_6月29日 図上演習4 千葉センター_6月29日 図上演習2

6月に千葉市男女共同参画センターで実施したトレーナー養成研修より。男女共同参画の視点を入れた、実践的な避難所開設・運営図上訓練に取り組んでいる様子。


<最近の特色ある講師派遣先の例>

県の民生委員・児童委員協議会の研修、消防大学校や人と防災未来センターにおける自治体・消防署職員向けの研修、市の管理職職員向け研修、災害ボランティアセンターの開設・運営を担う社会福祉協議会職員向けの研修、自主防災リーダー向けの避難所開設・運営図上訓練などです。

自主防災リーダー向け 研修報告(静岡)

静岡県では、平成34年までに県内すべての自主防災組織で女性が役員として参画すること、また平成29年までに全市町が男女共同参画の視点を入れた防災講座を開催することを「地震・津波対策アクションプログラム2013」の中で目標に掲げています。

地域の防災活動への女性の参画は、防災基本計画や内閣府男女共同参画局の「取り組み指針」でも重要視されています。責任ある立場で女性たちが地域の防災活動に参加していなければ、いざという時に女性が力を発揮することはできません。

静岡県は自主防災組織の結成率が100%に近く、活動も活発ですが、その担い手の中心は男性であり、女性が責任ある立場で関与している地域はまだまだ少ないのが現状です。

実際には、土台にある地域自治への女性の参画が進まない限り、これはかなり野心的な目標だと思います。そう思っていたところ、何と10年以内に自主防災組織の役員の女性比率5割を目指すという自治体が静岡県にありました。必要だからやるのだそうです。

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最近、池田は静岡県自治会連合会理事会や、藤枝市地域防災指導員養成講習会などで研修を行う機会がありました。どちらの研修も、参加者の大多数は男性でしたが、シルバー世代の男性だけでは地域防災は限界だという危機感は共有されていました。そこで、いかに女性の参画を増やしていくのかということが主なテーマになりました。

終了後には、「やれる人が性別関係なく動けるようにしていくしかない」という感想が多く聞かれました。一方で、静岡県では女性防災リーダーの人材育成にも力を入れているのですが、その研修を修了した女性たちがなかなか自治会や自主防災会に繋がれないという問題も、男性リーダーたちから指摘されました。現状では、男女別の機会を作って行っている防災リーダーの養成は、今後、男女が共同作業を行う場を作り出していく方向へ発展させていく必要があると思いました。

7月20日:学術フォーラム「減災の科学を豊かに:多様性・ジェンダーの視点から」開催のお知らせ

東日本大震災は、災害が与える影響が、一人ひとりの被災者それぞれに異なることを改めて浮き彫りにしました。

被害や復興において差異を生み出す要因は、ジェンダー、セクシュアリティー、年齢、障害や病気の有無・種類、国籍・母語、働き方や家族形態、ケア責任の有無・程度、地域の社会的ネットワークなどであり、それらが総合された自治体の減災力です。地域のレジリエンスを増強する取り組みも、そうした要因を組み込むことで、有効性を増すことができます。0720chirashi

これらの要因を視野に入れた減災・応急対応・復興支援と調査研究は、日本では、多様性・ジェンダー配慮の視点を持つ少数の災害対応実践者と研究者によって、東日本大震災を契機に本格的に開始されました。

その後、災害対応や復興の主流である諸分野において、実践面および研究面で、多様性・ジェンダー配慮の視点はいかに取り込まれているできたのでしょうか。

本フォーラムでは、多様性・ジェンダー視点と個別の災害諸科学の接点を探ります。

日本学術会議ウェブサイト(チラシPDF)
http://www.scj.go.jp/ja/event/pdf2/192-s-0720.pdf

 

【1. 開催日時】 平成26年7月20日(日)13:00~16:45

【2. 開催場所】 日本学術会議講堂
住所 〒106-8555 東京都港区六本木7-22-34 (map

【3. 入場無料・事前申し込み不要】当日先着順300 名。日英同時通訳付き

【4. プログラム】(予定)

司会 大沢真理(第一部会員、東京大学社会科学研究所教授)

(1)開会挨拶  大西隆(日本学術会議会長、豊橋技術科学大学学長)

(2)開催趣旨説明・問題提起  池田恵子(日本学術会議特任連携会員、静岡大学教育学部教授)

(3)基調講演
Elaine Enarson(independent researcher, ジャクソンビル州立大学防災学部兼任教授)
「災害とジェンダー研究の貢献と展望」

 

(4)報告とパネルディスカッション「多様性・ジェンダーの視点で見た東日本大震災」

《 I 報告 》
・今井照(福島大学行政政策学類教授)
・李善姫(東北大学東北アジア研究センター研究員)

《 Ⅱ パネルディスカッション 》
〜災害関連諸科学・政策科学は多様性・ジェンダーをどう見たか〜

司会:大沢真理(第一部会員、東京大学社会科学研究所教授)

・鈴木るり子(岩手看護短期大学地域看護学教授) 保健師活動・介護福祉
・浦野正樹(早稲田大学文学学術院教授) 災害社会学、脆弱性論の観点から
・今井照(福島大学行政政策学類教授)   地域自立・多様性
・佐藤岩夫(日本学術会議連携会員、東京大学社会科学研究所教授) 居住法学
・矢守克也(京都大学防災研究所巨大災害研究センター教授) 防災教育・地域防災
【主催】日本学術会議東日本大震災復興支援委員会産業振興・就業支援分科会、第18 回ISA 社会学世界会議(横浜会議)災害社会学部会・分科会「ジェンダーの視点は災害研究に何をもたらすか」、平成25-27年度文部科学省科学研究費補助金基盤(A)「社会的脆弱性/レジリエンスの比較ジェンダー分析」

【後援】一般社団法人・生活経済政策研究所

【問い合わせ先】日本学術会議事務局企画課学術フォーラム担当
TEL:03-3403-6295 FAX:03-3403-1260

なお、同じ7月20日の午前9時半から、同じく日本学術会議において、英語による
「災害とジェンダー研究会」(研究者会合)も開催されます(通訳はありません)。

「災害とジェンダー研究会」(研究者会合)についての詳細は、池田までお問い合わせください(ekikeda@ipc.shizuoka.ac.jp)

 

東京都調布市のZ地区協議会主催の防災学習会への講師派遣(4月26日)

調布市の地区協議会とは、おおむね小学校区をひとつのコミュニティエリアとして、地域の活動団体や個人を横糸で結んだネットワーク組織です。地域では、自治会・子ども会・民生委員・PTA・健全育成・学校開放・消防団・商店会・ボランティアサークルなど,多くの団体がそれぞれの目的に応じた活動を行っていますが、地域にある既存の組織だけでは対応できない、もしくは複数の組織で取り組んだ方がより効果・効率的な課題に対して、各団体が連携し、協力していくことで課題の解決に取り組んでいます(調布市のウェブサイトより)。

この日は、市内で一斉に防災に関する訓練や研修が行われる日となっているそうですが、わたしが訪ねた地区では小学校を会場に、避難所運営に関する講演とグループディスカッション(ともに浅野が担当)と、消防署および地元消防団員による消火訓練・応急救護訓練などが行われました。

参加者は、自治会関係者、PTA、会場となった小学校の先生、隣接する中学校の先生と中学生(この小学校の卒業生)、障害を持った方などです。避難所運営に関するグループディスカッションでは、できるだけいろいろな立場・年齢が混ざるように7・8人~十数人で輪になってもらい、避難生活で起こりがちな問題について、どのように対応すべきかについて話し合ってもらいました。

体の不自由な障害者の避難所への誘導、人数に足りない食料の配分、食物アレルギーの人への配慮、介助犬を伴った人への配慮、小さな子どもや生徒に必要な環境などをテーマとしましたが、中学生も大人とともに懸命に考えながら、真剣に議論に参加してくれました。

このように、さまざまな立場の老若男女、地域と学校が日常から交流を図り、対等な仲間としてともに話し合い、活動に取り組む場を作っておくことが、なによりもの地域防災力の向上につながると感じました。

 (浅野)

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